ブランドのコミュニティがかつてないほど重要になっている。顧客やフォロワーなど、ブランドのコンテンツやメッセージに関与する人々から成るコミュニティは、ブランドの生命線となっている。それだけではない。エンゲージメントの高い顧客はさらに多くの顧客を惹きつける可能性が高い。ブランドディスカバリープラットフォームのシングテスティング(Thingtesting)が8月にインスタグラムのフォロワー7万4000人に対して行った調査では、「親しい友人や家族」が購買にもっとも強い影響を与えることが示された。インフルエンサーは4位だった。
インフルエンサーがいなくなることはないが、今年初めのタルト(Tarte)のドバイ旅行や、最近のミケイラ・ノゲイラ氏の「マスカラゲート」スキャンダルを思い出してみても、過剰な開封動画や豪華なプレス旅行、大げさな主張などに人々は疲弊している。いま、消費者が信頼しているのは、友人や家族、それにインフルエンサーを職業としていない熱心な顧客だ。
そのため、経験豊富なブランドは、これまで以上にクリエイティブな方法でコミュニティ感覚を作り出すなど、日頃の顧客の関心や信頼の獲得に向けてさらに全力を尽くしている。
今回は、タルト(Tarte)の創業者のモーリーン・ケリー氏が、インフルエンサーと広範に協力しながら、同ブランドがどのようにコミュニティを優先させているかを紹介する。
ブランドのコミュニティがかつてないほど重要になっている。顧客やフォロワーなど、ブランドのコンテンツやメッセージに関与する人々から成るコミュニティは、ブランドの生命線となっている。それだけではない。エンゲージメントの高い顧客はさらに多くの顧客を惹きつける可能性が高い。ブランドディスカバリープラットフォームのシングテスティング(Thingtesting)が8月にインスタグラムのフォロワー7万4000人に対して行った調査では、「親しい友人や家族」が購買にもっとも強い影響を与えることが示された。インフルエンサーは4位だった。
インフルエンサーがいなくなることはないが、今年初めのタルト(Tarte)のドバイ旅行や、最近のミケイラ・ノゲイラ氏の「マスカラゲート」スキャンダルを思い出してみても、過剰な開封動画や豪華なプレス旅行、大げさな主張などに人々は疲弊している。いま、消費者が信頼しているのは、友人や家族、それにインフルエンサーを職業としていない熱心な顧客だ。
そのため、経験豊富なブランドは、これまで以上にクリエイティブな方法でコミュニティ感覚を作り出すなど、日頃の顧客の関心や信頼の獲得に向けてさらに全力を尽くしている。
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今回は、タルト(Tarte)の創業者のモーリーン・ケリー氏が、インフルエンサーと広範に協力しながら、同ブランドがどのようにコミュニティを優先させているかを紹介する。
教師をフィーチャーしたキャンペーン
ニューヨークのミッドタウンにあるタルト本社では、いつも誰かが(たいていは社員)がメイクアップチェアに座って社内のアーティストに顔を塗ってもらっている。そしていつでも写真撮影が行われている。創業24年のこのブランドは、つねに従業員やその子どもたち、友人たちをモデルとして起用してきた。
だが、8月30日にそのメイクアップチェアに座っていたのは、全員が学校の教師だった。それはタルトの創業者であるモーリーン・ケリー氏が、特に恩返しをしたいと強く願っていたタルトのコミュニティの一部だ。ケリー氏の母や妹も教職についていた。「先生たちを元気づけて恩返しができることを幸せに思う。教師というのは、とにかくよい人たちだ。人生に影響を与えてくれた先生というのが、誰しもひとりはいるものだ」とケリー氏は言う。
タルトのホリデーキャンペーンでは教師たちをモデルに起用した。そのイメージが現在ブランドのホームページの全面と中央に、ケリー氏が考案した「2023年のホリデーがフィーチャーするのは元祖インフルエンサー、学校の先生!」というフレーズと共に表示されている。
ブルックリンにある公立学校で教師をしているヴァイシャリー・シャー氏は撮影当日、「1日中、鳥肌が立っていた」とメイクアップを施されている最中に語った。「夜遅くにTikTokをスクロールしていたら、撮影に教師を募集していると話すモーリーン・ケリーの動画が目に入った。私は『モーリーン、いま幸せな気分になっちゃった』と思いながら応募した。まさか自分が選ばれるなんて絶対あり得ないと思った」。ケリー氏はTikTokに21万人以上、インスタグラムに1万5000人以上のフォロワーがいる。
コミュニティを重視した取り組みが勢いを増している数々の理由に加えて、お気に入りのブランドに仲間に入れてもらった、自分を見てもらえたと感じたときの人々(つまりお金を払っている顧客)の感謝の気持ちや興奮は無視できないものがある。
「有色人種の女性として、移民の子供として、社会からあなたは可愛くない、価値がないと言われているように感じることが多い。私たちが祝福され、自分が美しいと感じることができるという事実は、私の途方もない夢をはるかに超える。若い頃の自分に、28歳になった自分がいまここにいる、と言っても、とても信じてもらえないだろう」とシャー氏は述べた。
タルトが本社にコミュニティを招いたのは、今回の写真撮影が初めてではない。今年の夏、タルトは 「教師の火曜日(Teacher Tuesdays)」を開催し、教師たちを招待してブランドから無料で提供する学用品を受け取ってもらった。ケリー氏のソーシャルメディアで宣伝されたこのイベントには、毎回300人以上のゲストが集まった。毎週火曜日に行われた抽選会で選ばれた8人の教師が、学校の休憩室の模様替えを獲得している。
