Netflix(ネットフリックス)で、ファイア・フェスティバル(Fyre Festival)に関するドキュメンタリーが公開された。これにより、自社のインフルエンサーマーケティング投資に関するマーケターからの確認が、インフルエンサーエージェンシーに対して増えているという。
Netflix(ネットフリックス)とHulu(フールー)で、ファイア・フェスティバル(Fyre Festival)に関するドキュメンタリー「FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー」が公開された。これにより、自社のインフルエンサーマーケティング投資に関するマーケターからの確認が、インフルエンサーエージェンシーに対して増えているという。
インフルエンサーマーケティングエージェンシー、コレクティブリー(Collectively)の共同創業者であるアレクサ・トーナー氏は、同社のクライアントは「あの大惨事(ファイア・フェスティバル)が、どんなに酷い出来事として取り上げられていたかを話したいだけ」だと語る。クライアントたちの意見は、インフルエンサーマーケティングは非常に強力だが、実際の商品が確実なものでなかったり、炎上したりすると、すぐにぶち壊しになってしまうということが全体としてはっきりした、というところで一致しているという。
「(2017年4月に開催が予定された)ファイア・フェスティバルはものすごい誇大広告と熱気を煽り、インフルエンサーを派手に利用して、非常に高価なフェスティバルのチケットを完売させた。しかし、実際はあまりにずさんな運営により、開催は頓挫し、主催者は詐欺で実刑判決を受けている」と、トーナー氏は話す。「消費者との約束を果たせる賢明なブランドなら、こうしたアプローチには注意すべきだ」。
Advertisement
ファイア・フェスティバルはある意味で、何百人もの人たちをひとつの島に惹きつけ、彼らに代金を払わせることには「成功」しており、インフルエンサーマーケティングに効果があることを証明している。
「あの事件が興味深いのは、インフルエンサーは彼らがやるべき仕事を普通にやっていたというところだ。チケットがあれだけのスピードで完売したのは、彼らにパワーがある証しだと思う」と語るのは、インフルエンサーエージェンシー、フォー(Fohr)のCEOであるジェイムズ・ノード氏だ。「あれ以来インフルエンサーたちも、どんな相手と組むのか慎重になっているし、危険な製品や、テストされていない製品、それ以外でも詐欺的な製品などを無理に押し付けているような企業に協力して、騒ぎに巻き込まれないよう気をつけている。インフルエンサーコミュニティのなかには、自分たちの投稿は現実世界に影響を及ぼすものだし、インフルエンサーとしてのブランド価値を広告主に使わせる場合には、相手の企業が問題を抱えていないかしっかり調査すべきだ、という意識が新たに生まれている」。
浮き彫りになった点
一連の騒動で浮き彫りになった点のひとつが、インフルエンサーにもいろいろな種類があるということだった。まず、モデルや女優でフォロワー数も多い、セレブリティ枠のインフルエンサーがいる。それ以外は、インフルエンサーマーケティングエージェンシー、サンデー(Sundae)のCEO、ジェレマイア・ローゼン氏の言葉を借りれば、「コンテンポラリー・インフルエンサー(contemporary influencers:イマドキのインフルエンサー)」だ。彼らはフォロワー数を増やし、オーディエンスを生み出すためのアルゴリズムをうまく操っている。
ファイア・フェスティバルは、ベラ・ハディッドやエミリー・ラタコウスキーといったモデルたちを何人か使って、いわゆる「プロモーションビデオ」を作っていた。しかし、バズを引き起こすきっかけとなったのは、彼女たちモデルがインスタグラム(Instagram)に投稿した撮影舞台裏の様子であり、プロモーションビデオ公開後の数週間にわたってソーシャルメディアに撒き散らされた、悪名高き「オレンジ色の正方形(フェスのロゴ)」だった。
「あの件からは、ヨットにモデルを8人乗せれば多くのことが成し遂げられる、ということをひとつ学んだ」とローゼン氏はいう。そして、クライアントからは、自分のところのプロジェクトには適材適所なインフルエンサーが配置されているのか、という問い合わせが増えるだろう、と語った。
「どんなインフルエンサーを雇って、彼らをどのように配置するのかは、我々にかかっている」と、ローゼン氏はいう。「我々はその責任を一層しっかりと果たし、このプログラムを知ってもらうのには、こういった種類のインフルエンサーと組む必要がある、ということをクライアントが理解できるように手助けしなければならない。単に有名人を使えばいいというものではない」。
詐欺行為に厳しい目
いずれにしても、インフルエンサーマーケティングはここのところ厳しい目に晒されている。昨年のカンヌライオンズでは、当時、ユニリーバ(Unilever)最高マーケティング責任者を務めていたキース・ウィード氏が、インフルエンサー詐欺を根絶する時が来たと宣言。この発言にはほかのトップマーケターたちも賛同し、予算の使い方を変え、インフルエンサーにかけていた費用を、たとえば従業員などに充ててはどうかという声も一部からはあがっている。
サンデーのローゼン氏によれば、今回のドキュメンタリーのおかげで、eコマースやスタートアップのクライアント、なかでもベンチャーキャピタルから支援を受けている企業から同社への注目が高まっているという。
「そうしたブランドの多くは、インフルエンサーに乗っかることを、ブランド構築の近道として求めがちだ」と、同氏はいう。「我々としては、そうした企業の成長が早すぎないか、製品はその成長に見合ったしっかりしたものなのかを確かめることが重要になってくる。ファイア・フェスティバルの件があってから、我々もVCやスタートアップのカルチャーについて真剣に議論するようになった」。
慎重になるマーケター
インフルエンサーエージェンシー、オブビアスリー(Obviously)CEOのメイ・カーワウスキー氏は、インフルエンサーマーケティング業界はすでに成熟していると考えている。ブランド側からも、インフルエンサーの身元照会から、より良い契約審査プロセスまで、あらゆる点で問い合わせが増えているという。契約には、何を投稿するか、いつ投稿するか、どんなハッシュタグを使うか、といった内容が細かく盛り込まれている。
「ファイア・フェスティバルの場合は、ここまでの適正評価は行われていなかった」と、カーワウスキー氏はいう。「あのオレンジ色の正方形をひとつ投稿するのに、ケンダル・ジェンナーには20万ドル(約2170万円)が支払われたというが、いまならそんなことはありえない。ブランド側からは、自分たちが組むインフルエンサーについて、彼らが以前どんなブランドと仕事をしていて、どんなコンテンツを生み出しているのかについて、事細かく確認されることが増えている」。
Shareen Pathak (原文 / 訳:ガリレオ)