アウトドア用品は売上が2021年に急増して以来、需要は衰えを見せていないようだ。ゴープコアと呼ばれる商品の人気は高まるばかりだ。
ザ・ノース・フェイス(The North Face)は7月、10四半期連続で2ケタの増収を達成した。テバ(Teva)の年間売上高は2020年の1億3800万ドル(約201億円)から、2021年には1億3880万ドル(約203億円)、2022年には1億6270万ドル(約238億円)、2023年には1億8310万ドル(約267億円)に増加した。ブルックスランニング(Brooks Running)は2021年、2022年の両方で過去最高の収益を達成した。また、サロモン(Salomon)、アークテリクス(Arc’teryx)、ウイルソン(Wilson)の親会社であるアメアスポーツ(Amer Sports)は、これら3つのブランドを10億ユーロ(約1580億円)の企業に押し上げるべく「着実に進展している」と語っている。
これらのブランドはすべて、ゴープコアという分類に属している。この造語はザ・カット(The Cut)のジェイソン・チェン氏が、アウトドア風味の実用的なスタイルを意味するものとして2017年に作られたものだ。トレイルミックスを意味する用語(「ゴープ(Good Old Raisins and Peanuts)」)にちなんで名付けられており、パッカブルなパファージャケット、調節可能なハイキングパンツ、オーバーサイズのポンチョ、防水サンダルなど、パフォーマンス重視の実用的なウェアを中心としている。このカテゴリーは、特にランウェイやリセール市場で人気が高く、ゴープコアブランドは熱心なファンにアピールするため新しいスタイルを大量に作り続けている。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
アウトドア用品は売上が2021年に急増して以来、需要は衰えを見せていないようだ。ゴープコアと呼ばれる商品の人気は高まるばかりだ。
ザ・ノース・フェイス(The North Face)は7月、10四半期連続で2ケタの増収を達成した。テバ(Teva)の年間売上高は2020年の1億3800万ドル(約201億円)から、2021年には1億3880万ドル(約203億円)、2022年には1億6270万ドル(約238億円)、2023年には1億8310万ドル(約267億円)に増加した。ブルックスランニング(Brooks Running)は2021年、2022年の両方で過去最高の収益を達成した。また、サロモン(Salomon)、アークテリクス(Arc’teryx)、ウイルソン(Wilson)の親会社であるアメアスポーツ(Amer Sports)は、これら3つのブランドを10億ユーロ(約1580億円)の企業に押し上げるべく「着実に進展している」と語っている。
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これらのブランドはすべて、ゴープコアという分類に属している。この造語はザ・カット(The Cut)のジェイソン・チェン氏が、アウトドア風味の実用的なスタイルを意味するものとして2017年に作られたものだ。トレイルミックスを意味する用語(「ゴープ(Good Old Raisins and Peanuts)」)にちなんで名付けられており、パッカブルなパファージャケット、調節可能なハイキングパンツ、オーバーサイズのポンチョ、防水サンダルなど、パフォーマンス重視の実用的なウェアを中心としている。このカテゴリーは、特にランウェイやリセール市場で人気が高く、ゴープコアブランドは熱心なファンにアピールするため新しいスタイルを大量に作り続けている。
ラグジュアリーブランドにも浸透
消費者行動分析会社サーカナ(Circana)でフットウェアおよびアクセサリー業界アナリストを務めるベス・ゴールドスタイン氏は、ゴープコアのことを「運動していなくても、運動しているように見せる」というアイデアを形にしたものだと表現する。この点において、ゴープコアはレギンスやスウェットシャツのようなアスレジャーと似たものになると、同氏は説明する。アスレジャーの売上は、パンデミックのときに人々が屋外で時間を費やすようになったことで激増し、その後、一部の人々はオフィスに戻ったが、「屋外への関心はまだ残っており、ファッションの要素も消えてはいない」と、同氏は述べる。
アスレジャーは買い物客のあいだで依然として人気があるが、大手ブランドでも成功の程度は異なる。ルルレモン(Lululemon)は2022年の第1四半期から2023年の第1四半期にかけて純収益が24%増加したことを報告しており、ビヨンドヨガ(Beyond Yoga)は第2四半期に純収益が28%増加した。一方でアスレタ(Athleta)は、親会社であるギャップ(Gap Inc.)が「製品受け入れに関する継続的な課題」と呼ぶ理由から、第1四半期の純売上が11%減少した。
