HTC「Vive(ヴァイブ)」や「Oculus Rift(オキュラスリフト)」など消費者向けのデバイスが発売され、2016年はVR(バーチャルリアリティ)元年として期待されている。いまや、その影響力は宗教世界にまで波及しているようだ。それがどこまで大きくなるのか計り知れないが、現時点でマーケターがVRについて理解しておくべきポイントを以下にまとめた。
HTC「Vive(ヴァイブ)」や「Oculus Rift(オキュラスリフト)」など消費者向けのデバイスが発売され、2016年はVR(バーチャルリアリティ)元年として期待されている。いまや、その影響力は宗教世界にまで波及しているようだ。それがどこまで大きくなるのか計り知れないが、現時点でマーケターがVRについて理解しておくべきポイントを以下にまとめた。
1. 目新しさは薄れつつある
GoogleのVRパートナシップ責任者であるアーロン・ルーバー氏によると、「VR」の検索数は5月に至るまでの12カ月間で4倍にまで膨れ上がったという。360度ビデオが特にトラフィックの波を受けているようだ。ゲーム「クラッシュ・オブ・クラン」のデモ動画は4400万回の再生回数を誇り、YouTube上でもっとも再生されている360度ビデオとなっている。
手に汗握るレーシングカー体験だったり、恐怖の独房体験であったりと、VR初期にコンテンツを体験した人々はその衝撃を克明に覚えているようだ。しかし、VR技術が普及していくにつれて、目新しさは薄れてきている。
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ロンドンを拠点にするVRスタジオ・ビジュアライズ(Visualise)のCEO、ヘンリー・スチュワート氏は、VRというだけではオーディエンスは満足しないレベルにまで達しているという。「2年前であれば、VR映像を作って見られるようにすれば、それでPRになった。しかし、いまでは、人々はただヘッドセットを付けて映像を見るだけでは驚いてはくれない。映像にどんな価値があるか、知りたいと思うようになった」。
2.「VR酔い」現象も薄れつつある
初期のプロトタイプがリリースされたとき、ユーザーのなかには気分が悪くなる「VR酔い」を訴える人がいた。それはヘッドセットを長く装着すればするほど悪化する症状であった。最新のモデルでは、その点も改善されてきている。
そう語るのはユニティテクノロジーズ(Unity Technologies)の営業ディレクター、アンドリュー・ブラモール氏だ。ユニティテクノロジーズが提供するサービスは、簡単にいえばVRゲームデザイナーが活用できるゲーム開発システムである。約9割のVRゲームコンテンツに対して利用可能だという(なお、Googleの初期のカードボード・ヘッドセットを使用してスマートフォンでVRビデオを観る場合は例外だ)。
ほとんどの制作スタジオが、ジャイロ安定台によって安定されたカメラを使用し、「酔い」を生み出す映像を避けるために最適なフレームレートを選んでいる。「(VRコンテンツ視聴が)快適であること。それが達成されないうちはプロジェクトは進行されるべきではない」と、スチュワート氏は述べた。
3. 値段は今後下がっていくだろう
現時点では、ハイスペックなVRヘッドセットの価格は600ドル(約6万円)ほどだ。しかし新しいハードウェアが開発されることで、没入型のビデオを制作するのは、どんどんと簡単に、安価になっていくだろう。
360度カメラもいまではどこでも手に入るようになった。Facebookのオープン・ソース・モデルから、たった60ドル(約6000円)しかしない中国製のキューブ型のものまで、さまざまだ。ABIリサーチによると、テック企業たちは2021年までに400万台の消費者向け製品を売ることが予想されている。
こういったトレンドはすでに観測されているようだ。YouTubeによると、6月までの3カ月間にアップロードされた360度ビデオの数を昨年の同時期と比較すると2倍になっている。「2008年にキヤノンEOS 5F Mark IIが結婚式ビデオの世界に変化をもたらしたのと同じような変革をもたらしている」と、スチュワート氏。
4. VRはゲーマーのためだけではない
コアなVRユーザーは、いまだにゲーマーであることは確かだが、その他一般の消費者たちも、ほかの用途でVRに興味をもちはじめている。グリーンライトVR(Greenlight VR)が実施した、1200人のアメリカの消費者を対象にした調査によると、VRの用途としてゲームに集まった興味は6位であった。旅行やホームデザインといったカテゴリーがさらに上位に入っている。回答者のうち67%がライブ・イベントでの利用に興味を示しているという。
同様に、エリクソン・コンシューマーラブ(Ericsson Consumerlab)の調査によると、人々はVRの用途として、オンラインショッピングをさらに便利にしたり、スマートフォン向けにVRの地図を作ったり、映画を見たりすることにも興味も持っていることが分かっている。
ディズニー(Disney)、コムキャスト(ComCast)、タイム・ワーナー(Time Warner)といった企業はVRスタートアップを支援している。VRコンテンツの最初の爆発的ヒットはおそらくゲームになるだろう、しかし映画といったエンターテイメントは長期的に活用の場を増やしていくだろうとキャンバス8(Canvas8)のインサイト部門の責任者であるサム・ショー氏は語った。
「究極的にはエンターテイメントデバイスになるだろう。エンターテイメント分野はいつも適応するのが早い。コミュニケーションはそうはいかない」。
Grace Caffyn(原文 / 訳:塚本 紺)
Photo from ThinkStock / Getty Images