サステナブル衣料ブランドのアウターノウン(Outerknown)は、全米に新店舗をオープンするのに伴い、小売店舗のルールを塗り替えようとしている。
長年クリエイティブディレクターを務めてきたジョン・ムーア氏と、プロサーファーのケリー・スレーター氏が2015年に設立した同ブランドは現在、ボストンに1店舗、ニューヨークに1店舗、カリフォルニアに2店舗(マリブとエル・セグンド)の合計4店舗を構えている。2024年春にはカリフォルニアにさらに3店舗(マリン、カールスバッド、パロアルト)、ワシントンD.C.に1店舗(ジョージタウン)を開設し、その数を倍増させる予定だ。
アウターノウンはeコマースビジネスとして事業を開始し、その後クイックシルバー(Quicksilver)やビラボン(Billabong)などのサーフィンショップやアパレル企業と卸売契約を締結してきた。これら2つのチャネルでの事業は続けるものの、現在は実店舗小売、そして、これまでとは異なる方法で店舗を活用することに関心を抱いている。以前の店舗は大規模で従来型のものだったが、新しい店舗はより小型で、厳選した商品、現地コミュニティとのつながり、そしてサステナビリティを念頭に置いてデザインされる。続きを読む
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
サステナブル衣料ブランドのアウターノウン(Outerknown)は、全米に新店舗をオープンするのに伴い、小売店舗のルールを塗り替えようとしている。
長年クリエイティブディレクターを務めてきたジョン・ムーア氏と、プロサーファーのケリー・スレーター氏が2015年に設立した同ブランドは現在、ボストンに1店舗、ニューヨークに1店舗、カリフォルニアに2店舗(マリブとエル・セグンド)の合計4店舗を構えている。2024年春にはカリフォルニアにさらに3店舗(マリン、カールスバッド、パロアルト)、ワシントンD.C.に1店舗(ジョージタウン)を開設し、その数を倍増させる予定だ。
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アウターノウンはeコマースビジネスとして事業を開始し、その後クイックシルバー(Quicksilver)やビラボン(Billabong)などのサーフィンショップやアパレル企業と卸売契約を締結してきた。これら2つのチャネルでの事業は続けるものの、現在は実店舗小売、そして、これまでとは異なる方法で店舗を活用することに関心を抱いている。以前の店舗は大規模で従来型のものだったが、新しい店舗はより小型で、厳選した商品、現地コミュニティとのつながり、そしてサステナビリティを念頭に置いてデザインされる。
ブランドのコンセプトと合致した店舗づくり
アウターノウンは2019年に最初の直営店をカリフォルニアのエル・セグンドに開設した。この店舗の面積は3000平方フィート(約279平方メートル)ほどで、「いろいろなものを少しずつ扱ったものだった」と、ブランドの最高クリエイティブ責任者のムーア氏は米モダンリテールに語った。「それまで衣料品で行っていたことを強く反映しようとはしなかった」。
アウターノウンは昨年再編成され、デザイン代理店のスターチクリエイティブ(Starch Creative)と共同で、市場調査を行うためにニューヨーク、マサチューセッツ、バーモントに出向いたと、スターチクリエイティブのCEOを務めるブランドン・ボール氏は米モダンリテールに語った。スターチクリエイティブはその時点で、アウターノウンとほかの店舗に関して仕事をしたことがあり、「そのときに、『よし、これから小売の規模拡大について協力するので、どのような店舗にするのかを意識しなければならない』というステージに入った」と同氏は述べている。
帰りの飛行機のなかで、すべてがうまくまとまったと、ボール氏は述べる。両社は今後の店舗についての戦略に結論を出した。より面積が小さく、マーチャンダイズの品揃えをさらに細かく調整して、什器や床材、そのほかの部分も再生材料や廃材を利用したものにするいうものだった。
「店舗での体験を、我々の生産する衣服と同じようにサステナブルするために、変わろうと努力した。企業のフラグシップになる、大型できらびやかな店舗を開設しようとしていたわけではない。我々が作り上げようとしているのは、居心地のいい小規模な店で、我々が参入しようとするコミュニティの文化に浸った近所の店舗だ」と、ムーア氏は述べている。
