今日、ブランドのマーケティング戦略において、知名度の高いセレブリティと同じくらい引っ張りだこなのがブロガーだ。しかし、インフルエンサーとしての彼らと広告主との関係はまだまだ歴史が浅く、混乱や不透明さを伴うことが多い。
化粧品ブランドのリメル・ロンドン(Rimmel London)は、そうしたインフルエンサーの力を借りながらも、これまでのぎこちない関係を避けるため、新しい取り組みを発表した。AR(拡張現実)を使ったアプリ「ゲット・ザ・ルック(Get The Look)」だ。これを使うと、ブロガー、友達、ただの通行人、どんな人のメイクスタイルも「盗む」ことができる。
今日、ブランドのマーケティング戦略において、知名度の高いセレブリティと同じくらい引っ張りだこなのがブロガーだ。しかし、インフルエンサーとしての彼らと広告主との関係はまだまだ歴史が浅く、混乱や不透明さを伴うことが多い。
化粧品ブランドのリメル・ロンドン(Rimmel London)は、そうしたインフルエンサーの力を借りながらも、これまでのぎこちない関係を避けるため、新しい取り組みを発表した。AR(拡張現実)を使ったアプリ「ゲット・ザ・ルック(Get The Look)」だ。これを使うと、ブロガー、友達、ただの通行人、どんな人のメイクスタイルも「盗む」ことができる。
メイクをスキャンできるアプリ
ビューティーファンにとって、気になる仕掛けが搭載された、このアプリ。デバイスのカメラを使って、モデルが使っている化粧品の色や特徴を捉え、それにもっとも近いリメル・ロンドンの商品を提案してくれるのだ。ただし、カメラに写るモデルが、たとえ別ブランドの商品を利用していたとしても、アプリを通して提案されるのは、リメル・ロンドンの商品となる。
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さらに、その商品を自分の顔に使ったらどう見えるか、このアプリはシミュレーションをして見せてくれることも可能だ。もし気に入れば、Googleショッピングで購入もできる。今後は、リメルのWebサイトなどでeコマースも組み込んでいく予定だ。

アプリ「ゲット・ザ・ルック(Get The Look)」の広告
広告に反応しないZ世代
Z世代は、従来の広告には反応しないことは、よく知られている。商品について知りたいとき、彼らは友人や知人に尋ねるからだ。それは実際の友人かもしれないし、ソーシャル上のインフルエンサーかもしれない。グローバル調査会社イプソス(Ipsos)のレポートによると、Z世代のうち68%は製品購入時に友人知人の意見を重要視するのに対し、TVやバナー広告を参考にすると答えたのは、それぞれ34%と19%しかいなかった。
リメルのグローバルマーケティング・バイスプレジデントであるモントセ・パソーラス氏は、「我々は、Z世代がブランドよりも友人や知人の影響をより受けるということを知っている。そこに関わっていきたいと考えている」と、米DIGIDAYに語った。
そのため、リメルのソーシャルコンテンツは、インフルエンサーをますます重要視してきている。Snapchat(スナップチャット)のアカウントをインフルエンサーに担当してもらったり、買い物ができる(ショッパブル)YouTubeビデオなどを導入してきたが、最近ではマイクロインフルエンサーの役割も大きくなってきているという。
口コミを醸成する仕掛け
最近行われたイベント#LondonLookコンペティションでは、18人のリメルのファンたちをロンドンに招待し、ブランドのためのコンテンツをそれぞれ作ってもらった。このイベントの応募には、最終的に1万2000人のエントリーを集まったそうだ。

リメルのアプリを使用している場面
すでに、影響力をもつインフルエンサーたちの恩恵も受ける一方で、リメルは小さなグループにおけるマイクロインフルエンサーたちにも、アプリ「ゲット・ザ・ルック」を使ってもらうことを狙っている。ユーザーはアプリを使って、自分のバーチャルなメイクをソーシャル上で友人とシェアすることができ、またリメルのギャラリーに送ることもできる。
アプリのダウンロード数はもちろん重要だが、リメルにとって特に重要なのはエンゲージメントだろう。「結果として売上向上につながればもちろん素晴らしい。しかしリメルはセールスとしてのツール以上の価値を狙っている。それは消費者により良い体験をしてもらうことだ」と、パソーラス氏。
リメルが海外のオーディエンスを獲得していくにつれて、実際の店舗が存在しない地域の消費者たちとも商品についてやり取りをする場面が出てくるだろう。店舗がないアルゼンチンやスペインといったマーケットでは、このアプリが実店舗の代わりとなるという目的も存在しているのだ。
アプリで提供するより良い体験
多くのビューティーブランドにとってeコマースへの移行は単純ではない。そもそも購入前に試す方法が限られているため、消費者の多くがまだ店舗で商品を購入している。
AR(拡張現実)によって、店舗でのそういった体験をデジタルに移行することができるといわれてきたが、ARはもはやビューティブランドにとっては新しい試みではない。リメルの親会社であるコーティ(Coty Inc.)は、サリー・ハンセン(Sally Hansen)の「マニマッチ(ManiMatch)」やカバーガール(Covergirl)の「ビューティユー(BeautyU)」といった商品試用アプリをリリースしてきた。ロレアル(L’Oreal)のアプリ「メーキャップジニアス(Makeup Genius)」は、2014年にローンチされ600万ダウンロードを記録している。
コーティのグローバル・デジタル・ディレクターであるエローディー・レヴィ氏は「単に最初にアプリを活用したことやテック技術導入という先進性だけを評価されるアプリにはなりたくなかった。我々はアプリによって、消費者により良い商品の体験をしてもらいたいと思った」と語る。
今後の精度に期待

ケイト・モスのメイクアップした顔をアプリで盗む
アプリには300以上のリメルの商品が搭載され、開発には6カ月が費やされた。開発に関わったエージェンシーのホリション(Holition)は、画像認識ソフトである「フェイス(FACE)」を洗練させ、データベースに新しく顔の形が登録されるにつれて常に学習を続けるようにした。現在データベースには7000の顔の形が登録されている。
リメル側の作業としては、アプリに新しいスタイルや機能を常に入力し続けることになる。
ホリションのCEOであるジョナサン・チッピンデール氏が、米DIGIDAYに語ったところによると、これまではテクノロジーの導入に時間がかかってきたが、現在は消費者の期待に応えられるほどのレベルにまで実用的になったという。使い勝手も良く、商品が誤った形で表示されて消費者から不要だと思われてしまうリスクも少なくなったそうだ。
「マスカラが良く見えるだけではだめで、適切な顔の位置に配置されなければいけない。1ミリずれてしまうだけで全部が台無しになってしまうからだ」。
Grace Caffyn(原文 / 訳:塚本 紺)