コンシェルジュ機能からアドバイス機能まで、Facebookメッセンジャーでブランドやディベロッパーがこぞってボットを開発している。質問に回答するというシンプルなフォーマットでありながら、ブランドの活用法はそれぞれ実に異なっている。今回はブランドたちがどのようにチャットボットを活用しているか紹介する。
コンシェルジュ機能からトピックに合わせたアドバイス機能まで、Facebookメッセンジャーでブランドやディベロッパーがこぞってボットを開発している。質問に回答するというシンプルなフォーマットでありながら、ブランドの活用法はそれぞれ実に異なっている。今回はブランドたちがどのようにチャットボットを活用しているか紹介したい。
スターバックス/パンプキンスパイス・ラテ・キャラ
人間のように会話をするチャットボットを公開するブランドは多い。スターバックスはパンプキンスパイス・ラテのプロモーション用に、「The Real PSL(リアルなパンプキンスパイス・ラテ)」と名付けられたボットを開発し、秋の風物詩であるプロダクトを盛り上げるべく、イギリスで公開した。
キャラの特徴はその性格にある。アイコンはサングラスをかけたパンプキンスパイス・ラテのアバターとなっている。ユーザーが何か質問すると、The Real PSLが皮肉の効いた回答や、季節の訪れにまつわるセリフを返してくるというもの(たとえば、好きな本は何かと聞くと「ゴード(かぼちゃ)・オブ・ザ・リング」と返ってくる)。
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このチャットボットは一部の人には不評だった。回答が用意されてない質問を尋ねると、ネコのGif画像で話を反らしたり、関係ない話を繰り返すからだ(「良い質問だね! 同じくらい良い質問は、ボクがもしDJだったら、DJ名は何になるかって質問かな。何が良いと思う?」)。
✔️Every conceivable question you might ever ask. Ever.
✔️Faux pumpkin rug
✔️Ready to chat! https://t.co/zK6PJJqBp1 pic.twitter.com/VDoXYhVsBH— Pumpkin Spice Latte (@TheRealPSL) August 29, 2016
ユニバーサルやディズニーといった、ほかのブランドも同じ戦略で映画のプロモーションにチャットボットを活用している。キャラクターは、それぞれ『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のブラウン博士と『ズートピア』のジュディー・ホップスだった。
キャンバス8(Canvas8)のインサイト責任者であるサム・ショー氏は、「人々は想像上のキャラクターに対しては『探求』の態度をもつ。それはエンターテイメント業界で、ブランドを表現するための新しいチャンネルを試すうえで非常に向いている。ボットとのやり取りのすべてが実用的である必要はない」という。
ブリティッシュ航空/絵文字クイズ
多くの人がネット上でのクイズが好きだ。そこに目をつけたのが去年12月にローンチされたブリティッシュ航空の絵文字チャットボットだ。
ユーザーはボットが尋ねてくる理想の休日についての数々の質問に答えないといけない。その後、絵文字をひとつ選ぶ。するとその絵文字と回答に対応して、旅行先候補が返ってくるのだ。もちろん、オンライン上のセールに飛ぶリンク付きだ。国外のユーザーは、ロンドンの観光地について、アドバイスを受け取ることもできる。
「面白くて、驚ける、そんな要素がここにはある」と指摘するのは、クリエイティブコンサルタント会社のシニア・パートナーであるブレンダン・マーフィー氏。こういったボットはオーディエンスが予想できない回答が返ってくるため、効果的であると彼は考える。クイズの口調が機械的ではないのも良い。
ユニリーバ/歯みがき教育ビデオ
ユニリーバの歯磨き粉ブランドであるシグナル・ペプソデント(Signal Pepsodent)が、エージェンシーR/GAと制作したチャットボットは、子どもの寝る前の歯磨き習慣を助けるのが目的だ。親がセットした時間になると、子どもは21個あるビデオからひとつを選んで見ることができる。ビデオのエンディングは2分間の歯磨きをしないといけない、という「チャレンジ」で締めくくられる。ビデオの指示に従って歯磨きをできたら、子どもはバッジを贈られる。毎晩、通知が来るように設定できるという。
しかし、家庭での習慣について、オーディエンスと対話をすることには慎重になる必要がある。便利である一方で、口うるさいという印象を与えないようバランスを保たないといけないのだ。「ブランディングの性質は変わりつつある」と、マーフィー氏は指摘する。
ここでは、ブランドと顧客の関係はビジュアル中心からより会話中心になりつつあるなか、言葉遣いが非常に重要になってきている。マーフィー氏は「自然な話し方をするボットを作るうえで、わざと面白くからかうときと、思いやりをもって優しく話しかけるときと、使い分けについてちゃんと決めなければいけない」という。
ペルノ・リカール/コンテンツハブ
ペルノ・リカールはコンテンツ投資を重視している。300種ものカクテルに関するライブラリーが来年にはローンチする予定だ。コンテンツを重視しているのは彼らの「カクテルコーチ」というチャットボットからも明らかだ。カクテルコーチはペルノ・リカールのさまざまなドリンクをレシピガイドとして紹介してくれる。Facebookのユーザーは自宅でカクテルを作りたくなれば、カクテルコーチを使ってレシピを知ることができるのだ。必要あればeコマースサイトのオカド(Ocado)で、材料(アルコールも含む)の購入もできる。
「人間の直感が必要のない、実用的な役割を担ったチャットボットは成功しているようだ」と、ショー氏は言う。
eBay/eコマースプロモーション
eコーマスにチャットボットを活用するブランドもある。イーベイ(eBay)がそのひとつだ。イーベイのチャットボット「ショップボット」は徹底して実用的だ。ショップボットを使ってユーザーは、商品を見つけて購入できる。そのあいだ、メッセンジャーから離れることが無い。ショップボットがオススメしてくる商品を値段で並べて吟味することもできれば、もっとも人気のあるアイテムは何かを知ることもできる。ユーザーとのやり取りを通じて、ボットはそれ以降のオススメ商品の内容を調整してくれる。
たとえば、ハンドバッグを探しているユーザーがいたとしたら、ボットは色、値段、スタイルを尋ねてくる。ボットはまたユーザーの検索ワードも記憶している。これは、マーケットに溢れた「あなたはどっちを選ぶ?」式のボットのひとつ上のレベルを達成している。
Grace Caffyn(原文 / 訳:塚本 紺)