コミュニティメンバーを招待した旅行
コミュニティを優先しているにもかかわらず、タルトはインフルエンサーとの広範囲におよぶ活動、特に#TrippinWithTarteというインフルエンサーの旅行で知られるようになった。同社は2015年からこの旅行を主催している。1月、同ブランドのドバイ旅行がTikTokの分析材料となり、ブランドにかかった費用やクリエイターに参加費が支払われたかどうかなど、旅行の詳細について推測するコンテンツを無数のユーザーが作成したことで、この取り組みは炎上した。インフルエンサーには費用は支払われていなかったのだが、9カ月後の時点で、#tartedubaiのハッシュタグは5800万回以上再生されている。5月には黒人のインフルエンサーのブリア・ジョーンズ氏が、ブランドがF1に招待したほかのインフルエンサーよりも標準以下の宿泊施設を提供していると非難したことで、同ブランドのインフルエンサーアクティベーションは再び論争を巻き起こした。その後、ジョーンズ氏は「コミュニケーションの行き違い」があったと述べた。この事件の後、ケリー氏は、クリエイタープログラムが「インクルーシブで公平」であることを確認するためにブランドでは見直しを行うと述べている。
タルトのコミュニティ(インスタグラムのフォロワーは1000万人、TikTokのフォロワーは110万人)は、#TrippinWithTarteの投稿に対して、インフルエンサーの旅行に参加したいというコメントを定期的に残している。そこで7月、ブランドは13人のコミュニティメンバーとそれぞれ同伴者1名を対象に、#TrippinWithTarteの体験を再現した。応募者は、ケリー氏のソーシャルプラットフォームにリンクされたフォームに記入し、「他人を元気づけるためにあなたがしている小さなことをひとつ」シェアするよう求められた。当選者はタルトの従業員によって選ばれたが、さまざまな背景を持つ人を選ぶよう注力したという。当選者はニューヨークへ飛び、プラザ・ホテルに2泊し、ビヨンセ氏のルネッサンスツアーにボックス席で参加した。また、ディナーや市内を巡るバスツアー、コンサートのためのドレスアップなどの歓待も受けた。さらにマッサージ、ヘリコプターでの周遊、ブロードウェイのショーのチケットのいずれかを選ぶことができた。
コミュニティメンバーのための旅行のROIは、アリックス・アール氏が300万人のフォロワーに向けて投稿することとは比較にならないが、ケリー氏はそのニューヨークの旅を「もっともやりがいのある経験のひとつ」と呼ぶ。旅行に当選した人たちは「本当に心からとてもハッピーで、とても興奮していた」という。何しろインフルエンサーと違って、このような旅行はコミュニティメンバーたちにとって普通の経験ではないからだ。「ルームドロップ(インフルエンサーが到着する前に部屋に置かれるギフトのことを指す業界用語)」が置かれたプラザホテルの部屋を目にしたゲストたちは、「全員が悲鳴をあげていた」とケリー氏は語る。
「(コミュニティは)もっとも重要だ。私たちの製品を買ってくれるのはコミュニティの人々であり、私が製品を作るのもその人たちのためだ」とケリー氏は語る。
また、同ブランドは22人のインフルエンサーもそのコンサートに連れて行ったが、インフルエンサーには専用のボックスがあったことも記しておくべきだろう。
コミュニティはブランドのDNAの一部
ケリー氏によれば、タルトはつねに大規模なコミュニティ活動を行ってきた。同ブランドのグローバルマーケティング担当エグゼクティブディレクター、ドナ・カークランド氏もその思いを代弁している。「コミュニティはいつでも私たちのDNAの一部であり、私たちが影響力について考える方法である。それは必ずしもインフルエンサーに限ったことではなく、一般的に人々が行っていること、どのように人々が影響を与えているかということが重要なのだ」。教師、医療従事者、救急隊員、軍人は、タルトで永続的に40%の割引を受けることができる。
ケリー氏は、今後もさらなるトリッピング・ウィズ・タルト(Trippin’ With Tarte)のコミュニティトリップを期待していると語っている。
スペイト・トレンド・ウォッチ:髪のプレウォッシュが流行中
髪のプレウォッシュのトレンドが上昇しており、ヘアケアがスキンケアのルーチンをさらに模倣しつつあることを物語っている。
スペイト(Spate)によれば、シャンプー前の万能薬を求めている人は、主にオイルを探している。もっとも検索されているブランドはJVNで、JVNヘアコンプリート プレウォッシュ スカルプオイル(JJVN Hair Complete Pre-Wash Scalp Oil)だ。フェイブル アンド メイン(Fable & Mane)とジャストフォーミー(Just For Me)も検索に登場するが、ジャストフォーミーのオプションであるヘアミルク プレウォッシュ ソフトニング デタングラー トリートメント(Hair Milk Pre Wash Softening Detangler Treatment)は、よりクリーム状のテクスチャーとなっている。
「スキンケアにおけるダブルクレンジングシステムの検索は、前年比43.5%増となっている。明確なメリットがあるなら、美容愛好家たちはルーチンに新たなステップが加わることを気にしない。ダブルクレンジングシステムの月間平均検索数は1万2300件で、ヘアケア分野でプレウォッシュを実現しようとしているなら、スキンケア分野を成功例とみなして、スキンケアでの戦術を活用できる」とスペイトの共同創業者ヤーデン・ホロウィッツ氏は述べている。
SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)