注目のヘルスケアアプリ「FiNC」。その躍進に寄与しているのがInstagramのストーリーズ広告だ。FiNC Technologies執行役員CCOの小出誠也氏と藤原逸聖氏、そしてフェイスブック ジャパンのClient Partner Managerの水谷晃毅氏に話を聞いた。
クリエイティブの定量的な検証、改善はネット広告活用の基本事項だが、これを徹底できているマーケターは、どれくらいいるのだろうか。
当初はブランディング向けとしてスタートした、Instagram(インスタグラム)のストーリーズ広告だが、昨年5月のダイレクトレスポンス(以下、DR)向けアップデート以降、アプリのインストールや会員獲得など、DRに高い効果が上がる事例が多数確認されている。
リリースから約1年半で、330万DLを突破したヘルスケアアプリ「FiNC(フィンク)」の躍進にも、Instagramのストーリーズ広告が大きく寄与している。FiNC Technologies社内における高速かつ細かな改善に加え、フェイスブック ジャパンからのノウハウ提供やInstagramに精通したクリエイティブチームとのアイデア出しミーティングを実施した結果、CTRやCVRが大きく改善され、新規会員の獲得に繋がったという。
「フェイスブックのメンバーとは、時間単位で密にやり取りしながら出稿をチューニングし、効果を高めてきた」。こう語るのは、FiNC Technologiesの執行役員CCO(Chief Creative Officer)を務める小出誠也氏だ。同氏の下で、デジタルマーケティング部副部長を務める藤原逸聖氏と、フェイスブックのClient Partner Managerとして両氏をサポートしてきた水谷晃毅氏に、FiNCアプリ成功の背景を聞いた。

左からフェイスブックの水谷氏、FiNC Technologiesの小出氏、藤原氏
NEXTユニコーンである理由
NEXTユニコーンとして注目を集めるヘルステックベンチャー、FiNC Technologies。2012年創業の同社は、累計100億円強の資金調達を実施し、オフラインのパーソナルジム運営や、法人向けサービスなど幅広い事業を展開。ヘルスケア領域におけるプラットフォームの構築を目指しているという。
そんな同社が提供するアプリ、「FiNC」のユーザーの多くは、健康管理やダイエットに関心のある20〜30代の女性だ。FiNCは、健康促進やダイエットのためのコンテンツ配信機能や、EC機能も備えており、ユーザーは日々の体重や食事などを記録できる。また、自分のタイムラインを公開することでユーザー同士のコミュニティに参加したり、有料会員になれば専門家からの個別のアドバイスなどを受けることも可能だ。
ヘルスケア関連のアプリは、過去にも登場している。欧米を含めても、ランニングやトレーニングといった、特定のアクティビティーに特化したソリューションアプリが多い。そんななか、「健康」という広範な切り口で、ユーザーの課題を解決し、プラットフォームとしてBtoB事業も展開している同社は、異色の存在といえる。クリエイティブとデジタルマーケティングの両方を統括する小出誠也氏は、「それこそが我々の強みであり、注目していただいている理由ではないかと捉えている」と語る。

「FiNC Technologiesは、ヘルスケア領域のプラットフォームを目指している」と語る小出氏
ストーリーズの魅力は気軽さ
「2017年にストーリーズ広告のリリース案内をしてからすぐに導入を決定するなど、彼らのスピード感には驚いた」と、フェイスブックの水谷晃毅氏は語る。「その翌日にはクリエイティブが入稿され、毎時間といっていいくらい数値確認と検証を繰り返す。それを可能にする連携が成果につながったのだと思う」。
FiNC Technologiesでは、クリエイティブ部門とデジタルマーケティング部門が密に連携しており、迅速にPDCAを回す体制がある。デジタルマーケティング部門で副部長を務める藤原逸聖氏は、「過去の知見も踏まえて、クリエイティブによる変数がもっとも大きいことに着目し、FacebookとInstagram、合計週に10本は新しいクリエイティブを生成。キャンペーンごとにあらかじめセットしたCTRやCVRの目標と随時照らし合わせ、クリエイティブの構成要素をいくつにも分解しながら分析していた。ストーリーズ広告も同様に、細かく数値を検証しながらクリエイティブの構成を見直してきた」と語る。
特にストーリーズ広告では「表現のバランスに特に留意していた」と小出氏。というのも、縦型動画でスマートフォンの画面を占有できるストーリーズ広告は、没入感がある反面、ブランドの世界観を際立たせると、ユーザーが自主的に閲覧しているオーガニックな投稿を妨げてしまうし、逆に馴染ませすぎると流し見されてしまうからだ。
「自分自身のユーザー体験からも、自動的に動画が再生され続けるストーリーズの気軽さは魅力的だと感じていた。加えて縦型動画は、たとえばフィットネス中の女性の姿を大きくストレートに見せられるなど、FiNCアプリを印象付けるのに親和性が高い。DRを目的にするにあたり、ユーザーに嫌悪感を抱かれないことを前提にしながら、最大限にFiNCアプリの特徴を伝えることを意識した」と、小出氏は語る。