ゴープコアは何年も前から存在しているが、常にこの名前で呼ばれてきたわけではない。しかし現在は、ゴープコアという名前の人気に便乗する小売業者が増えてきている。「さまざまな種類のブランド、多くの異なる価格帯でこの用語が使用されている」と、ゴールドスタイン氏は語る。たとえばニーマン・マーカス(Neiman Marcus)は、最近になってショーウィンドウにキャンピング用品を展示し、クロックス(Crocs)はより無骨なスタイルを提案している。プラダ(Prada)、ルイヴィトン(Louis Vuitton)、バレンシアガ(Balenciaga)は自社のファッションショーにゴープコアを取り入れ、ナイキ(Nike)のACG(All Conditions Gear)は、ノードストローム(Nordstrom)やAmazonで販売されている。
リセール市場でも人気
2023年1月から7月までを対象にしたStockX(ストックエックス)の最新レポート「ブランド・メイキング・ムーブ(Brands Making Moves)」によると、ゴープコアブランドのなかには、リセールプラットフォームで非常に優れた業績を収めているものも存在する。スニーカーではオンランニング(On Running)が前年比で1万5357%増加し、サロモン(Salomon)は202%、アシックス(Asics)は72%増加した。ビルケンシュトック(Birkenstock)は前年同期と比べて492%成長し、同社の親会社は評価額が80億ドル(約1兆1700億円)に達して、9月にIPO(新規公開株)を発行する準備を進めている。
StockXのマーチャンダイジングディレクターを務めるドルー・ハインズ氏は、この成長の一部は話題のコラボレーションのおかげだとしている。歌手のリアーナは、第57回NFLスーパーボウル(Super Bowl)でのパフォーマンスで、エムエムシックス・メゾン・マルジェラ x サロモン(MM6 Maison Margiela x Salomon)コレクションの赤色の分厚いスニーカーを履いていた。オンは3月に、ロエベ(Loewe)との3度目のコラボレーションを発売し、サロモンは5月にサンディリアン(Sandy Liang)、6月にはジョウンド(JJJJound)とのコレクションを発売した。アシックスは今年ブレインデッド(Brain Dead)およびダイム(Dime)と提携し、7月にStockXで過去最高の業績を挙げた。StockXは、同社が8月も成長を続けると予測している。
現在のところ、ゴープコアブランドは「ナイキやシュプリーム(Supreme)のような世界的企業が成功したプレイブックに従っている」と、ハインズ氏は述べる。「文化人やアーティストたちは、これらの商品のファッション要素に関心のある消費者に強い影響力がある。ブランドはその人気を活用している」。
クワイエットラグジュアリーとの類似点
買い物客がゴープコアに関心を持つ理由はほかにもあると、ガートナー(Gartner)のディレクターアナリストを務めるカッシー・ソチャ氏は述べる。パタゴニア(Patagonia)、アークテリクス、ザ・ノース・フェイスなどの多くのゴープコアブランドは、商品の品質やライフサイクルを保証している。ザ・ノース・フェイスはStockXの定番ブランドのひとつで、アークテリクスはこのサイトで前年比4000%も成長していると、ハインズ氏は明かした。
多くの世帯で自由裁量の予算が限られている現在、この耐久性は特に重要だと、ソチャ氏は米モダンリテールに語った。「顧客は品質を特に重視しており、パタゴニアやビルケンシュトックのような十分に実績のあるゴープコアブランドに、その品質を見い出している」と、同氏は述べる。ガートナーの最近の調査によれば、消費者が購入を決めるときの要素として、品質は価格に次いで2番目に重視されている。
ソチャ氏はゴープコアを、最近注目されているファッションのカテゴリーであり、投資用アイテムやミニマルな服装を重視するクワイエットラグジュアリーと比較している。「消費者は商品のロゴよりも、品質を気にするようになってきている。そのため、ラグジュアリーブランドのあいだでクワイエットラグジュアリーが人気になりつつあるのと同様に、モノブランドのあいだでゴープコアが人気になりつつある」と、同氏は述べている。
結局のところ、ゴープコアに関しては、「誰もがこれがトレンドであることに気づきはじめていると思う。しかしこのトレンドは、いっときだけ人気になってから廃れてしまうというものではないと感じる。むしろ、人気になった後で、成功の波に乗ったブランドが、この分野の主力ブランドになりつつあると感じている」と、StockXのハインズ氏は語る。
[原文: Gorpcore brands are becoming more mainstream]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via The North Face