ここ数年、特に新学期シーズンが盛り上がる時期に、美容ブランドが大学のキャンパスで存在感を示すようになりつつある。これはまったく新しい現象ではないが、以前よりもその人気が高まっており、各ブランドはこの貴重な層を取り込むためにさまざまな独自の方式を試している。9月、グロシエ(Glossier)はカーニバルにインスパイアされたツアーバスを制作、サンデーライリー(Sunday Riley)も現在ブランドのバスで大学を巡回している。緊急避妊薬ブランドのジュリー(Julie)は、大学フットボールの試合に合わせた時間帯にリフト(Lyft)の車内に広告を出し、バブル(Bubble)は大学の代表者やアンバサダーを集めて行う2段階式のプログラムを構築している。
ブランドは大学生と関与するために、引き続きクリエイティブな方法を考案している。今回注目するのは3つのブランドとその戦略である。ハリーへア(Hally Hair)は、既存の学生アンバサダーとともに慈善活動を展開。ウィンキーラックス(Winky Lux)はTikTokで言及されたことに反応し、飛行機に乗ってアラバマ大学の社交クラブの新規メンバーに会いくブランドフレンドを募集した。そしてザ・ハニーポット(The Honey Pot)は、新学期シーズンを活用して新入生に性教育と生理用品を提供している。
ひとつの目的に向けて学生を鼓舞する
キャサリン・ウィノカー氏は、2020年にハリーへアをローンチして以来、大学のキャンパスで数え切れないほどの時間を過ごしてきた。2月には、ハリーは大学のスポーツチームと公式にコラボレーションした初の美容ブランドとなった。そして2022年10月からは、ブランドのトラックで全米を回り、学生たちに製品を紹介している。8月、トゥーフェイスド(Too Faced)がこのトラックツアーのパートナーとなり、11月までに大学フットボールの町を中心に29カ所を回る予定だ。[続きを読む]
ここ数年、特に新学期シーズンが盛り上がる時期に、美容ブランドが大学のキャンパスで存在感を示すようになりつつある。これはまったく新しい現象ではないが、以前よりもその人気が高まっており、各ブランドはこの貴重な層を取り込むためにさまざまな独自の方式を試している。9月、グロシエ(Glossier)はカーニバルにインスパイアされたツアーバスを制作、サンデーライリー(Sunday Riley)も現在ブランドのバスで大学を巡回している。緊急避妊薬ブランドのジュリー(Julie)は、大学フットボールの試合に合わせた時間帯にリフト(Lyft)の車内に広告を出し、バブル(Bubble)は大学の代表者やアンバサダーを集めて行う2段階式のプログラムを構築している。
ブランドは大学生と関与するために、引き続きクリエイティブな方法を考案している。今回注目するのは3つのブランドとその戦略である。ハリーへア(Hally Hair)は、既存の学生アンバサダーとともに慈善活動を展開。ウィンキーラックス(Winky Lux)はTikTokで言及されたことに反応し、飛行機に乗ってアラバマ大学の社交クラブの新規メンバーに会いくブランドフレンドを募集した。そしてザ・ハニーポット(The Honey Pot)は、新学期シーズンを活用して新入生に性教育と生理用品を提供している。
ひとつの目的に向けて学生を鼓舞する
キャサリン・ウィノカー氏は、2020年にハリーへアをローンチして以来、大学のキャンパスで数え切れないほどの時間を過ごしてきた。2月には、ハリーは大学のスポーツチームと公式にコラボレーションした初の美容ブランドとなった。そして2022年10月からは、ブランドのトラックで全米を回り、学生たちに製品を紹介している。8月、トゥーフェイスド(Too Faced)がこのトラックツアーのパートナーとなり、11月までに大学フットボールの町を中心に29カ所を回る予定だ。
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9月27日、ハリーは「Streak for a Cause(目的のためにメッシュを入れる)」というイベントを開催、自殺予防のための募金活動に参加する15のキャンパスを支援した。学生たちは10ドル(約1500円)から20ドル(3000円)のチケット代を支払い、収益は2つの非営利団体、モーガンズメッセージ(Morgan’s Message)とアメリカ自殺予防財団に分配された。この日のイベントには1000人以上が参加、約2万5000ドル(約375万円)の寄付金が集まった。
