ブランドのコミュニティがかつてないほど重要になっている。顧客やフォロワーなど、ブランドのコンテンツやメッセージに関与する人々から成るコミュニティは、ブランドの生命線となっている。また、エンゲージメントの高い顧客はさらに多くの顧客を惹きつける可能性が高い。ブランドディスカバリープラットフォームのシングテスティング(Thingtesting)が8月にインスタグラムのフォロワー7万4000人に対して行った調査では、「親しい友人や家族」が購買にもっとも強い影響を与えることが示された。インフルエンサーは4位だった。
インフルエンサーがいなくなることはないが、今年初めのタルト(Tarte)のドバイ旅行や、最近のミケイラ・ノゲイラ氏の「マスカラゲート」スキャンダルを思い出してみても、過剰な開封動画や豪華なプレス旅行、大げさな主張などに人々は疲弊している。今、消費者が信頼しているのは、友人や家族、それにインフルエンサーを職業としていない熱心な顧客だ。
そのため、経験豊富なブランドは、これまで以上にクリエイティブな方法でコミュニティ感覚を作り出すなど、日頃の顧客の関心や信頼の獲得に向けてさらに全力を尽くしている。
今回は、スウェーデンのインフルエンサー、マチルダ・ジャーフ氏と最近ニューヨークで初めてのポップアップを行った同氏のファッションブランド、ジャーフアベニュー(Djerf Avenue)に注目する。このブランドは、9月3日にグッゲンハイムでコミュニティ向けのニューヨーク・ファッションウィーク・ガラを開催した。
スウェーデンのインフルエンサーによるインクルーシブなブランド
8月31日木曜の午前9時、スプリングストリートで4日間オープンするジャーフアベニューのポップアップショップのプレスプレビューに参加しようとしたときには、すでに3時間以上の待機列ができていた。このポップアップは一般向けには10時にオープンする予定だった。スウェーデンのインフルエンサー、マチルダ・ジャーフ氏が2019年に創業したブランドにとって、この日はニューヨークでは初めてのポップアップショップの初日となる。ジャーフ氏のファンにとっても、ストックホルムを拠点とするD2Cブランドを現実世界で買い物できる初の機会だった。26歳のジャーフ氏はインスタグラムに310万人のフォロワーがおり、ジャーフアベニューには60万5000人のフォロワーがいる。
ブランドのコミュニティがかつてないほど重要になっている。顧客やフォロワーなど、ブランドのコンテンツやメッセージに関与する人々から成るコミュニティは、ブランドの生命線となっている。また、エンゲージメントの高い顧客はさらに多くの顧客を惹きつける可能性が高い。ブランドディスカバリープラットフォームのシングテスティング(Thingtesting)が8月にインスタグラムのフォロワー7万4000人に対して行った調査では、「親しい友人や家族」が購買にもっとも強い影響を与えることが示された。インフルエンサーは4位だった。
インフルエンサーがいなくなることはないが、今年初めのタルト(Tarte)のドバイ旅行や、最近のミケイラ・ノゲイラ氏の「マスカラゲート」スキャンダルを思い出してみても、過剰な開封動画や豪華なプレス旅行、大げさな主張などに人々は疲弊している。今、消費者が信頼しているのは、友人や家族、それにインフルエンサーを職業としていない熱心な顧客だ。
そのため、経験豊富なブランドは、これまで以上にクリエイティブな方法でコミュニティ感覚を作り出すなど、日頃の顧客の関心や信頼の獲得に向けてさらに全力を尽くしている。
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今回は、スウェーデンのインフルエンサー、マチルダ・ジャーフ氏と最近ニューヨークで初めてのポップアップを行った同氏のファッションブランド、ジャーフアベニュー(Djerf Avenue)に注目する。このブランドは、9月3日にグッゲンハイムでコミュニティ向けのニューヨーク・ファッションウィーク・ガラを開催した。
スウェーデンのインフルエンサーによるインクルーシブなブランド
