「力強い」女性アスリートを起用する、美容ブランドたち:MMAファイターから金メダリストまで

力強い女性アスリートと契約をするブランドはナイキ(Nike)やアディダス(Adidas)だけではなくなった。いまや、ビューティブランドたちもその流れに賛同している。

5月後半、エスティーローダー(Estée Lauder)は、中国をターゲットにしたキャンペーンにMMA(総合格闘技)のチャンピオンであるジャン・ウェイリー氏を起用した。それと同時に、オリンピック金メダリストであるシモーネ・バイルズ氏は、SK-IIのグローバルキャンペーンに続いて、ヴォーグ(Vogue)の表紙を飾った。

中国人女性初のグローバルUFCチャンピオンであるウェイリー氏。エスティーローダーは、彼女が動画のなかで、トレーニング中にダブルウェア(Double Wear)ファンデーションを使用するという形で起用した。動画のなかでウェイリー氏は「リングに上がったときも綺麗。リングを降りるときも綺麗(When I step in the ring, it looks pretty, and it still looks pretty when I step out of the ring.)」と述べる。エスティーローダーが中国のアスリートを起用したのはこれがはじめてだ。

また、ビューティーブランドによる、MMAのプレイヤーのグローバル起用もこれまで数回しかなかった。ウェイリー氏の前、最後にビューティー関係の大手スポンサーシップ契約を結んだ女性MMAアスリートはロンダ・ラウジー氏だった。彼女は2016年にパンテーン(Pantene)のブランド大使に任命された。そのときの広告キャンペーンのタグラインは「私が強いからって、嫌いになるなよ(Don’t Hate Me Because I’m Strong)」だった。そのなかでラウジー氏は、社会が抱える偏狭な「美しさ」の基準に対して反対を声明している。

力強く、健康的な女性像が人気

「ウェイリー氏は、中国女性が憧れる、型破りな美意識と力強さを表現している」と、エスティーローダー中国のマーケティングディレクターであるライアン・リー氏は、米DIGIDAYの姉妹メディアである、グロッシー(Glossy)のメール取材に回答した。「中国初のUFCチャンピオンという、ウェイリー氏の輝かしい成功とキャリアは、通常であれば男性のものと考えられている分野で勝ち上がったという意味で、彼女の忍耐力とハードワークを示している。多くの中国人女性たちにとって、彼女は地元のアイコンだ。今回パートナーシップを結ぶことができて、とても誇らしく思っている」。

また、マーケティングエージェンシーのブレイブ(Brave)のメディアプランナー、ソフィー・ラッセル氏は「過去においては、女性が男性的なルックスを持つことは美の理想だとは考えられなかった。そのため、ブランドたちはこうした女性を広告に起用するリスクを、取ろうとしなかった」と語る。「力強く、健康的な見た目が人気を集める傾向にあるいま、ブランドたちはそういったルックスを持つ人物の起用に乗り気になっている。多くのビューティ系ブランドたちが、この戦略で実際に成功を納めているなかではなおさらだ」。

これまでは、力強い女性のアスリートたちが大手スポンサーシップ契約を勝ち取るためには、世界チャンピオンになる、もしくは金メダルを獲得する、オリンピックのようなメジャーなスポーツ大会出場が確実となる、とトップレベルでの偉業を達成する必要があった。

有毒な文化の終わり

また、延期されたオリンピックのスポンサーシップに関連して、2月から「#nocompetition」キャンペーンを開始したSK-IIは、「美しさはいつから競技になったのか(When did beauty become a competition?)」というキャッチフレーズとともに、オリンピックの女性選手を起用した。このキャンペーンのために、バイルズ氏は彼女の身体への批判を引き起こす、偏狭な美しさのスタンダードを、インスタグラムで批判した。

「今日私は、美しさの基準を競い合うこと、他人が自分の期待に応えられていないと感じたときにその人を傷つける、こうした有毒な文化の終わりを宣言する」と彼女は述べた。なお、バイルズ氏はヴォーグの8月号のカバーも飾っている。そこではSK-IIのキャンペーンのプロモーションイベントに参加することについて、彼女が語る記事が掲載されている。

あああ

バイルズ氏のインスタグラム投稿

   

しかし批判されている美のスタンダードは、そもそもビューティ業界が促してきたものでもある。「美しさや体型は、時代を超えて常に『理想化』されてきた。こういった文化面のトレンドを、ビューティブランドたちは反映すると同時に煽ってもきた。たとえば、90年代にプロダクト販促のためにケイト・モスや、ほかの極めて痩せたモデルを起用したのが一例だ」とラッセル氏はいう。

女性消費者たちは、こういった偏狭な美の考え方に反発をしてきた。同氏によると、「痩せることではなく、強いこと」を求めるトレンドは、ソーシャルメディアでアクティブな若い世代のあいだで人気であり、「女性スポーツ観戦に対する興味も、若い世代に傾いている」とのことだ。女子ワールドカップのオーディエンスの半分以上が、16歳から34歳の若年層だった。

美の多様性を重視

「ビューティプロダクトは、今日のボディポジティビティ運動(すべての人間が、自身の身体についてポジティブなイメージを持つべきという信念に根ざした社会運動)に逆らっているように思えるかもしれない。若い世代は、ブランドからどのような見た目になるべきか、どのような見た目であれば幸せになれるかを、指図されたくないのだ」と同氏は述べる

「ブランドとして、我々は美の多様性を重要視している。美しさは見た目だけでなく、彼女らの内面を通して表現される。彼女たちが何を達成したいと考えているかに我々はフォーカスしたい。ジャン・ウェイリー氏のような人物と共に取り組むことで、この信念はさらに強化されている」とリー氏は語った。

[原文:From MMA fighters to gold medalists, beauty embraces strong female athletes]

LIZ FLORA(翻訳:塚本 紺、編集:Kan Murakami)