「グラビティ・ブランケット(Gravity Blanket)」の製造・販売を手がけるD2C企業、グラビティ・プロダクツ(Gravity Products)は、2017年の設立以来、自社Webサイト以外の場所にもリーチを求め、その多様化を足早に進めてきた。その同社がいま進めているのが、大型小売店への進出だ。
重みをもたせた、心を落ち着かせる作用のある「グラビティ・ブランケット(Gravity Blanket)」。その製造・販売を手がけるD2C企業、グラビティ・プロダクツ(Gravity Products)は、2017年の設立以来、自社Webサイト以外の場所にもリーチを求め、その多様化を足早に進めてきた。いま同社が進めているのが、大型小売店への進出だ。
ターゲット(Target)との業務提携を発表しているグラビティは、まもなく同小売大手の実店舗900店とWebサイトで、商品販売を開始する。このパートナーシップは、グラビティが実店舗を持つ企業と結ぶ、過去最大の業務提携で、これにより4つの新商品が販売されるという。その新商品とは、「Z・バイ・グラビティ(Z by Gravity)」と呼ばれるラインで、グラビティのWebサイトで販売されているほかのラインよりも、低価格の設定となっている。たとえば、15ポンド(約6.8kg)/シングルタイプのブランケットの場合、主力商品「グラビティ・ブランケット」は189ドル(約2万円)なのに対し、Zラインは99ドル(約1万円)だ。
ほかのD2Cブランド各社が、数年がかりで小売パートナー1社との業務提携を進めている一方で、グラビティはリーチの拡大を足早に進めてきた。同社は昨年、Amazon、メイシーズ(Macy’s)、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)の各サードパーティマーケットプレイス、およびブルーミングデールズの実店舗35店で自社商品を販売。2000万ドル(約21億円)をわずかに下回る売上を記録し、黒字を計上した。D2C進出を果たしたブランド各社の多くが、毎年の売上成長を維持するためには、卸売も開始する必要があることに気付きつつある。また彼らは、卸売のリーチを拡大する一方で、各パートナーにオリジナル商品を提供すべく、品揃えの拡大にも目を向けている。
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「全顧客が利用しやすい環境を」
「存続できるD2Cブランドの数は飽和点に達しつつあると、私は考えている」と、グラビティのCEOであるマイク・グリロ氏は語る。消費者が進んで利用するブランドのWebサイトの数には限りがあると、同氏は考えているのだ。グラビティは2020年、ドラッグストアチェーン、CVSの3000店舗でウエイトスリープマスクの販売も開始。さらに、今年の春には小売チェーンのコールズ(Kohl’s)が行う、「キュレーテッド・バイ・コールズ(Curated by Kohl’s:DNVBの商品セレクションを、3カ月ごとのローテーションで一部店舗で展示するイベント)」にも参加した。
新たな卸売パートナー選びを、グラビティはどのように考えているのかについて、グリロ氏は次のように語る。「我々がいつも考えてきたのは、すべての顧客が、グラビティとその製品ラインを利用しやすい環境をつくることだ。ハイエンドな商品をオンラインで買う人たちに対しても、ウォルマートやターゲットなどの大型小売店で買い物をする中西部の人たちに対してもだ」。
こうした考えから、グラビティが新商品を発売する際には、さまざまなアプローチが取られる。例として、今年8月末、ファッションデザイナーでモダニスト・ストゥディオズ(Modernist Studios)創業者のロン・チェレスキン氏とのコラボレーションで、ウエイトローブを発売したときの話を紹介しよう。同商品は、グラビティのWebサイトだけでなく、メイシーズとブルーミングデールズでも販売された。ウエイトローブの価格は130ドル(約1万円)で、そのターゲットはメイシーズやブルーミングデールズの買い物客のような、ハイエンド志向の消費者だった。
商品の差別化を図ることが重要
こうしたプロセスを辿ることが、成長過程にあるD2C企業のスタンダードになりつつある。「チャネル間で、そして一部のケースにおいては小売業者間で、商品の差別化を図ることが重要だ」と語るのは、主にシードステージからシリーズAの企業に出資する投資会社、カラー(Color)の共同創業者、ジェイミー・シュミット氏だ。
「大口のパートナーに対しては、『独占オファー』が、関係の強化や理想的な棚の位置といった優遇措置の獲得に繋がることもある」。シュミッツ・ナチュラルズ(Schmidt’s Naturals)の創業者でもある同氏によれば、独占オファーに該当するのは、単に新商品をそのパートナー限定で販売するだけでなく「積極的なプロモーションプランや店内サンプリング、景品、あるいはシーズンごとに商品を入れ替えること」などが挙げられるという。
グリロ氏によれば、グラビティがターゲットとの話し合いを開始したのは1年半前のことだという。グラビティの顧客の大半は、現在も東海岸と西海岸に集中している。ターゲットとの業務提携により、グラビティが中部アメリカの消費者にもっとリーチできるようになることに胸を高鳴らせていると、同氏は話す。
懸念される顧客データの行方
だが、そこには懸念もある。特に、データに依存して顧客を獲得しているオンラインブランドの場合は、それが該当する。たとえば、顧客がグラビティのWebサイトではなく、ターゲットで同社の商品を買う場合、年齢などの詳細なデモグラフィックデータは入手できなくなる。「だが、オンラインの顧客について、いまわかっていることと、小売業者から今後得られる地域や、地理的な相違に関するデータを組み合わせれば、グラビティの顧客ベースの未来像を説得力十分に描くことは可能であると、私は思っている」と、グリロ氏は話す。
グラビティの売上の大半は、現在もeコマースが占めている。「今後、一般的な購買行動を色濃く反映した実績を作っていきたいと思っている」と、グリロ氏は語る。それは、売上の大半が、実店舗から来ているような実績だと、同氏は付け加えた。
「消費者の購買行動の変化に合わせて、我々も変化していきたい。これからも店舗における体験価値が、なくなることはないだろう」。
[原文:Gravity Blankets partners with Target to expand its brick and mortar presence]
Anna Hensel(翻訳:ガリレオ、編集:村上莞)