8月31日木曜の午前9時、スプリングストリートで4日間オープンするジャーフアベニューのポップアップショップのプレスプレビューに参加しようとしたときには、すでに3時間以上の待機列ができていた。このポップアップは一般向けには10時にオープンする予定だった。スウェーデンのインフルエンサー、マチルダ・ジャーフ氏が2019年に創業したブランドにとって、この日はニューヨークでは初めてのポップアップショップの初日となる。ジャーフ氏のファンにとっても、ストックホルムを拠点とするD2Cブランドを現実世界で買い物できる初の機会だった。26歳のジャーフ氏はインスタグラムに310万人のフォロワーがおり、ジャーフアベニューには60万5000人のフォロワーがいる。
バギージーンズ、アディダス(Adidas)のサンバ(Samba)、ジャーフアベニューの定番であるオーバーサイズのブレザーなど、トレンドファッションに身を包んだ若い女の子たちが、アイテムを実際に手に入れるチャンスのために早起きして列に並んでいた。彼女たちはまた別の形でブランドに触れる機会も手にしている。たとえばポップアップの外ではブルーストーンレーン・ジャーフアベニュー・アイスバニララテ(Bluestone Lane Djerf Avenue Iced Vanilla Latte)を無料で味わうことができる。
地下鉄の駅から向かう途中で、24歳のソフィア・チェリアン氏が近づいてきてポップアップを探しているのかと尋ねてきた。週末に25歳になるチェリアン氏は、ひと足早い誕生日祝いとして、このブランドで買い物をするために仕事を休んだという。以前からファンだったが、ポップアップで初めて商品を購入するつもりだと彼女は言った。狙っているのはコアコレクションのミニスカートだ。チェリアン氏がジャーフを知ったのは友人経由で、その友人は金曜か土曜にポップアップを訪れる予定だという。
「ジャーフアベニューを見ていると、彼女の服を着ている自分の姿が簡単に想像できるのがいい。ジャーフはさまざまな体型のモデルを数多く起用していて、どの洋服もすべてのモデルに似合っている」。ジャーフアベニューではXXSから3XLサイズを提供している。
ファッションショーのガラにコミュニティメンバーを招待
ポップアップがオープンする1週間ほど前にマチルダ・ジャーフ氏に話を伺い、どのようにしてファンベースを築いて維持しているのかを尋ねた。「自分がやっていることを正確に理解しているように感じるのが半分。そしてもう半分では『私は何をやっているんだろう?』と思っている。ただし、つねに本当に誠実であろうとしている。自分の行っていることにとても情熱を傾けている。みんなにもそれを感じてもらいたいし、見てもらいたい」。
このポップアップでは、ジャーフ氏の母親であるウルリカ・ジャーフ氏に会った。鮮やかなピンクの髪の小柄な女性で、ジャーフアベニューの服を着ていた。彼女のインスタグラムのフォロワーは2万5000人だ。娘の発言に対して「マチルダは自分にとても正直だからだと思う。謙虚だし、心から好きなことをやっている」と共感を示した。
とはいえ、このポップアップは、多くのファンにしてみれば大きな出来事かもしれないが、ジャーフ氏の今回のニューヨーク訪問の理由ではなく、むしろおまけのようなものだった。9月3日、ジャーフアベニューはグッゲンハイムのピーター・B・ルイス・シアター(Peter B. Lewis Theater)で281人規模のガラを開催する。これはブランドにとってニューヨーク・ファッションウィークでの初めてのイベントで、ファッションショーと3コースの食事が含まれる。ジャーフ氏は、インフルエンサーやファッションエディター、セレブリティを優先するのではなく、抽選でランダムに選んだジャーフアベニューのコミュニティメンバーで約250席を埋める。参加希望者は6000人を超えた。応募者は個人的に気に入っている格言をシェアするよう求められ、グッゲンハイムのイベントで、その格言が壁に展示される。
