2016年のスーパーボウル広告の最優秀作品のうち、テレビCMではない広告があった。少々、どこの企業の広告か分かりづらいクリエイティブではあったが、触れた者にとって忘れがたい体験を提供できていたのは間違いない。

クライアントは、米食品・飲料メーカー、ペプシコ（PepsiCo）が販売するスポーツドリンク「ゲータレード（Gatorade）」。Snapchat（スナップチャット）用のアニメーションフィルターを作成し、ユーザーが自撮りした動画にバーチャル「ゲータレード」をインサートできるというものだった。

通称「ゲータレードシャワー」と呼ばれる、この行為。アメリカのスポーツイベントでは、伝統的な行事となっている。日本のプロ野球優勝チームにおける「ビールかけ」のような慣習といえるだろう。

Advertisement

この広告が「ゲータレード」のものだと判別できるのは、容器のジャグに書かれた「G」のひと文字が映る一瞬のみ。しかし、スーパーボウルの期間中だけで、1億6000万インプレッションを獲得したと、同ブランドの消費者エンゲージメント部長であるケニー・ミッチェル氏は話す。この数字は、スーパーボウルの試合を視聴した1億1500万人よりも多い。

「最強のマーケティングだった」

ミッチェル氏によると「ゲータレード」は、とあるメッセージングプラットフォームと親しい間柄になってきているが、まだそのプラットフォームのアカウントは開設していない。事実、今回の広告も、SnapchatのCSO（最高戦略責任者）であるイムラン・カーン氏とシカゴで一杯飲みながら、将来的なパートナーシップについて話し合っていた際に生まれたアイデアだったという。

「若くて競争心の強いアスリートにつながりたいのであれば、Snapchatこそが使用を検討するべきプラットフォームだと思った」と、ミッチェル氏はコメント。「象徴的な瞬間を消費者に体験できるような形でエンゲージさせるためにも、パートナーシップを組めたことは素晴らしい経験だった」。

デジタルコンテンツマネジメント企業のアトマイズド（Atomized）のCEOであるクリス・ゴマーサル氏は、「Snapchatとスーパーボウルを組み合わせた今回の『ゲータレード』の広告は、タイミングが完璧だった」と評価する。「友人たちが何度も何度も繰り返し、広告動画をシェアしながら遊ぶという形で、最強のマーケティングだったはずだ」。

その他のプラットフォームでも

また、「ゲータレード」には、リアルタイムサービスをかろうじて維持しているTwitterにも33万4000人のフォロワーがいる。「マーケティングはその瞬間を大切にし、リアルタイムで、スポーツのような躍動感あるスピードで行わなくてはならない」と、ミッチェル氏は今回のプロモの成功を強調した。しかし、Twitterにアルゴリズムが導入され、精選されたツイートがフィードのトップに表示されるように改善されているため、「ゲータレード」もTwitterに対する方針を考え直している。

「我々は、頻度よりもインパクトを重視している」と、ミッチェル氏は話す。頻繁に多くのツイートをするよりも、どんなメッセージがフィードのトップに表示されるのかを分析したツイートを作成することに時間をかけたいのだろう。

一方で、インスタグラムの「ゲータレード」フォロワーは、74万4000人ほど。ミッチェル氏によると、同ブランドはインスタグラムをアート的な映像や画像を投稿するプラットフォームと認識している。「我々が投稿した画像や映像を、ユーザーが拡大しポスターにして壁にかけたいと思うようなものを作りたい」と話す。

Results require sweat. #WinFromWithin

Gatoradeさん(@gatorade)が投稿した写真 – 2016 2月 16 11:59午前 PST

汗を流さないと結果は出ない。 #WinFromWithin

また、Facebookでは動画を重視。「ゲータレード」は、2015年にローンチされたFacebookの「360度動画」の初期パートナーでもある。「FacebookとYouTubeで大事なことは、スケールとターゲティングだ」と、ミッチェル氏が説明するとおり、もはやFacebookにおいて「いいね！」数は、気にされなくなってきたが、それでも同ブランドは730万もの「いいね！」をFacebookで獲得している。

Garett Sloane（原文 / 訳：BIG ROMAN）
Image via Raffi Asdourian