創業21年のホットワイヤーは、若い世代に改めてその存在を認知してもらうため、メディアミックスの転換をはかっている。具体的には、これまで重宝してきたテレビのスポットCMの代わり、Z世代やミレニアル世代が多く視聴する、YouTube、Twitch(ツイッチ)、TikTokといったチャネルに進出しているのだ。
旅行サイトのホットワイヤー(Hotwire)は、旅行需要の回復に伴って積極的な姿勢を打ち出している。同社がZ世代やミレニアル世代を対象に、オンライン動画プラットフォームでの存在感を高めているのもその一環だ。
創業21年のホットワイヤーは、若い世代にあらためてその存在を認知してもらうため、メディアミックスの転換をはかっている。具体的には、これまで重宝してきたテレビのスポットCMの代わり、Z世代やミレニアル世代が多く視聴する、Hulu(フール―)、YouTube、Twitch(ツイッチ)、そしてTikTokといったチャネルに進出しているのだ。
またホットワイヤーは、パンデミックの影響によるオンラインショッピング増加の波に乗るべく、新たな取り組みも実施している。その狙いは、モバイルアプリに誘導した買い物客にホテルを予約してもらうことだと、ホットワイヤーのブランドマーケティング担当責任者、メリッサ・ポスティア氏は語る。
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「多くのZ世代や若いミレニアル世代が、ソーシャルプラットフォームを利用していることは理解している」と、ポスティア氏はいう。「そこで我々は、15秒のビデオコンテンツを制作し、顧客のために我々に何ができるかを紹介している」。
オーガニック/ペイドの両方で活用
同社の最新キャンペーンでは、さまざまなプラットフォームがペイド/オーガニックの両方で活用されている。たとえばTwitterやFacebook、インスタグラムでは、オーガニックの投稿を積極的に展開。一方、TikTokに関しては、ペイドメニューであるハッシュタグチャレンジや、20人以上のインフルエンサーを起用している。なお、そのなかには、4750万人というTikTokで屈指のフォロワー数を誇る、歌手のジェイソン・デルーロのアカウントも含まれている。
ホットワイヤーはブランデッドコンテンツの代わりに、プラットフォームの性質に合った広告を制作するため、デルーロのようなインフルエンサーにクリエイティブ面での自由を認めているという。実際、ある事例ではデルーロが子どものオムツを替えながら、親たちの休暇が必要だというメッセージを打ち出す内容が展開されている。
以前に米DIGIDAYが報じた通り、TikTokのトップインフルエンサーと組むには、広告主は最大10万ドル(約1093万円)を用意しなければならない。さらにハッシュタグチャレンジを活用する場合、金額は1週間あたり15万ドル(約1640万円)に跳ね上がる。
ポスティア氏によると、ホットワイヤーはブランドの認知度を高めるため、TikTokで主にペイド戦略を採ることにした。その理由について同氏は、「Z世代に合ったものにしたかったからだ」と述べる。「ただ『ホットワイヤー』と連呼するだけではないコンテンツを生み出したかった」。
テレビCMからデジタルメディアへ
現在、ホットワイヤーのデジタル広告費の60%以上が、Hulu、ロク(Roku)、YouTube TVで配信される動画広告や、ポッドキャスト広告に充てられている。ポスティア氏によれば、かつてテレビのスポットCMに大きく依存していた同社では、現在その割合は減少傾向にあるという(ただし、広告費の内訳の詳細については、記事公開までにホットワイヤーからの回答が得られなかった)。
調査会社のカンター(Kantar)によれば、ホットワイヤーの今年第1四半期の広告費は、全体で2200万ドル(約24億円)以上で、昨年同時期の500万ドル(約5億4700万円)から急増している。ただし、ソーシャルメディアへの広告支出はカンターの調査対象外であるため、この数字に含まれていない。
単なるバイラル狙いは、戦略と呼べない
ホットワイヤーのTikTok活用は、Facebookの全盛期に同社が取り組んだアプローチに似ていると、パフォーマンスマーケティングエージェンシー、テイク・サム・リスク(Take Some Risk)の創業者、ドゥアン・ブラウン氏は述べる。
「コンテンツ制作の費用に加え、広告費も使うのは、ブランドがTikTokを有効活用し、影響力のあるチャネルにしようとしている証拠だ」と、ブラウン氏は指摘する。「この方法の利点は、適切なコンテンツを適切なやり方で展開すれば、より速く規模を拡大し、プラットフォームにおいて大きな影響力を行使できることだ」。
若いオーディエンスの認知獲得を目的とする場合、TikTokではペイドとオーガニックの両方の戦略に投資することが、マーケターにとってもっとも費用対効果が高いと、ブラウン氏はいう。
「単なるバイラル狙いは戦略とは呼べないし、確実にそうなるとは誰も保証できない。ペイドとオーガニック両方を戦略的に活用することが大切だ」。
KIMEKO MCCOY(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:村上莞)