「強固な連携と、スピード感には目を見張るものがあった」と水谷氏
クライアントへの支援サービス
また、フェイスブックによるサポートも、こうした素早い改善を後押しした。なかでも、フェイスブックと企業サイド、双方のクリエイティブチームが膝を突き合わせて企画をディスカッションする「スプリント」というワークショップは、改善の大きな契機になったという。
フェイスブックのクリエイティブチームがこれまで蓄積した知見と、FiNC Technologiesが研鑽したデータを掛け算して最大限の効果を引き出したのが「スプリント」だ。丸1日かけたこのワークショップでは、その時点までのクリエイティブと効果検証の結果をもとに、さらなるアイデア出しを行った。
コンセプトの企画からクリエイティブ制作ワークショップまでを集中して実施し、それを翌日、すぐに配信。ストーリーズ広告を活用するうえで重要なのは、オーガニック投稿との親和性を図りつつ、ユーザーにとって利益のある情報を訴求することだ。そのため、ユーザーが使用するものと同類の絵文字やスタンプ類を活用しながら、遊び心のあるクリエイティブづくりをする方向へと転換した。また、CTAの上へスワイプを促す仕掛けを入れることで、よりインストールのアクションにつながる効果を狙った。
この取り組みによって、その時点でも好調だったCPAがさらに15%改善。CTRも目に見えて向上した。「この日を境に、数値に弾みがついた。最終的にCVRもこれまでのフィード広告に比べて120%向上し、もともと高めに設定していた目標を超えることができた」と、藤原氏は手応えを語る。
フェイスブックは今後も、こうしたクライアントへの支援サービスを積極的に充実させていくという。たとえば最新のサービスである「フルスクリーンサポート」を活用すると、横長の画像素材しかない場合でも、自動で余白に背景色やテキストが追加された縦型画像が生成され、ストーリーズ広告に出稿できる。また、同じワークショップを実施できる認定パートナーとなっている広告会社を介した支援も行っている。こうした仕組みが増えれば、FiNC Technologiesのような成果を残せる環境を作ることができる。

「スプリントを契機に、数値に大きく弾みが着いた」と語る藤原氏
クリエイティブのテスト&ラーン
クリエイティブを大量かつスピーディーに制作でき、密なPDCAを回せる社内体制と、フェイスブックとの強固なパートナーシップおよび知見のフル活用によって、現在FiNCアプリの新規ダウンロードは、FacebookとInstagram広告を経由したものがもっとも多いという。
水谷氏によると、Instagram活用で大切なのは、クリエイティブの継続的改善だ。「たとえば、いまは『Fun & Play』なビジュアル表現がトレンドとなっているため、広告クリエイティブに、ちょっとした遊び心を加えた表現を足すことで、効果が向上することがある」と同氏は語る。
また、小出氏も以下のように続ける。「ストーリーズ広告活用は、こうしたトレンドを押さえつつ、クリエイティブのテスト&ラーンを繰り返すことが成功の鍵だ。今回の事例を踏まえて、今後のさらなるユーザー獲得を目指したい」。
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Written by 高島知子
Photo by 渡部幸和