新型コロナウイルスのパンデミックは、実店舗を経営するリテール企業にとって非常に厳しい状況をもたらした。事実、独自調査によると、パンデミックの最中に多くのブランドや小売業者が実店舗から撤退したことが判明している。しかし、今後6カ月のあいだに市場が回復するにつれて、彼らは実店舗への再投資をすでに計画しているようだ。
新型コロナウイルスのパンデミックは、実店舗を経営するリテール企業にとって非常に厳しい状況をもたらした。
何カ月も店舗が閉鎖され、急速に成長しているeコマース事業にブランドや小売業者が関心を移す状況が続いている。そのなかで、彼らが実店舗への投資から手を引くことは避けられないように思われた。
事実、米DIGIDAYの姉妹サイト、グロッシー(Glossy)とモダンリテール(Modern Retail)の調査によると、パンデミックの最中に多くのブランドや小売業者が実店舗から撤退したことが判明している。しかし、今後6カ月のあいだに市場が回復するにつれて、彼らは実店舗への再投資をすでに計画しているようだ。
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27%の企業がひとつ以上の店舗を廃止
グロッシーとモダンリテールによる、89人のブランドおよび小売企業のエグゼクティブを対象にした調査によると、27%の企業がパンデミックの最中にひとつ以上の小売店のリースおよびロケーションを廃止したという。全般的に、リースと店舗が減少したのは、ニューヨークやカリフォルニアのようないつもは人が多い地域での客足の減少、業界全体での予算の引き締め、2020年の米国全体での総成長率44%というeコマースの伸びなど、多くの要因の結果だ。
10月、ギャップ(Gap)は2024年までに350店舗以上を閉鎖する計画を発表した。メイシーズ(Macy’s)、ヴィクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)、ザラ(Zara)は2020年後半を通して同様の計画を発表している。客足をこれらの店舗に頼っているショッピングモール群にとっては、大きな痛手となるだろう。一方、ニーマン・マーカス(Neiman Marcus)、Jクルー(J.Crew)、トゥルー・リリリジョン(True Religion)は破産申請、もしくはすべての店舗の永久閉鎖を行っている。
店舗を維持しているブランドや小売業者のあいだでも、縮小が行われた。2020年末に行われたグロッシーとモダンリテールの調査では、店舗をひとつも閉鎖していない場合でも、50%のブランドが小売スタッフを削減していることがわかった。
今後、34%が実店舗投資を増やす
しかし、ブランドや小売業者は実店舗での販売を見放したわけではない。グロッシーとモダンリテールの最新調査によると、2021年に実店舗小売業への投資を減らす計画だと回答したブランドと小売業者は20%だったが、34%が実店舗小売業への投資を増やす予定だと回答した。残りの44%は、これまで同様の投資を維持するとしている。一方、ブランドと小売業者の43%は今年、小売従業員の人数を増やす予定だが、減少するのはわずか12%だ。
いくつかのブランドはすでに先陣を切っている。たとえば、スーツサプライ(Suitsupply)は昨年9月にニューヨークの旗艦店のフロアをふたつ増やし、LAブランドのレールズ(Rails)は同月にソーホーに旗艦店をオープンした。ビューティ部門では、グロスラブ(Glosslab)やファンクション・オブ・ビューティ(Function of Beauty)などのブランドも2020年末に開店した。
しかし、ブランドが実店舗への投資を拡大し始めるなかで、以前よりも慎重に新しい店舗にアプローチする必要が出てくる。eコマース代理店のワン・ロックウェル(One Rockwell)の共同創業者兼プレジデントであるシェリー・ソーコル氏によると、賃料は下がっているものの、実店舗小売のコストは高く、新しく店舗をひとつオープンする前に考慮すべき重要な事項があるという。
「ブランドは、地域ごとの配置や、新しくオープンする、もしくは維持する店舗のサイズがどれほどか、といった事に関して非常に戦略的にならないといけない」と彼女は述べる。同時に、実店舗小売がうまくいかない場合、ブランドは柔軟性を持ち、損失を削減するタイミングを見極める必要がある。「ザラとH&Mの2社は、何千もの店舗を一斉に閉鎖する際に、同時に消費者をeコマースサイトに誘導し、良い売り上げを出すことで小売の損失を埋め合わせることができる、素早い方針転換が可能な企業の例として完璧だ」。
[原文:Glossy Research: 34% of brands and retailers will grow their physical retail investments this year]
DANNY PARISI(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)