現地とのつながりとなる要素を取り入れる
アウターノウンの新店舗はすべて、ブランケットシャツ(Blanket Shirt)やエスイーエー(Social and Environmental Accountability、S.E.A.)ジーンズのようなヒーロー商品を重視しているなど、共通の要素がある。店舗の75%はほかの店舗と同じような雰囲気にして、25%は周囲の地域に合わせてローカライズすることを目標にしている。たとえば現在、アウターノウンの東海岸の店舗では温暖な気候向けの衣服を、西海岸の店舗ではトランクスとTシャツを多く取り扱っている。
現地とのコラボレーションも、店舗の戦略を進めるための重要な部分だと、ムーア氏は語る。たとえばマリンの店舗には、サンフランシスコ生まれのアーティスト、デイブ・ミュラー氏による、幅20フィート(約6.1メートル)の流木を再利用した作品が展示される。既存のマリブ店舗については、ロサンゼルス郡のビーチを撮影している写真家のスティーブン・リップマン氏と協力してきた。
小売コンサルタンシーのレコンリテール(Rekon Retail)の創設者であるレベッカ・コンドラット氏は、今日では、店舗を開設するとき、壁画などのアートによって、現地とのつながりとなる要素を取り入れるブランドが増えてきていると、米モダンリテールに語った。「ローカルブランドでなくても、企業からコミュニティに対して、『それでも我々は気にかけている。そして、あなたたち消費者のことを十分に調べ、あなたたちだけのために特別なものをここに置く』というメッセージを送ることが重要だ」。
アウターノウンは今年、新しい小売の構想に合わせてソーホーの店舗を改装した。この店舗は3カ月間営業を停止し、デニムの端切れで作った什器を据え付け、そこにS.E.A.ジーンズを吊るした。このジーンズは耐久性が高いため、アウターノウンが「永久保証」としている商品だ。また、古い納屋から手に入れて削りなおした木のフローリングを追加し、環境科学者のイーサン・エステス氏が回収した海洋ロープを使用して作った60フィート(約18.3メートル)の波形のインスタレーションにブランケットシャツを吊るした。4つの新店舗は、今月初めにリニューアルオープンしたソーホーの拠点にも加えられた変更の多くを取り入れることになる。
ニッチで特化した市場への参入
アウターノウンが4つの新店舗の場所を決めたのは、顧客がそれらの都市で過ごしているからだと、ムーア氏は語る。「常に、当社の価値や、自然との深いつながりを共有する人が数多く存在していると感じられるようなコミュニティや地域を探し求めている」と、同氏は述べる。ボール氏によると、この方針をとるクライアントが増えているという。「小売業者はこれまで、主要な都市に店舗を出すことを重視してきた。今では、この方針から離れる方法が数多くみられるようになってきた」と、同氏は述べている。
多くのブランドは、ロサンゼルスやニューヨーク市のような、もっとも人口が多い都市で最大の売上を獲得しているのはたしかだと、コンドラット氏は指摘する。しかし、「いくつかのブランドにとっては事情が異なる」と、同氏は語る。「このようなブランドは、よりニッチで特化した市場に参入することで利益を得られる。自社の顧客はどのような人々なのかということと、どのような人々に顧客となってほしいかということのあいだに相違がある場合ということは、ブランドが行き詰まる可能性がある部分だと思う」と、同氏は述べている。
アウターノウンはデンバーやオースティンのような都市への展開も検討しているが、もっとも重要な点として「ゆっくり慎重に進め、確実に展開したい」と、ムーア氏は語る。
「急ぐつもりはない。小売は盛り上がっており、状況は好都合だ。そのため、ほかの良い市場に目を向けていっている」と同氏は述べている。
[原文:From flooring to square feet, Outerknown is revamping its retail store playbook]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Outerknown