ブランドのウェブサイトでは、すでにコミュニティメンバーをモデルとして起用しているが、今回のファッションショーでもメンバーがモデルを務める。ショーに登場する服は、ジャーフアヴェニューの既存のアイテムをリメイクしたものとなる。ジャーフ氏いわく、これは余分なものを作らないようにしつつ、創造力をかき立てる楽しい方法だという。これらのアイテムは、ショーの翌週から特別注文が可能になる。「ファッションショーの要点は、手に入れられるようにすること」とジャーフ氏。「そのルックを見て、『ああ、これなら実際に着られる。学校やオフィスに着ていける洋服だ』と思ってほしい。ランウェイでしかステキに見えないような、完全に奇抜なものではない」。ジャーフ氏の母親もランウェイを歩く。「私はネポベイビー(有名な親のコネで成功した子供の意味)ではなく、ネポママなの!」と彼女は言った。
ジャーフアベニューは以前にもポップアップを行っている。昨年の夏にはロサンゼルス、今年の夏には地元ストックホルムで展開した。そして、ポップアップはもちろん収益を上げる。ジャーフアベニュのCEOであり、マチルダのボーイフレンドでもあるラスムス・ヨハンソン氏によれば、2021年から2022年にかけてブランドの売上は前年比350%の伸びを記録したという。
とはいえ、グッゲンハイムのイベントは、これまでで最大の投資となる。「従来の有料広告にはあまりお金をかけていない」とヨハンソン氏は言う。「今回のイベントとポップアップには、昨年全体のマーケティング費よりも多くの費用を費やしている」。
イベントにニューヨークが選ばれた理由についてジャーフ氏は、「ニューヨークにはワクワクさせる何かがある。LAでポップアップをやったとき、非常に多くの人からニューヨークで何かやってくれないかと言われた」と述べた。
コミュニティ重視のエシカルなブランド
ジャーフ氏は、顧客であるかどうかに関わらず、ブランドがコミュニティを歓迎していると感じてほしいと願っている。ジャーフアベニューは、ウェブサイトにエンジェルズアベニュー(Angels Avenue)というピンタレスト風の独自のソーシャルメディアプラットフォームを併設している。エンジェルズアベニューとブランドのeコマースサイトを合わせると、ユニークビジターの数は月に2万人以上となる。インスタグラムでは、ブランドと積極的に関わるコミュニティメンバーに着目した「今週のエンジェル」を紹介している。「これはいちばん多く購入した人を基準にしているのではない。むしろ、コメントをしているのをよく見かける人、たくさん関与している人、エンジェルのページで本当に前向きな意見を広めている人、といった感じ」とジャーフ氏は言う。
「自分がもっと若かった頃は、インスタグラムで写真を共有するのが怖かった。あまりに多くの意見があるから」とジャーフ氏。「だからこういう安全な空間を作りたかった。すべてのコンテンツを実際に見るにはログインしなくてはならない。そしてただみんなを盛り上げてくれる、本当に協力的なコミュニティがある。それぞれがインスピレーションを受けたものを共有できる、顧客のためのスペースだ」。
これと同じ考え方で、ファッションショーのチケットを手に入れた人のほとんどがひとりで参加するため、だれもが歓迎されていると感じられるような雰囲気にすべく、ジャーフ氏は、たとえばラウンドテーブルにはポラロイドカメラを用意するなど、「緊張をほぐす」ようなディテールを取り入れるよう心がけている。
ポップアップを後にするとき、24歳のケルシー・ギャラガー氏と母親のミリーに話を聞いた。ふたりとも、この店を見るために仕事を休んでニュージャージーからマンハッタンまでドライブしてきたのだ。6時には列に並べるように、朝4時半に家を出たという。ケルシーは、ブランドができる前からジャーフ氏をフォローしている。ギャラガー氏は、服の品質だけでなく、このブランドがエシカルな工場と仕事をしていることも称賛している。「自分が支払ったお金が、従業員を大切にする工場に使われる」。ジャーフアベニューのバイオには、「ポルトガル、スウェーデン、イタリアで倫理的に生産されている」と書かれている。ジャーフアベニューのブレザーは179ドル(約2万6000円)だ。
ケルシーは、ポップアップ限定の69ドル(約1万円)の「I <3 DA」というロゴが入ったTシャツを買うつもりだ。それはこのブランドへの愛とコミュニティの一員であることの証となるだろう。
SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)