筋金入りのゲーマーがゲーミングおよびeスポーツ企業の指導的地位につく割合は近年減少しているが、正真正銘のゲーマーはいまも業界のあらゆるレベルに存在しゲームを楽しんでいる。米DIGIDAYはこのたび、ゲーミング/eスポーツ業界の主な幹部/インフルエンサー14人に取材し、ゲームにおける自分史上最悪のボスを訊ねた。
メディア、エンターテインメント、スポーツ分野から幹部の流入が続くなか、純粋な、筋金入りのゲーマーがゲーミングおよびeスポーツ企業の指導的地位につく割合は、近年減少している。インフルエンサーのゲーム離れも起きており、ルートヴィヒ・アーグレン氏といった人気ストリーマーもいまや、ミスター・ビースト流のコンテンツ制作を好み、オーディエンスの前でシンプルにプレイすることは、少なくなっている。
ただそれでも、ゲーミングおよびeスポーツコミュニティの核をなすゲーマー、正真正銘のゲーマーはいまも、業界のあらゆるレベルに存在している。ゲーミングおよびeスポーツマーケティングにおいて鍵を握るのはオーセンティシティであり、生粋のゲーマーは同コミュニティを誰よりも深く理解している。
2022年の『エルデンリング(Elden Ring)』の成功に明らかなとおり、挑みがいのある、物語を基本とするゲームは相変わらず、多くのコアゲーマーの理想的存在だ。DIGIDAYはこのたび、ゲーミング/eスポーツ業界の主な幹部/インフルエンサー14人に取材し、コンピュータゲームにおける自分史上最悪のボス――とその理由――を訊ねた。
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以下がその回答だ。
アクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)のグローバルビジネスリサーチおよびマーケティング部門VP(で著者)、ジョナサン・ストリングフィールド氏
「なぞなぞ:極狭の部屋に、君を一瞬でぺちゃんこにできるほど巨大な虫と閉じ込められたイベントを何と言う?」
「答え:ヘルスポーション(体力回復アイテム)がぶ飲み大会。実際、それが『ディアブロIIリザレクテッド(Diablo 2 Resurrected)』の登場とともに再び襲いかかってきた強大なボス、デュリエル(Duriel)に対抗できる唯一の作戦だった。デュリエルはいまのところ、このゲームのもっとも厄介な部分をひとりで担っているわけで、まさに『ロード・オブ・ペイン(苦痛の王)』と呼ぶにふさわしい。僕に言わせれば、ディアブロ(ディアブロシリーズの主要なボスキャラクターの1人)とさしで勝負するほうが、まだまし」。
eスポーツ企業バージョン1(Version1)のCMO、アニー・スコット・ライリー氏
「『エルデンリング』の満月の女王、レナラには、いまも腹が立って仕方がない。第1ステージ、彼女にダメージを与えられる場に行くにはまず、床に這いつくばる、時に空中浮遊もする、本を投げつけてくる敵の軍団を倒さないとならない。ただ、これはそれほど難しくはなくて、攻撃の前に必ずシャンデリアが落ちてくる、というパターンさえわかれば、対応できる――それだけですでに、十二分に混沌だ。続く第2ステージ、テレポートされる戦いの場は、月が煌々と輝く魔宮。そこは、集中力を大いに削がれるほど幻想的であり、彼女の呪いは圧倒的――ほかのボスたちの影を呼び寄せ、そいつらを次々に襲いかからせてくる」。
「正直、ひとりではまったく歯が立たなかったんだが、見知らぬ誰かが女王の気を引いてくれたおかげで、ようやくやつを引きずり出せた。でもあいにく、そう思った矢先、最後の魔術にやられた。彼女が放ったルーンを吸い込み、死んだのだ――第2ステージの魔宮で。あそこにはもう、二度とたどり着けない。いや、勝つには勝った。でも、持っていったものはすべて失った、それと手に入れたはずのものもすべて。文字どおり、あれは悪夢の源。開発者の宮崎氏は最高の狂人だ」。
