デジタル広告では、この1年ほどさまざまな混乱が続いている。そのため、広告に対する消費者の信頼が多少揺らいでいることは驚くにあたらない。5つのチャートで現在の状況をこれから紹介していく。
デジタル広告では、この1年ほどさまざまな混乱が続いている。
まず昨年末には、プログラマティック広告の自動設定により、ヘイトスピーチを拡散するフェイクニュース(偽ニュース)サイトが蔓延してしまう仕組みなど、醜い問題が明るみに出た。続いて3月には、ブランドセーフティ問題が浮き彫りになり、広告主たちがYouTubeをボイコットする結果になったが、デジタル広告取引における透明性に関しては未解決の問題として残っている。そして、多くのパブリッシャーたちが少なくとも以前よりは管理しやすくなっているというものの、アドブロックもなくなってはいない。
そのため、広告に対する消費者の信頼が多少揺らいでいることは驚くにあたらない。5つのチャートで現在の状況をこれから紹介していく。
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フェイクニュースと一緒くたにされる広告
楽天マーケティング(Rakuten Marketing)が聞き取り調査した2500人のうち83%が、オンライン広告は邪魔だと認識している。同レポートによると、イギリス人とオーストラリア人はフェイクニュースのようなネガティブなオンライン体験と広告を結びつけ、アメリカやほかのヨーロッパ人よりも広告に対して厳しい評価をしている。
ちなみに、フェイクニュースと広告を結びつける人の割合は、フランスとドイツでは54%、アメリカでは58%という結果だ。全回答者の80%は、時を経ても、またデバイスやプラットフォームを問わず、オンライン広告は一向に改善していないと述べている。

出典:楽天マーケティング
ロンドンはバブル
イギリスの新聞紙、トリニティ・ミラーと調査会社イプソス・モリ(Ipsos Mori)との共同レポートによれば、ロンドン市民と他地域住民の見解には明確なギャップがある。
イギリス全体では、成人の42%がブランドに不信感(Distrust brands)があり、69%がオンライン広告を信用していない(Distrust advertising)。同レポートによると、3分の1を少し上回る人々が、以前よりもブランドを信頼しなくなった(Trust advertising less)と答え、43%が広告をこれまでと比べて信用しなくなったと認めた。
ロンドン以外の人をターゲットにした場合、ブランドがうまく行っていないことも、この結果は示している。イギリスの成人の32%は、現在イギリスに住む人々の好みをブランドは反映していないというが、ロンドンに住む人で同じように答えたのは24%だった。

チャート出典元:トリニティ・ミラーおよびイプソス・モリ
「広告業界は現実を見つめることができず、これまで通りのやり方をしている。大衆の態度は大きく変化しており、ブランドはこうした状況から取り残されるリスクを認識する必要がある」と、トリニティ・ミラーの最高レベニュー責任者、アンディ・アトキンソン氏は述べた。
アドブロックが依然として問題
アドブロックは、近頃のブランドセーフティや透明性という、ほかの厄介な問題と一緒にふたたびメディアの注目を浴びることになったのかもしれないが、パブリッシャーたちにとっては依然として非常に大きな問題として残っている。オンライン出版社協会(Association of Online Publishers)によると、イギリスでパブリッシャーは、アドブロックのために広告収益を年間最大200万ポンド(約3億円)失っている。パブリッシャー損失の平均値は年間50万ポンド(約7000万円)近くだ。
パブリッシャーの多くが、オンサイト広告量を減らしたり、より多くのアドフリープロダクトオプションを提供するなどの行動を起こしている。だが、楽天マーケティングのレポートにあるように、多くの人々は依然として広告に対して厳しい見方をし、概して不信感を抱いており、イギリスおよびオーストラリアではそれが顕著だ。
アメリカの82%、フランスの73%、ドイツの84%に比べて、イギリスでは88%の人がオンライン広告が邪魔だと感じている。オーストラリアではその数字はさらに高くなり、89%が広告を煩わしいと感じている。楽天調査の回答者の3分の1は、アドブロックを使用していると答えており、45%が広告体験が良くないとサイトを離脱し、28%がそのサイトには戻らないと回答している。

出典:楽天マーケティング
そうはいっても、嫌な体験をしたことがあるというアメリカ人はイギリス人よりも多い。同じ楽天レポートで、アメリカ人の43%がオンライン広告で嫌な体験をしているといっており、対するイギリスの消費者は25%という数値だ。
従来型メディアが優勢
アドブロックは依然として広く利用されており、マーケティング・シェルパ(Marketing Sherpa)による米国調査によると、オンラインポップアップ広告(Pop-ups)により直接購入意思決定に至ったアメリカ人はたった25%であり、すべての広告のなかでオンラインポップアップがもっとも信頼性が低いことは驚くに値しない。
同調査によると、いまだにもっとも信用されている広告形態は、印刷広告だ(その広告形態が新聞紙を救うことができないのは残念なことだが)。印刷広告(Print ads)を購入意思決定の際にもっとも信頼していると答えたアメリカ人は82%、次にテレビ広告(TV ads)が僅差の80%で続いている。
検索広告(Search ads)は、すべてのオンライン広告のなかでもっとも信頼できるものとみなされ、その広告を目にしたあとに進んで購買する気になるという人は、61%にのぼった。ソーシャルメディア広告(Social media ads)に信頼を寄せる人は43%で数値が落ちるが、バナー広告(Online banners)は39%という結果だった。

チャート出典元:マーケティング・シェルパ
有益な広告は歓迎される
広告が個人の利益に沿い、適切な頻度に制限され、適切な形式(ポップアップではなくネイティブ広告など)で表示されると、人々はそれらを支持する。楽天レポートの調査対象者の過半数(70%)は、広告は個人の利益と合致するべきであるといい、そうすれば、オンラインカスタマージャーニーで有益な役割を担うようになると述べた。
20%の人がオンライン広告が有益なときには、全体的なショッピング体験が改善される可能性があるとまでいっている。クーポンリンク、メール、ソーシャル広告などが支持されるフォーマット。プレロール動画広告、ポップアップ、携帯端末のプッシュ通知で配信される広告などが一番支持されないフォーマットだ。

出典:楽天マーケティング