2021年7月26日、ソフトバンクが支援するゴーストキッチンプロバイダーのリーフは、消費者向けの配送アプリを立ち上げることを発表した。アプリの試験運用は、リーフの本拠地マイアミで開始する予定だ。同社によると、プログラムの開発状況によっては、試験運用をほかの地域にも拡大する可能性があるという。
ゴーストキッチンを提供するリーフ(Reef)は現在、消費者向けの配送アプリを構築し、独自の流通網を手に入れようとしている。
2021年7月26日、ソフトバンク(Softbank)が支援するこのスタートアップは消費者向けの配送アプリを立ち上げることを発表した。アプリの試験運用は、リーフの本拠地マイアミで開始する予定だ。同社によると、プログラムの開発状況によっては、試験運用をほかの地域にも拡大する可能性があるという。このアプリは今後、バーガーファイ(BurgerFi)やマンvsフライズ(Man vs Fries)のようなデリバリー専用ブランドをはじめ、地元で利用可能なデジタルレストランすべてを掲載していく。このアプリを使えば、リーフが現在提供しているアイスクリームや日用品も購入できるようになる。
リーフはゴーストキッチンプロバイダーのなかでも成長株で、資金も潤沢にある。同社のデリバリー専用キッチンは2020年2月の50店舗から、現在は300店舗にまで増加。2020年11月に7億ドル(約770億円)の資金調達を果たし、現在では米国、英国、カナダ、ドバイで事業を展開している(2021年7月現在)。新しいアプリの導入は、自社で管理できる業務を増やす取り組みの一環だ。リーフでは自社でもデリバリー用車両を所有しており、その使用頻度は高い。
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アプリのローンチに伴いリーフが心がけているのが、「迅速な配達」というミッションの遂行を徹底することだ。「つまり、一般的な商品の配達は10分以内、食事は30分以内という消費者の暗黙の期待を裏切らないように、ロジスティクスで対応できるようになる」。そう話すのは、リーフ開発担当シニアバイスプレジデントのマイケル・コリンズ氏である。
ゴーストキッチン 各社で異なるビジネスモデル
現在のところ、ゴーストキッチンの世界は、キッチン・ユナイテッド(Kitchen United)やクラウドキッチンズ(CloudKitchens)、ズール・キッチンズ(Zuul Kitchens)などの有名どころがひしめいているが、実は各社独自のビジネスモデルを持っている。
リーフの場合は、駐車場の空きスペースを中心としたビジネスモデルだ。地主や土地開発業者と契約を結んで空き駐車場を活用し、狭い施設でも営業が可能なさまざまな事業者に場所を提供する。ゴーストキッチンはその一例で、持ち帰りや、ドアダッシュ(DoorDash)やウーバー・イーツ(Uber Eats)などのさまざまなデリバリー専用アプリを利用した宅配が一般的だ。そのほかにもクリニックや物流サービスなど、駐車場ならではのサービスの提供を計画している。
一方、キッチン・ユナイテッドが取り組むのは、キッチンセンターの構築だ。プレッツェル専門店のウェッツェル・プレッツェル(Wetzel’s Pretzels)やB級グルメのハラル・ガイズ(Halal Guys)のような人気店に加え、地元のチェーン店も呼び込む。ほかにも、ズールは、オフィスビルのような大手と組み、ゴーストキッチンのサービスやブランドのホワイトラベリングを図るなど、各社のさまざまな工夫が見て取れる。
こうした取り組みの根底には、共通の要因がいくつか見られる。集約すると、「利ざやを増やす」「外部業者の依存度を減らす」のふたつになる。現在、ゴーストキッチンはそのほとんどが、配達とマーケティングに関しては、ドアラッシュやウーバー・イーツのようなサービスを頼りにしている。市場調査会社エジソン・トレンズ(Edison Trends)によると、主要なデリバリープラットフォームのマーケットシェアは、2020年に爆発的な成長を見せたあと、2021年も依然として増加を続けている。たとえば4月26日の週の「週間支出」(任意のデリバリープラットフォームに使われた平均金額を示すエジソンの専門用語)を見ると、ドアダッシュは2020年半ばと比較して53%増加し、ウーバー・イーツは20%の成長を見せた。
自社でまかなうメリット
「デリバリープラットフォーム各社は、取り組みが多様であるため、消費者に届ける効率的なデリバリーの方法を見出すことができた。それが大きな利益を生み出すとは限らないが、効率的であるのは間違いない」。そう話すのはエジソン・トレンズ共同創業者ヘタル・パンジャ氏だ。同氏は今年に入り、米DIGIDAYの姉妹サイトであるモダンリテール(Modern Retail)に対し、「彼らは、パンデミック以降も価値ある提案ができることに気づいたのだ」と語っている。
今回のリーフの試験運用は、外部業者への依存を軽減する配送モデルの構築が可能なのかを判断する一手段である。「私たちにとってデリバリー業者との提携はとても大切だ」とリーフのコリンズ氏はいう。現時点で重要なのは、マイアミでは何がうまくいき、何がうまくいかないのかを見極めることだ。
その一方で、リーフは今後、事業工程を可能な限り自社でまかなえるような新しい方法を模索することを念頭に置いていくとコリンズ氏は話す。「弊社ではこれまでも常に、配送工程を社内で実施しようと取り組んできた。デリバリーに対するユーザー体験がさらに向上するような、便利なサービスとしてできる限り成長させたい――私たちはそう考えている」。
[原文:Ghost kitchen provider Reef is launching its own app]
Cale Guthrie Weissman(翻訳:SI Japan、編集:戸田美子)