TikTokのバイラルコンテンツは、ブランドのマーケティング戦略に影響を与え続けている。その最新の例がGap(ギャップ)だ。同社は先日、2000年代初期に販売を中止したデザインのパーカーを再販しはじめた。そのきっかけとなったのは、TikTokのクリエイターやインフルエンサーたちだった。
TikTokのバイラルコンテンツは、ブランドのマーケティング戦略に影響を与え続けている。その最新の例がGAP(ギャップ)だ。同社は先日、2000年代初期に販売を中止したデザインのパーカーを再販しはじめた。そのきっかけとなったのは、TikTokのクリエイターやインフルエンサーたちだった。
2021年1月、インフルエンサーのバーバラ・クリストファソンが、TikTokでこのパーカーについて投稿したところ、ハッシュタグ「#gaphoodie」は、現在までに580万ビュー以上を獲得。これを受け、人々は製造中止となっているこのパーカーを見つけようと躍起になり、eコマースサイトでは販売価格が300ドル(約3万3000円)まで上昇した。
この夏、GAPはこうした消費者動向に応えるべく、ヴィンテージブラウンのロゴパーカーを再発売すると発表。6月26日より、Webサイトで開始される先行販売の宣伝を、バーバラ・クリストファソンとともに開始した。さらに同社は今秋発売予定の製品デザインをTikTokで募る、復刻カラーコンペティション(Color Comeback Competition)を実施。GAPは、デニムブランドのトゥルーレリジョン(True Religion)をはじめとした、商品デザインにTikTokを活用するブランドのひとつになった。
Advertisement
ファッションリバイバルの波に乗る
GAPのグローバルマーケティング部門責任者であるメアリー・アルデリート氏は、米DIGIDAYの姉妹メディア、モダンリテール(Modern Retail)に対し、パーカーのバイラル性の活用は、同社のマーケティング戦略の一部になっていると述べる。「我々のフォロワーは、ヴィンテージブラウンのロゴパーカーに大きな関心とエネルギーを注いでいた」とアルデリート氏は述べる。こうしたフォロワーの熱意を受け、同社は復刻版パーカーの再販を決めたという。
「我々は、TikTokにおけるGAPのプロダクトトレンドに、リアルタイムで対応してきた」とアルデリート氏。「バーバラ・クリストファソンがTikTokに投稿した、90年代のヴィンテージブラウンパーカーを着こなす写真を、インスタグラムでも再投稿したところ、フォロワーやメディアから驚くべきフィードバックが寄せられた」。このインスタグラムへの再投稿は、いまでもパフォーマンスがもっとも良い投稿のひとつであり、これまでに2万4000以上のいいね!を獲得しているという。
同氏はほかにも、インフルエンサーによるTikTokの投稿が、特定のプロダクトの売上増加に貢献した例を挙げる。たとえばGAPのハイライズ・チーキー・ストレート・ジーンズ(High Rise Cheeky Straight Jeans)を紹介する投稿などがそうだ。
現在GAPはTikTok、およびクリエイターと提携しているが、その目的はオーガニックな投稿による売り上げを「超えた成果」を出すことにあるという。そのためには、TikTok、およびクリエイターたちと提携し、彼らにプロダクトを送付して「インスピレーションを刺激したりする」ことが大切だと、アルデリート氏は述べる。
そもそもTikTokでは、入手困難なビンテージ商品が特に人気だ。たとえば、デニムメーカーのトゥルー・リリジョン(True Religion)は、Z世代のTikTokユーザーによるリクエストに基づき、復刻版を販売。「『#truereligion(#トゥルーリリジョン)』のハッシュタグは、2000万回以上再生されている」と、同社のデジタル部門エグゼクティブ・バイスプレジデント、アンゲラ・クラーク氏は語る。
90年後半から2000年代前半にかけてのファッションが復活しているおかげで、「若い消費者が、トゥルーリリジョンのようなブランドを発見するという現象が起きている」とクラーク氏は述べる。同社は現在、メンズ、レディースの両方で限定アイテムをリリース予定で、そこにはトゥルーレリジョンを象徴するカラーポケットステッチ、中古の素材を再利用するアップサイクルデニム、リコンストラクトコレクションなどが含まれるという。
TikTokでアイデアを「クラウドソーシング」
GAPはまた、新たに発見したTikTokのバイラル性を、顧客からより多くのフィードバックを集めるチャンスとしても見ている。たとえば同社は、この秋に発売されるGAPのアイコンであるロゴ入りパーカーの次のカラーを顧客に選んでもらう、復刻カラーコンペティション(Gap Hoodie Color Comeback)を実施している。このコンテストは、6月26日から7月2日まで開催され、参加者はインタラクティブな投票機能を利用して、GAPへのフィードバックを行うとともに、パーカーの色は何が良いか、投票を行った。
アルデリート氏によると、GAPは同コンペティションを開催するにあたり多くのクリエイターと提携し、コンペティションへの参加をTikTokユーザーに呼びかけたという。なお、参加したクリエイターは、チェルシー・ヒル、ブリタニー・ランカスター、ザヤ・ソーショ、ヴィエナ・スカイなどだ。クリエイター・パートナーたちは、候補である6色すべてのパーカーを受け取り、各々が考えたコーディネートでそれらを披露した。
「TikTokを使ってプロダクトデザインを『クラウドソーシング』するのは、我々にとって初の試みだ」とアルデリート氏。「まずは、我々の象徴であるパーカーからはじめるべきだと考えた。我々が実施した、TikTokとの提携や独自の投票ツールの活用といった施策は、投票型キャンペーンのイノベーションといっても良い」。
TikTokを活用したマーケティング支援を専門とする、ザ・インフルエンサー・マーケティング・ファクトリー(The Influencer Marketing Factory)の共同創業者でCEOのアレッサンドロ・ボグリアーリ氏によると、ペイドキャンペーンに顧客を巻き込むことは、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を通じてドミノ効果を生み出すのに効果的な方法だという。これには、ブランドの製品を紹介したコンテンツの再投稿や、リミックスされたコンテンツも含まれる。
「Z世代の多くは、何を買うべきか指示されたくないと考えている。よって、特にTikTokでは『製品をコールドセル(商品に対して興味を示していない消費者に突然売り込みを行うこと)』するのは控えた方が良い」とボグリアーリ氏。「しかし、インフルエンサーが作る面白おかしく、楽しく、あるいは有益な動画のなかに、製品を自然な状態で埋め込むことができれば、その動画がシェアされる可能性が高くなる」。
ボグリアーリ氏によると、若い消費者がソーシャルメディアを通じて、特定のプロダクトに関するフィードバックを瞬時に提供できることを、ブランド側も認識しつつあるという。「クリエイティブな意見を集めることができると同時に、高価で時間のかかるフォーカスグループインタビューやリサーチを行う必要がなくなる」。
アルデリート氏によると、将来的にGAPは、この種のソーシャルメディア主導の限定プロダクトリリースを、マーケティング戦略の重要な部分に据えるつもりだという。「我々は、TikTokが持つダイナミズムを利用して、我々のコミュニティを、顧客の個人的なスタイルの選択に関与させようと考えている」。
[原文:Gap is crowdsourcing its next hoodie re-release via a TikTok competition]
GABRIELA BARKHO(翻訳:塚本 紺、編集:村上莞)
Image via Gap