このイベントはハリーのアンバサダーと協力して企画された。アンバサダーは学生仲間にチケットを売り、ソーシャルメディア、ポスター、ソロリティ(女子学生クラブ)のリストを通じて情報を拡散した。イベント会場では、学生たちがハリーのシェードスティックス(Shade Stix)を使って髪の毛に自殺防止啓発の指定の色である青と紫色のメッシュを入れた。9月は自殺予防月間である。
ウィノカー氏によれば、ハリーのチームは、昨年3000人の大学アンバサダーのうちの一人が自殺で亡くなったことをきっかけに、「行動志向」の自殺予防の取り組みに力を入れるようになったという。
「自殺は事故に次いで大学のキャンパスにおける死因の第2位であり、私たちは心を動揺させる重い現実を受け止め、人々がメンタルヘルスについて話し合うことができる安全で前向きな環境を作りたかった」とウィノカー氏は言う。「生徒たちはごく自然な感情として、(この問題に)心を痛めている。メンタルヘルスの問題は学生に影響を及ぼしている」。
イベントでは、学生たちが特別イベントのTシャツを着てキャンパスを歩き、自殺防止という目的に対する意識を高めた。その後、学生たちが開催したレセプションに、ハリーは食事を提供している。また、ハリーは学生たちに他の商品も提供すべく、志を同じくする他のブランドにも協力を求めている。たとえばスーパーグープ(Supergoop)は日焼け止めを、テキサス大学オースティン校ではラブシャックファンシー(LoveShackFancy)が女子学生クラブのために紫と青のスカートを100枚送っている。製品の寄付に加え、スパンクス(Spanx)とリップバームのブランド、ポピー&パウト(Poppy & Pout)の2つのブランドが、ハリーが支援する非営利団体に寄付を行った。
美容ブランドにとって#BamaRushは依然として大きなチャンス
2021年にTikTokで初めて流行した#RuskTok(#BamaRushも参照)は、それ自体が毎年起こる現象となった。このハッシュタグは現在、TikTokで40億ビューを記録している。
こうしたラッシュ(社交クラブの新規メンバー勧誘)の時期に、TikTokerの「バマ・モーガン」氏(@on_thedaily_with_morgan、現在のフォロワー数は17万5000人)がGRWM(私と一緒に準備しようという動画)をシェアし、ウィンキーラックスが地元のターゲット(Target)に売っていないと指摘したとき、ウィンキーラックスの創業者ナタリー・マッキー氏は、これは見逃すには惜しいチャンスだと考えた。
「これは文化的な時代の流れにおける重要なことであり、直感的に利用すべきだと思った。(さらに)当社は非常にガーリーなブランドで、中部や南部の顧客を多数取り込んでいる」とマッキー氏は言う。モーガン氏の最初の投稿から2日後の8月18日、マッキー氏はアラバマ州タスカルーサに向かい、ラッシュに参加している女の子たち全員にウィンキーラックスの商品を手渡しすると発表した。
タスカルーサ行きの飛行機に飛び乗る前に、マッキー氏はスキンケアブランドのバブル(Bubble)や、熱を加えないカール用ヘッドバンドのメーカーであるローブカールズ(RobeCurls)など、女子大生をターゲットにした他のブランドのチームメンバーに声をかけている。
各ブランドはホテルの一室にギフトを渡すスイートを設営、DMで#bamarushのタグをつけた学生を招待した。「どれも高価なものではなかった」とマッキー氏は述べ、すべて1日で計画通りに事が進んだと付け加えた。ウィンキーラックスはその後、タスカルーサの女子学生クラブが集まる地域でマスカラのサンプルを配った。
マッキー氏がニューヨークに戻った際、「バマ・モーガン」氏が女子学生クラブからオファーを受けていないことが判明した。それに対して、マッキー氏はまたTikTokを作り、モーガン氏に同情を示してウィンキーラックスのインターンシップを提供している。
