美容の世界では、製品のフォーマットと同じように成分にも流行り廃りがある。つねに何かの新しいバージョンに取り組んでいるラボが存在し、インフルエンサーや編集者は今までで一番画期的なものだと宣言する。時には、何よりもきわ立って […]
美容の世界では、製品のフォーマットと同じように成分にも流行り廃りがある。つねに何かの新しいバージョンに取り組んでいるラボが存在し、インフルエンサーや編集者は今までで一番画期的なものだと宣言する。時には、何よりもきわ立って異質な成分が流行することさえある。2010年代半ばにカタツムリのムチンとクリスタルが流行したことを思い出してほしい。当時、この魅力的な新成分によるトレンドは、多くのステップを踏むスキンケアルーチンの人気に牽引されていた。なおカタツムリのムチンは、主にTikTokのおかげで再びトレンドに戻っていることも注目に値する。
だが、ここ数年でスキンケアのルーチンはシンプルになり、それに伴って注目される成分も簡素化されている。昨年は、ヒアルロン酸の人気パワーが弱まり始めたことで、昔から何にでも使われている定番の成分のグリセリンが話題になった。そして今、注目を集めているもうひとつのスキンケアの定番ともいえる成分が、ペプチドである。
ペプチドに着目した製品が相次いで発売
ニューヨークの皮膚科医、ジョシュア・ツァイクナー医師は次のように説明している。「ペプチドは小さなタンパク質で、皮膚に特定の働きをするよう伝えるメッセンジャーとして機能する。ペプチドを配合した製品はすべて同じというわけではなく、異なる働きをする異なるペプチドが含まれている可能性がある。スキンケアにもっともよく使われているペプチドはコラーゲンの産生を促進するものだが、そのほかにも保湿効果や鎮静効果、あるいは美白効果などをもたらすものもある」。
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ここ数カ月、大小さまざまな人気美容ブランドが相次いでペプチドに着目した製品を発売している。グープ(Goop)は150ドル(約2万2450円)のユースブースト ペプチド セラム(Youth-Boost Peptide Serum)を7月に、グロウレシピ(Glow Recipe)は45ドル(約6730円)のポムグラネート ペプチド ファーミングセラム(Pomegranate Peptide Firming Serum)を8月に発売した。9月には、パイ(Pai)が109ドル(約1万6300円)のボンヌイ ビオペプチド リニューアル ナイトクリーム(Bonne Nuit BioPeptide Renewal Night Cream)を、ナチュリウム(Naturium)が25ドル(約3740円)のマルチペプチド アドバンスド セラム(Multi-Peptide Advanced Serum)を発売。メイラブ(Maelove)は11月6日に48ドル(約7180円)のペプチド スクワッド コラーゲン リニューアル セラム(Peptide Squad Collagen Renewal Serum)を発売する。こうした製品はまだまだほかにもある。
TikTokでは、#peptideのハッシュタグが2億3500万ビューを記録している。ただし、このコンテンツの多くは注射による健康治療に関するものでもある。ペプチドを注射すると減量や筋肉増強に役立つといわれているのだ。一方、#peptideserumは3000万ビュー、#peptidesforskinは1350万ビューである。
ペプチドはなぜ復活したのか、またそれははたして妥当なことなのか、この記事に情報を提供してくれた美容関係者や専門家がさまざまな意見を述べた。
長い時間をかけて実証された成分
デジタルトレンド予測エージェンシーのスペイト(Spate)によると、ペプチドの検索数は毎月平均66万1000回で、昨年から9.5%増加している。1月、「ペプチド モイスチャライザー」が、スペイトの予測トレンドレポート(Predicted Trends Report)においてスキンケアのトレンド予測トップ10の4位にランクインした。「ペプチド モイスチャライザー」の検索数は、今年に入ってから前年比26.8%増となっている。
「当社の研究開発の責任者によれば、ペプチドが再び勢いを増しているのは、とにかくものすごく効くからだ」と、パイスキンケアの創業者サラ・ブラウン氏は言う。
また、グロウレシピの共同創業者のサラ・リー氏は次のように語った。「私たちはつねにペプチドのファンだったが、ペプチドにどんな作用があるのかを明確に説明できる人は多くない。ペプチドはすばらしい成分で、長い時間をかけて実証されている。だから私たちはペプチドについて教育したいし、グロウレシピは(新しいローンチで)独自のアプローチを行いたいと考えている」。
9月、セタフィル(Cetaphil)はペプチドを中心とした4つのアイテムから成るスキンケアコレクション、ヘルシーリニュー(Healthy Renew)を発売した。コレクションにはセラム、アイジェル、SPFデイクリーム、ナイトクリームが含まれている。セタフィルのマーケティングディレクターであるキャサリン・ラウズ=ベイリー氏は、「しばらくの間、アンチエイジングへのローンチを検討していたが、(敏感肌の顧客を)サポートできるような方法をでそれを行うにはどうすればよいのか考えなければならなかった」と話す。「敏感肌の人にはレチノールのような特定の成分が刺激になったり、少し刺激が強くて毎日使うことができず、十分な効果を得られないことはわかっていた」。ブランドとしての解決策はペプチドだった。ラウズ=ベイリー氏によれば、同ブランドは時間をかけて0.03%のレチノールと製品を比較する試験を行い、「シワや小ジワを改善する効果という点で、同じ結果が得られた」という。
