デジタルマーケティングにおいて多くのブランドが注力するのは、いかにCVR(コンバージョンレート)を高めていくかだ。その取り組みで収集できるデータの種類や量は膨大なものだとしても、それらをどう組み合わせれば、よりコンバージョンに到達しやすくなるのかのPDCAを回していかなければ、宝の持ち腐れとなる。
自社データと外部データとの連携、フルファネルでの広告アプローチ、自社サイト内検索の改良など、データフィードを活用した対策はさまざまあるが、広告主にとって、それは同時に課題でもある。
9月6日、御茶ノ水のソラシティにて、こうした課題に対するマーケティングソリューションを議論する、データフィード専門イベント「FeedTech(フィードテック)」が開催。イベントのセッションでは、クリエイティブの改善やより高度なターゲティング戦略など、ブランドマーケターとプラットフォーマーの取り組みについても紹介された。
デジタルマーケティングの大きな目標のひとつは、いかにCVR(コンバージョンレート)を高めるかだ。その取り組みの過程で得られるデータの種類や量はどんどん増えていく一方だが、戦略的にPDCAを回していかなければ、宝の持ち腐れとなる。
データフィードを活用したマーケティングは、まだ歴史が浅い。自社データと外部データとの連携、フルファネルでの広告アプローチ、自社サイト内検索の改良など、さまざまなアプローチは存在するが、その戦略をいかに策定するかということ自体が、いまだ課題でもある。
9月6日、御茶ノ水のソラシティにて、データフィード専門イベント「FeedTech(フィードテック)」が開催された。同イベントでは、クリエイティブの改善やより高度なターゲティング戦略など、さまざまな視点からデータフィード攻略について発表があった。
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クロスデバイスをどう攻略するか
Facebookのパートナーマネジャー、大谷直史氏はデータフィードを使った唯一の自社広告メニューとして、ダイナミック広告を紹介。ダイナミック広告の特徴は、パーチェイスファネルの全フェーズを通して、ひとりひとりのユーザーに適した広告を配信できることだ。ユーザーが閲覧していた商品の広告をピンポイントで表示することができる。今年の5月にはインスタグラムでもダイナミック広告の配信を開始し、さらにモバイルアプリインストール広告の配信もはじめている。

Facebookの大谷直史氏。
この背景として、インスタグラムユーザーの88%は、投稿を見て商品を購入したことがあるというデータを大谷氏は紹介。また、購入に至るまでのクロスデバイスについても言及し、ダイナミック広告でトラッキングしたデータをもとに、クロスデバイスレポートを広告主に発行しているという。イギリスでは、オンラインで商品購入の際はユーザーの68%が複数のデバイスを使って検討することを紹介。そのなかでも、モバイルの使用率は約6割になっている。
クリエイティブをどう出し分けるか
株式会社ネクスト、HOME’S事業本部マーケティング戦略部プロモーションユニット広告グループの多田隈 文氏は、不動産情報のプラットフォーム、HOME’Sの広告クリエイティブについてのインサイトを紹介した。
何を、誰に、どう見せるかを軸にしてバナーを配信。「何を見せるか」については、賃貸物件の場合は、外観ではなく間取り図、賃料、掲載期間、物件所在地情報を広告クリエイティブに採用した。一方で、新築マンションの場合は、外観、物件名(ブランドを気にする顧客が多い)、新築であること、見学可否についての情報をクリエイティブに取り入れたという。

ネクストの多田隈文氏。
「誰に見せるか」に関しては、複数のプラットフォームを活用してターゲティングの幅を効かせ、「どう見せるか」については、バナーに掲載している商品をクリックしたとき、遷移先は商品詳細ではなく、特殊なLPに飛ぶようにした。これは、興味をもった商品サイトからの離脱率を抑えるための施策だ。この特殊LPには多くの関連物件を掲載し、クリックした商品物件との比較を促す形になっている。こうした取り組みの結果、HOME’Sは大幅なCVR向上とCPAの改善を実現したという。
クエリと商品情報をどう適合するか
大手求人サイトのビズリーチとファッション通販サイトのセレクトスクエアは、GoogleのProduct Listing Adと専門商品の通販サイトは相性の良さがあると指摘。ユーザーが検索するクエリと、自社の商品のタグ情報をいかに適切にマッチさせるかがカギだという。クエリと商品情報のマッチングの改善例として、「靴のサイズ表記のばらつきを統一したことで、検索と商品のマッチングが向上した」と、セレクトスクエアのマーケティング部部長補佐、笹倉 直広氏は話した。

ビズリーチの小林功氏とセレクトスクエアの笹倉直弘氏。(左から)
求人が成約しないかぎり売上に繋がらないビズリーチは、ユーザーの検索クエリとサイト内の関連する職種情報の適切な紐付けに腐心している。あるユーザーが営業職を求めて求人検索をした場合、ビズリーチのサイトでは海外営業など、複数の営業カテゴリーが営業というクエリに結び付けられる。そのため、ビズリーチのキャリアトレック事業本部マーケティング部の小林功氏は、このようなユーザーデータとコンバージョンデータを組み合わせることで、サイト内解析の向上を目指していると語った。
また、ビズリーチはCriteo(クリテオ)に合わせた検索カテゴリーをチューニングし、ダイナミック広告のメリットでもある、動的なリターゲティングのクリエイティブにも力を入れることで、CVR(会員獲得)の向上に繋げた。
検索結果をどう活用するべきか
自社サイトへの集客を達成目標にしてしまいがちなブランドに対して、ゼロスタートの代表取締役社長、山崎 徳之氏は、「検索結果は購買履歴と同じくらい重要だ」と、自社サイト内でのマーケティングにもっと目を向けるべきと指摘。通販サイト内検索の質を向上すれば、コンバージョンアップに繋がると語った。Socketの執行役員兼プロダクトマネージャーの安達隆氏は、サイト内の検索結果が多すぎると、ユーザーが離脱しやすくなると指摘。また、絞り込み検索の仕方を知らないユーザーも多いことについても言及した。

Socketの安達隆氏とゼロスタートの山崎徳之氏のパネルディスカッション。(左から)
サイト内は広告費を支払わずにユーザーに対する知見をためることができ、また訪問してきたユーザーも、より詳細な情報を獲得できるウィンウィンの場所だ。商品情報のレビュー機能に関しても、双方にとって非常にメリットのあるサービスではあるが、日本のサイトはまだ海外のサイトに比べて、レビュー機能が採用されているケースが珍しい。しかし、Amazon.comのレビュー欄が商品購入の参考になった経験は誰しもあるはずだ。山崎氏は、サイト内とサイト外の検索の一気通貫を目指すべき、しかし、多くの場合、サイト内の施策が見逃されていると語った。
今回登壇したプラットフォーマーやブランドは、各社、独自の戦略のもと、データフィードのさまざまな活用方法を見出している。デジタル化が急速に進行するなか、データフィードはより複雑化していくが、明確な戦略をもって、その対処にあたれば、恐れるに足らないどころか、明らかな成果をもたらしてくれるのだろう。
Photo courtesy of FeedTech
Written by 中島未知代