こうしたアクティベーションの成功を測るのは難しいが、マッキー氏によると、ウィンキーラックスは大学訪問中にフォロワーが急増したという。またさらに、多くの学生がもらった商品に関する投稿を行い、商品を使ったコンテンツを作成した。マッキー氏はサンプリング時に課題になりがちな商品のシェードを合わせる秘訣を知っているため、現場にいたことが役に立ったという。
「大々的なサンプリングキャンペーンをやって人々が自分で色を選んでも、50%くらいしかシェードは合わないだろう」とマッキー氏は話す。だが一度このブランドのコンシーラーで自分に合うシェードを見つけたら、「本当に長い間その商品を使い続けることになる」と、リピート購入率が高いことを説明した。
性教育:大学編
ブランドのメッセージや商品が大学生から支持される理由はさまざまだが、ザ・ハニーポットにとってその理由は非常にシンプルだ。つまりセックスである。
「大学でのマーケティングや、自分の体について深く学びつつある若者たちについて考えるとき、どのような選択をするにせよ、自分で決定を下すために必要な知識と、その過程を支援する製品を手にすることができるように、私たちは確実に若者たちのいる場所にいて教育とエンパワメントを提供できるようにしたい」と、ザ・ハニーポットのブランドマーケティングディレクター、ジャズミン・ウィリアムズ氏は語った。
他のマーケターやブランドと同様に、ザ・ハニーポットのアプローチは「顧客がいる場所で顧客に出会う」こと、つまりキャンパスで顧客に出会うことだった。「新学期のあいだは、開放感、受容、商品や情報、知識、つながり、コミュニティを求めるといったエネルギーに満ちている。私たちはそこに参加したい」。
そのため、今年は寮の部屋を模したインスタレーションを設置、そこを訪れた学生たちがブランドやマスコットのミス・クーチー(女性器のアニメーション)と触れ合えるようにした。このブランドのマスコットについてウィリアムズ氏は次のように語る。「(ミス・クーチーは)非常にリアルな方法で挑発的にブランドを体現している。私たちはヴァギナという言葉を使う。ヴァギナがどのように見えるか、外陰部がどのように見えるかを恥ずかしいとは思わない。それは非常に意図している点だ。なぜなら私たちが影に隠れて言葉を濁すようなことをすれば、人々は自分の膣や外陰部、あるいは自分が抱える問題について気まずい思いをして、オープンに話すことができなくなるからだ。ミス・クーチーはつねにちょっとしたユーモアや遊び心を交えて教育を行っている」。
ザ・ハニーポットは今回のツアーを企画するにあたり、HBCU(歴史的黒人大学)に特化した大学マーケティング会社、インプレッションズ・オブ・ビューティ(Impressions of Beauty)と提携した。ツアーは8月から9月初めにかけて、クラーク・アトランタ大学、アラバマA&M大学、ジャクソン州立大学、ルイジアナ州ザビエル大学、ハンプトン大学を回った。ブランドはインティメイトウォッシュ、フェミニンワイプ、生理が重い日用のライナーの3製品のサンプルを各大学で300個ずつ配布している。
ザ・ハニーポットは、こうしたアクティベーションを通じて無料で教育を提供することに誇りを持っているが、潜在的な新規顧客も獲得している。無料の商品を受け取る際、学生はザ・ハニーポットのウェブサイトに移動するQRコードをスキャンする。すると商品ページではなく、若者のセックスの専門家によるフックアップカルチャー(一夜限りの関係性)についてのブログ記事にアクセスすることになる。これはこの年齢層にとって非常に関連性のある話題だ。ウィンキーラックスがそうだったように、学校でのサンプリングの機会はザ・ハニーポットにとっても大きな勝利だと、ウィリアムズ氏は言う。
そこに機会がある限り、大学でのマーケティングが減速することはないだろう。マッキー氏が言うように、それは「コアターゲット・オーディエンスのクリティカル・マスを得られる瞬間」となるのだ。
[原文:Glossy Pop Newsletter: College has become beauty marketing’s biggest opportunity]
SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)