ペプチド配合のリップ製品も大きなトレンドに
顔全体をケアする製品に加えて、リップ製品におけるペプチドもヘイリー・ビーバー氏のロード ペプチド リップトリートメント(Rhode Peptide Lip Treatment)のおかげもあって、大きなトレンドとなっている。皮膚科医のシェリーン・イドリス医師はこれを受けて、「ペプチドは文字通りあらゆるものに含まれており、これに関しては私たちの友人であるビーバー夫妻に感謝しなくてはならない」と9月にTikTokで述べている。
リップクリームにペプチドを使ったブランドはロードが初めてではないが、このヒーロー商品は100万個以上売れている。レヴィーヴ(ReVive)は2015年にペプチドを主成分としたアンタンシテ モイスチャライジング リップバーム(Intensite Moisturizing Lip Balm)をローンチした。そして2月、オーレ・ヘンリクセン(Ole Henriksen)はパウト プリザーブ ペプチド リップトリートメント(Pout Preserve Peptide Lip Treatment)を発売している。9月には、アライズオブスキン(Allies of Skin)がペプチド&セラミド リペアリップバーム(Peptide & Ceramide Repair Lip Balm)を、ペルソナコスメティクス(Persona Cosmetics)がデイマスク ペプチド リップバーム(DayMask Peptide Lip Balm)を発売。アイリス&ロミオ(Iris & Romeo)やヌードスティックス(Nudestix)などのブランドもリップ製品にペプチドを配合している。スペイトの共同創業者ヤーデン・ホロウィッツ氏によれば、「リップ トリートメント」は「ペプチド」という検索語と同時に検索される上位のフォーマットだった。
どのペプチドに効果があるのかを確かめること
どのペプチド製品が誇大広告に値するのかを見きわめるには、そのブランドが使用しているデリバリーシステムに対応しているかをチェックしてみる価値はあると、化粧品化学者のアレックス・パジェット氏は言う。彼女はソーシャルメディア上でスキンケア処方についての教育を行っており、TikTokに13万1000人のフォロワーがいる。
「私なら、ペプチドの一部が皮膚に浸透していることを示すインビボ(in vivo)試験またはエクスビボ(ex vivo)試験を経たペプチドを探す」とパジェット氏は述べた。「試験管内ですばらしい結果を出すペプチドもあるが、そのペプチドが入ったフォーミュラを実際に肌に塗布したときに同じ結果が出るとは限らない。ペプチドは、皮膚のバリアを通過し、皮膚の酵素による分解を回避し、実際に皮膚の中の関連する活性部位を見つけて到達するという難題に直面する」。要するに、現在注目を浴びている成分としての価値があるのは、すべてのペプチドではなく一部のペプチドだということだ。
たとえば、ナチュリウムは新しいセラムにカプセル化したペプチドを配合しているが、この技術はパジェット氏も認めている。ナチュリウムの創業者スーザン・ヤーラ氏は、「カプセル化は、ほとんどそれ自体が独自の小さなミニフォーミュラのようなものだ」と述べ、ペプチドを他のフォーミュラから分離しておくことで、安定性と効能を維持し、より肌への浸透性を高めることができると指摘した。
とはいえ、どんなスキンケア製品にもいえることだが、おそらくもっと重要なのは結果だろう。ヤーラ氏は最新の製品を使用した結果について、「私の肌は目に見えてよくなっている」と語った。私たちが話をしたとき、この製品はまだ正式には発売されていなかったが、ヤーラ氏はすでに10個の実験用サンプルを使い終えたと言っていた。「肌にハリが出て、ふっくらした感じになった。使うたびに自分の肌がきれいになっていくのがうれしい」。
スペイト・トレンドウォッチ:ハロウィンのネイル
ハロウィンが目前に迫り、消費者はネイルをホリデー仕様にしている。そのためにDIYに飛びつき、インスピレーションやチュートリアルを求めてソーシャルを探し回っている。「ハロウィンネイル」は明らかにトレンドとなっていて、TikTokの週間平均ビュー数は4710万ビューを記録、前月比470.5%増となっている。
今年人気のスタイルには、エクストラロングで妖艶な装飾を施したハロウィンの悪役ネイルから、ゾンビやおばけのキャスパー、複雑なクモの巣にインスパイアされたデザインまで、ありとあらゆるものが含まれている。
このトレンドに同調しているブランドのひとつが、ハロウィンをテーマにしたプレスオンネイルを多数提供し、ハロウィンスピリットを取り入れているキスプロダクツ(Kiss Products)だ。同ブランドはこのトレンドに追随するだけでなく、消費者の共感を呼ぶ魅力的なPR案件動画をTikTokで作成、積極的にトレンドに参加している。9月に投稿されたハロウィンネイルの動画は310万回ビュー、13万3000の「いいね!」と246のコメントを獲得している。
「新しい美容トレンドとデジタルマーケティングの導入により、美容とホリデーを祝うためのアプローチは進化している。ハロウィンネイルは一過性のトレンドにとどまらず、美容業界における現在進行形の変革と、自己表現の重要性を象徴している」と、スペイトの共同創業者であるヤーデン・ホロウィッツ氏は述べている。
[原文:Glossy Pop Newsletter: Peptides aren’t new, but they’re suddenly everywhere]
SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)