Twitchストリーマー/ユーチューバー、Hannahxxrose氏
「私史上最悪のラスボスは間違いなく、『マインクラフト(Minecraft)』のエンダードラゴン。超手強いし、戦利品を失うリスクも大きい。スピードランに挑んでいるときは特にそうで、もう8年もあのゲームをやってるのに、倒せたのはたったの1回――しかも友人何人かの助けを借りて……」。
ファンジョイ(Fanjoy)のタレント部門VP、ジョシュ・グロドヴザ氏(通称:カル)
「僕にとっては、『テラリア(Terraria)』のウォールオブフレッシュ。想像してみて欲しい、いくつもの血走った目玉の付いた、それもでっかい口を開け、尖った歯をむき出しにした、文字どおりの肉の壁(wall of flesh)。そいつが地下で産まれ、ゲームのマップの果てまで追いかけてくる、逃げられる場所がなくなるまで、執拗に。これはまさに、人生そのものだと思う。窮地に追い込まれ、陥ったその場でどうにか対処するしかない状況を表す比喩だ。
「しかもやつは、ハードコア(Hardcore)に行く前のラスボスであり、その先にはさらに困難な壁が待ち受けている。それは、大人になることと同じだと、僕には思える。たとえば、いま現在、僕はいくつか最大の困難に立ち向かうことができる。でもそれは、この先もうそういうものが来ない、という意味じゃない。だからそういう困難を日々受け入れ、そのつど対処していくしかないんだと」。
コール・オブ・デューティリーグ(Call of Duty League)のチーム、ミネソタ・ロッカー(Minnesota Røkkr)ヘッドコーチ、ブライアン・バロスカ氏(通称:セイント)
「僕の対戦史上最強のひとりは、最新の『ゴッド・オブ・ウォー(God of War)』に出てくる裏ボス、シグルーンだ。あのヴァルキュリアの女王には本当に手こずらされた。100回以上死んで、結局ハードからイージーにモードを下げるしかなかった」。
Twitchストリーマー/Evil Geniuses(イーヴル・ジーニアシズ)のメンバー、ARUUU(アルー)氏
「私史上最悪のボスは、『ファイナルファンタジーX(Final Fantasy X)』のユウナレスカ。子どもの頃にあのゲームをやったからなのか、それとも本当に強敵だったからなのか今となってははわからないが。『お願いだからやっつけて』と兄に泣いて頼んだのを覚えてる、もう何日も負け続けて、どうしようもなかったから。とにかく、彼女が強敵なのは確かだし、あの時は絶対に倒せない気がした。実際、兄も相当手こずって、かなり苛ついて熱くなっていた」。
アストレイルズ(Astralis)の北米部門ディレクター、マーク・フラッド氏
「『エルデンリング』のボス、文字どおり全員。誰一人、僕は倒したことがないから」。
(追伸)「『エルデンリング』F(敬意を示す意味のネットスラング)」。
eスポーツ・アワード(Esports Awards)のCEO、マイケル・アシュフォード氏
「僕にとっては、『ポケットモンスター金・銀』のアカネのミルタンク。子どもの頃に見た悪夢がいまだに蘇ってくる。僕の明らかに準備不足のチームが『ころがる』で何度もやられ続け、刻一刻と死に近づいていくさまから、いくつか貴重な人生訓を学ばせてもらった」(編注:ちなみに、本記事担当記者であるAlexander Leeが思う史上最強のボスもこれだ)。
ワシントン・ポスト(Washington Post)のゲーム担当記者、ジーン・パーク氏
「『Sekiro』のラスボス、剣聖 葦名一心。彼を倒そうと、ほぼ一週間丸々費やし、精も根も尽き果てた結果、僕はあえてひねくれた態度を取るに至った。つまり、彼が私を殺すために待ち構えているのがわかりきっている以上、『Sekiro』をやりたいとは思わない。彼との死闘に必要とされる、完璧なタイミングがどうしても掴めなかった。あんな戦いは、二度とごめんだ。正直、あれ以来、『Sekiro』は一度しかプレイしていない」。
