世界最大のスナック菓子のメーカー、モンデリーズはGoogleをはじめとするウォールどガーデンに投入するデジタル広告費を増やし、整理統合を行った。具体的な支出額は明らかにしていないが、大規模プラットフォームへの投資は、同社のパーソナライズされたマーケティング施策をより効果的に実行するために不可欠だという。
キャドバリー・チョコレート、オレオ、リッツ・クラッカーなど、世界でもっとも売れているスナック菓子のメーカーであるモンデリーズ(Mondelez)は、Googleをはじめとする世界最大級のデジタルメディアセラーに投入するデジタル広告費を増やし、整理統合を行った。
モンデリーズは、上位プラットフォームのウォールドガーデン内でファーストパーティデータを構築し、特定のオーディエンスセグメントをターゲットにすることに重点を置いており、Googleが3月上旬に発表したトラッキング規制は、同社の戦略に沿うものだと考えている。
「我々のGoogle広告費は過去2年間で60%増加している」と、モンデリーズの消費者体験担当グローバルバイスプレジデント、ジョン・ハルバーソン氏は、米DIGIDAYの取材に対してそう語った(具体的な支出額は明らかにしていない)。「これは手堅い選択だ。(主要デジタルプラットフォームは)我々のパーソナライズされたマーケティング施策をより効果的に実行できる」。
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「トラッキング規制の影響は小さい」
同社の施策の多くはファーストパーティデータに焦点を当てている。「ファーストパーティデータは、消費者が何を求めているのかをさらに深く知るチャンスであり、スナック菓子メーカーの核心をなすものだ」と、ハルバーソン氏はいう。同氏はこれまでにTwitter、GM、メディアエージェンシーのスターコム(Starcom)でメディア戦略担当を務め、2018年にモンデリーズに加わった。
消費財ブランドは従来、自社製品を実際に購入している人々についてのインサイトをあまり持ち合わせていなかった。だがGoogleの担当者はここ数年、モンデリーズのような企業にファーストパーティデータ戦略への投資をアドバイスしてきたと、ハルバーソン氏はいう。したがって3月3日にGoogleが発表した変更は、モンデリーズが行ってきた、より多くのファーストパーティデータを生み出し、消費者のスナック菓子消費をより詳細に追跡する取り組みに一致するものであると、同氏は説明する。
Googleは今後、アドエクスチェンジでのターゲティングを、集計されたオーディエンスコホートに基づく手法のみに制限する。ただし同社は、広告主が自社の顧客データとGoogleのファーストパーティデータと照合して、検索やYouTubeといったGoogleが保有するインベントリーにおけるターゲティングやキャンペーンの効果測定に利用することについては、引き続き認めている。
モンデリーズは、マーケティング・消費者データ担当責任者とITチームに加え、データ管理会社のマイティーハイブ(MightyHive)と提携し、ファーストパーティデータの生成、分析、意思決定をおこなっている。モンデリーズは、ほかのタイプの企業、たとえば商品購入に直接結びつくことを意図した広告を購入するダイレクトレスポンス広告の広告主に比べて、Googleのトラッキング規制の決定の影響を受けないだろうと、マイティーハイブでグローバルデータ担当エグゼクティブバイスプレジデント、タイラー・ピエッツ氏は指摘する。
「(Googleのトラッキング規制強化が)モンデリーズに与える影響は、たとえばeコマース小売企業、保険会社、自動車メーカーなどに比べてはるかに小さい」と、ピエッツ氏はいう。モンデリーズにとって、「主な目的は時間をかけてエクイティを構築することであり、ほかのセクターに比べ、ペイドメディアにおいて取引単位のユースケースへの依存度がずっと低い」と、同氏は説明した。
ウォールドガーデン型プラットフォームに広告費を集約
モンデリーズはこれまで、Googleのアナリティクスチームと緊密に連携し、キャンペーンのターゲットとなるオーディエンスセグメントを分析してきたと、ハルバーソン氏はいう。「オレオのキャンペーンには、文字通り数十万ものセグメントがある」と同氏は述べる。Googleは膨大なオーディエンス基盤のおかげで、高度に細分化されたオーディエンスについても一定の規模で提供できるのだ。
Googleが主要ブラウザであるChromeからサードパーティCookieを排除し、さらに外部企業のインベントリーにおける個人レベルの行動トラッキングから撤退すると明らかにしたことで、多くのパブリッシャーやアドテク企業は将来オープンウェブから活気が失われることを懸念している。一方、モンデリーズは、もはや止まりそうにない潮流に乗り、広告費をオープンウェブから引き揚げて、消費者がログインし認証を受けている、巨大デジタルプラットフォームのウォールドガーデンにつぎ込むと決めた。
ハルバーソン氏によると、モンデリーズはエージェンシー組織の簡素化に加え、2017年以来、提携するメディアパートナーをかつての150社以上のメディアベンダーから、わずか10社(ほとんどがウォールドガーデンプラットフォーム)にまで絞り込んだという。
モンデリーズはウォールドガーデンプラットフォーム以外での広告にかける費用を削減する「明確な戦略」を持っているとハルバーソン氏は述べ、過去3年間でAmazon、Google、Facebook、Pinterest(ピンタレスト)、Twitterの広告費を増やしたことに言及した。同氏は具体的な数字には触れなかった。
モンデリーズはGoogleのコホートターゲティングを利用して、集計されたオーディエンスにアプローチしたいと考えていると、ハルバーソン氏はいう。Googleとともに策定したグローバル共同事業計画には、コホートベースのターゲティングが含まれていると、同氏は米DIGIDAYの取材に対して述べた。「今年の共同事業計画の中にはコホートが組み込まれている」と、ハルバーソン氏はいう。「(計画の)一部の分野において、こうした新たなアプローチをぜひテストしたい」。なお、同氏は具体的にどの分野でコホートターゲティングのテストを実施するのか、詳細は明かさなかった。
インプレッションより対話を
全粒粉クラッカーのウィートシンズ(Wheat Thins)やのど飴のホールズ(Halls)を誰がなぜ買っているか、詳細なデータを収集するのは容易ではない。「売上の大部分は小売店で発生するため、(モンデリーズの)商品を買う人にはブランドのサイトを訪れたりアプリを利用する特段の理由がない」と、ピエッツ氏は説明する。
そこでモンデリーズは、マイティーハイブの兄弟会社であるクリエイティブ制作会社メディアモンクス(MediaMonks)の力を借りて、サイトやアプリ上に広告コンテンツやオウンドメディアを制作し、わざわざアクセスしてくれる人々のロイヤルティをさらに高め、ファーストパーティデータを築くだけでなく、より広い消費者層とコミュニケーションをとる方法を模索しているという。
たとえば、モンデリーズはブランデッドデジタルメディアの機能性を高め、大型スポーツイベントなどのパートナーシップを活用して、顧客とのエンゲージメントを強化することを目指している。「これを持続的な対話につなげるにはどうすればいいか? この疑問からすべてが始まる。インプレッションのような一時的な効果で終わらせず、長期的関係を築くための手段として、ペイドメディアを利用するのだ」と、ピエッツ氏は語った。
KATE KAYE(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:分島 翔平)