「限定グッズ」活用に、ますます傾倒する D2C ブランドたち :「コミュニティが求めるものを提供する」

D2Cブランドのあいだで、限定グッズを用いたマーケティングに一層の注目が集まっている。

これまでも、ポップアップ店舗や派手な展示会で、ブランドロゴやスローガン入りの限定グッズをプレゼントするD2C企業は存在した。しかしいま、こうした手法を強化するブランドが増えている。それも、以前からあった「ブランドのトートバッグをプレゼント」といったレベルの話ではない。

限定グッズの活用は、小売業界では使い古された手法だ。しかし、マーケティングストラテジストで投資家の、ニック・シャーマ氏は「これまで以上に、ブランドの熱狂的ファンを対象に、限定グッズ展開に力を入れる新興ブランドが増えている」と分析する。現在、D2Cブランドのあいだでは「実際に着るとカッコいい(actually cool to wear)」というコンセプトや、Zoomを活用した限定グッズ戦略がトレンドになっている。こうした取り組みは、限定グッズを購入した顧客たちを、広告塔にするのが狙いなのだという。

収益を生み易い

シャーマ氏によると、特にストリートウェア愛好家のあいだでは、以前から限定グッズが大きな話題になることが非常に多かったという。同氏は例として、2018年にデザイナーのバージル・アブロー氏とコラボした、チャチャマッチャ(Cha Cha Matcha)や、2019年に喫茶店のパーカーをデザインしたブランドン・マックスウェル(Brandon Maxwell)などを挙げる。シャーマ氏は、ほかにもソウルサイクル(Soulcycle)の部屋着や水筒が、「第2のコミュニティを形成しそうなほどの人気」を博したと述べる。

しかしここ数カ月のあいだ、シャーマ氏が挙げた事例以上に、限定グッズのラインナップを拡充するブランドが急増している。最近では、CBD(カンナビジオール:大麻草の有効成分のひとつ)成分を含む飲料ブランドのリセス(Recess)が、パーカーや日記、帽子といった商品を直接販売する「リアリティウェア」というチャネルをローンチした。限定グッズのスタートは、創業者のベン・ウィッテ氏が「収益を生み易いマーケティング施策」として、同社の戦略に組み込まれたものだ。

顧客との繋がりをいかに生み出すか

また、スパークリングテキーラを提供するD2Cブランド、オンダ(Onda)をはじめ、新興D2Cブランドのあいだでも、こうした限定グッズ展開はトレンドになりつつある。オンダの共同創業者兼CEO、ノア・グレイ氏は、「創業当初から飲料カテゴリーに収まらないブランド構築を目指してきた」と語る。そんな同社は今秋、D2Cで新たにスポーツアパレルを展開することになった。同じく「オンダ」と名付けられた同ブランドでは、90年代のサーフスタイルを、2020年代にアップデートした商品が展開されている。グレイ氏は、これが明るい日差しを連想させる、同社のブランドイメージに自然にフィットするだろうと期待している。

もはやこうした戦略は、D2Cブランドのあいだではかなり浸透している。たとえば、美容ブランドのグロッシアー(Glossier)は、2019年10月にグロッシウェアー(GlossiWEAR)をローンチ。グロッシアーは2014年、同ブランドがローンチされた直後、40ドル(約4200円)のスプラッシュ柄のスウェットシャツを販売している。グロッシウェアーはこれを拡張したブランドだ。現在、同ブランドの商品は非常に人気を集めており、パーカーを中心に、ホワイトダッフルバッグなどの限定グッズを販売している。

グロッシアーのマーケティング担当 SVPを務めるアリ・ワイス氏は「常に創業者のエミリー(・ワイス氏)が初期の頃に抱えていたアイデアを大切にしている」と語る。「もし、美容ブランドであっても、顧客がそのブランドのスウェットを着たいと思わせる、そんな存在になれたらどうなるだろう?」。グロッシアーにとって、最優先なのは美容であることに変わりはない。しかしワイス氏は「顧客との繋がりを生む要素をいかに作り出すかが、ブランディングにおいては重要になる」と語る。「グロッシウェアーは、顧客にサプライズと喜びをもたらす、新たなチャネルになった」。

また、「限定グッズの展開は、潜在的な収益を生み出すことに繋がる」と、前出したマーケティングストラテジスト兼投資家、シャーマ氏は強調する。同氏は、チャチャマッチャがこうした戦略をはじめ、収益が跳ね上がったことが、現在のD2Cブランドに大きな影響を与えている」と語る。同氏によれば、限定版の1日あたりの売上は、「通常版の3〜4倍にも及ぶ」という。

コミュニティが求めるものを提供する

サブスクリプション制のビタミン製品を取り扱う、リチュアル(Ritual)の元マーケティング担当 VP、ローレン・クラインマン氏は、米DIGIDAYの姉妹サイトのモダンリテール(Modern Retail)に対し、「限定グッズの活用は、新興ブランドのフォロワーを生むのに適した方法だ」と語る。リチュアルの製品が販売がはじまった当初、リチュアルのサブスクライバーやインフルエンサーらが、カプセルボトルやパッケージの箱を、SNSに投稿するようになったと、同氏は振り返る。その後、社員向けにブランドのロゴが印刷された黄色いスウェットを作り、Webサイトに掲載すると、顧客から「この服はどこで買えるのか」という問い合わせが来るようになり、2019年には公式ストアを立ち上げたのだという。「サプリは、摂取したら手元から製品がなくなってしまう。顧客にとって、自分が契約者であり、ファンであることを周囲に示すために、スウェットはとても重要なアイテムだったのだ」。

クラインマン氏は、ブランドにとって「限定グッズ、特にアーティストとのコラボレーションは、今後大きなトレンドになるだろう」と語る。同氏は、インスタグラムでスウェットについて何百もの問い合わせがあったことを振り返り、次のように述べた。「コミュニティが求めるものを提供するのは、当然のことだ」。

[原文:‘Give your community what they want’ DTC brands are increasingly leaning on merch

GABRIELA BARKHO(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)