ペプシコ(PepsiCo)のeスポーツ/ゲーミング部門トップ、ポール・マスカリ氏
「個人的に、史上最悪のボスは『フェイブル(Fable)』のブレードジャック。あのボスとの戦いではいつも、第2ステージで苦戦を強いられた。何時間もかけて、ようやく倒せたときの嬉しさよ!」。
NRGのインテグレーテッドソリューション部門VP、コーリー・ヴィンセント氏
「私にとって、『パンチアウト!!』は幼いころの『ダークソウル(エルデンリングのような高難易度ゲームのはしり)』と言える存在だった。子どものころはもちろんのこと、この先いくつになっても、やつを倒せるだけのスキルも反応も、手に入れるのは絶対に無理だと思う」。
ライバリー(Rivalry)のCEO/共同創業者、スティーブン・ソルズ氏
「『ワールド・オブ・ウォークラフト(World of Warcraft、以下WoW)』のバニラ版(DLCやMODが適用されていないオリジナル版)は、間違いなくオニクシアがそうだった。あれはWoWがローンチされて1年目で、クリアできたギルドはサーバーの中で1つか2つだけだった。当時のサーバ環境において、あれは最悪だったと言わせてもらう。何をするにも40人を集めて襲撃するのは本当に面倒だったし、失敗したら立て直しに1週間はかかったわけだから。誰もがドロップを欲しがる一方、自分のキャラクターで勝てるのかすらよくわからず、そもそも苦労して倒したとして自分が使用しているクラスのアイテムがドロップされるのかという不安もあった。一言で表すなら、ストレス祭だった!」。
Twitchストリーマー(および2Kネクストメイカーズ[2K NextMakers]のメンター)、ミツ氏
「『ハーフライフ(Half-Life)』のニヒランスだね。貫禄に充ち満ちた、倒しがい満点のラスボスだった。危険な別の部屋にテレポートさせたり、宙を漂う強力な敵を呼び寄せたり、弱点が極めて攻撃しにくかったり――そもそも攻略が困難で知られる異世界ステージをくぐり抜けた後に現れる、これ以上ないほどふさわしいラスボスだ」。
Evil Geniusesのオペレーションおよびスタジオ部門VP、ジョン・ジョン氏
「『ウィッチャーⅢ(Witcher 3)』に登場するすべてのボスが、怖くて仕方がなかった。夜のプレイは、絶対に無理だった」。
ストリームエレメンツ(StreamElements)のCEO/共同創業者、ギル・ハーシュ氏
「『ホライゾン・フォビドゥン・ウェスト(Horizon Forbidden West)』の訓練場でのコンボをすべて攻略した後に出てくる不死王は、ボスとの壮大な戦いとはどういうものなのか、僕に思い出させてくれた。敗北の無限ループ、漸進的進歩、ぬか喜び、挫折、一からやり直し……。あの最後の一発を食らわせるまで、興奮と消耗の連続だった」。
フナティック(Fnatic)のマーケティング部門トップ、ジョシュア・ブリル氏
「率直に言うと、『クラッシュ・バンディクー(Crash Bandicoot)』のドクター・ネオ・コルテックスとの最終決戦の場は、今にして思えば、難攻不落というわけじゃなかった――ブードゥーの聖霊的仮面アクアクとウカウカの攻撃をひらりひらりと避けて回り、最後の最後、ドクター・ネオ・コルテックスをきりもみしながら落とした――けれど、10歳だった僕を必死にさせたラスボスとして、やつはいまも脳裏にこびりついて離れない。最終決戦の場で流れていたヘヴィメタル風な音楽は、不朽の一曲として、僕の記憶に永遠に残るに違いない!」。
[原文:Gaming and esports influencers and executives dish on their most dreaded video game bosses]
Alexander Lee(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)