事前に承認された場所にだけ広告を表示させるホワイトリストはブランドにとって、ますます関心の的となりつつある。終わりのないモグラ叩きのようになりかねないブラックリストとは違い、ポルノといった避けたいコンテンツの横に表示されることを確実に防ぐことができる。代償は相対的なコストの高さとスケールのしづらさだ。
事前に承認された場所にだけ広告を表示させるホワイトリストはブランドにとって、ますます関心の的となりつつある。終わりのないモグラ叩きのようになりかねないブラックリストとは違い、ホワイトリストの場合は、ポルノといった避けたいコンテンツの横に表示されることを確実に防ぐことができる。代償は相対的なコストの高さとスケールのしづらさだ。
そのなかでも、いま拡大しつつあるのは、インフルエンサーのホワイトリストだ。ブランドたちはそれぞれ、起用できるインフルエンサーのホワイトリストを作っており、場合によってはお互いのホワイトリストを参照しあっている。こうした行為は、ブランドたちがインフルエンサーマーケティングのリスクに自覚的になるにつれて、増加してきた。
インフルエンサー利用のリスク
米DIGIDAYの取材に匿名を条件に応えてくれたあるマーケティングエグゼクティブによると、これまでもインフルエンサーによって商品を「気分が悪くなるような」ネガティブな方法で取り上げられて、痛手を被った経験があるという。この界隈では大きな失敗もいくつかあった。
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なかでも一番大きいものは、年収世界一のユーチューバー、ピューディパイによるユダヤ人に対する差別的なジョークだろう。それによって彼は、ディズニーといった大手ブランドとのYouTube上でのビジネスを失うことになった。また、それからしばらくして、2月にはインフルエンサーであり、カバーガール(CoverGirl)アンバサダーであるジェームズ・チャールズは、アフリカに行きエボラにかかるという内容のジョークを、カバーガール・スポンサーのツイートの流れでツイートした。
さらにインフルエンサーに関しては、ただブランドを守ることだけが問題ではない。類似のブランドのスポンサーを受けたことがないインフルエンサーを探すブランドは多く、ときには一切ブランドのスポンサーを受けたことがないインフルエンサーを求めるケースも存在する。
ホワイトリストの利用価値
その一方で、パブリッシャーたちが説明責任を負うのと同様に、インフルエンサーたちもそれを負うべきである。「これまで起きてきた問題やその影響について考慮したとき、ブランドが真剣に検討しないといけない問題が浮かんでくる。ブランドのアイデンティティや信頼性をインフルエンサーの手に託しているという事実だ」。こう語るのは、360iのインフルエンサーマーケティング責任者であるコーリー・マーティン氏である。
これはよくある問題だろう。インフルエンサーマーケティングを行いたいブランドたちはしばしば、「数打って祈る」という手法を取る。何百というソーシャル上のスターに依頼をし、彼ら自身がプラットフォームに何を投稿するか権限をもつというアプローチだ。これにおいては、ブランドの利用に関して、何の安全を保証するメカニズムも存在していない。
ホワイトリストはその点で役に立つ。360iは「信頼できる本物のフォロワー」のリストを使うという。360iのモットーは「責任をもてるインフルエンス」だ。彼らは信頼性、過去の言動、そしてトーンという基準を通じてリストを作成しているそうだ。
安全を保証するメカニズム
ホワイトリストはさまざまな性質を持っている。たとえば、マイクロソフトはインフルエンサーマーケティングエージェンシーであるリトル・バード(Little Bird)を使っているが、彼らが「教室でスカイプを」プロジェクトの広告を打とうとしたとき、ホワイトリストを使用した。これによってソーシャル上でアクティブで、ほかの教育関係者からフォローされている教師を見つけた。リトルバードのホワイトリストは、お互いの尊敬に基づいた「相互の承認」のリストになっている。
インフルエンサーマーケティングのプラットフォームであるハッシュオフ(Hashoff)では、インフルエンサー何千人ものホワイトリストが構築されている。インフルエンサーのアカウントをPMPパートナーシップを通じてバックエンドで結びつけ、リストを作成する。そしてハッシュタグ、どんなブランドとそれぞれのインフルエンサーがこれまで働いたことがあるか、といった要素に基いてホワイトリストを作っていくのだ。
「ブランドに対する安全性は、我々が鋭く自覚していることだ。我々はインフルエンサーたちの4年分の動向を分析している」と、CEOのジョエル・ライト氏は語った。ハッシュオフのリストは、またGoogleによる、英語の不適切な単語と認識される1000の言葉をベースにしている。不適切な単語には「神(God)」や「政治(politics)」といったものが含まれる。
ポルノのようなコンテンツや政治的に偏ったもの、といった明らかな避けるべき事例以外にも大きな要素がある。同じカテゴリーの他ブランドと働いたことがないインフルエンサーを起用するということだ。ブランドのなかには、ほかと一切仕事をしたことがないインフルエンサーを求めるところもある。ホワイトリストを調整することで、こういったものだけを選ぶこともできる。
ペイド投稿としても再活用
近年のマーケットの進化もまた、ホワイトリストの需要を高めている。ブランドはもともと、クリエイターたちにポストを作らせることでインフルエンサーマーケティングに足を突っ込む形になった。しかし、いまではポストに対して予算を投入し、また、しばしばペイド広告にもインフルエンサーたちが制作したものを使う。
「この次の段階として起きているのは、キャンペーンにこういったタレントを起用する際に、そのコンテンツのリーチを向上させるため、ブランドのチャンネルを通して広告を購入するというやり方だ」と語るのは、フーセイ(WhoSay)のCEOであるスティーブ・エリス氏(これはプラットフォームによって変わってくる。Facebookでは、インフルエンサー投稿がブランド名と「ともに」表示されるからだ。それは「ハンドシェイク(握手)」と呼ばれている)。
そして、予算を投入する場合、その広告が正しい場所に表示されることが非常に重要となる。さらに、スポンサードしたブランドが何であるか明確になることが多い。すると、人種差別的な発言をしてしまうインフルエンサーを起用したり、政治的な内容に偏ったり、もしくはあらゆるブランドと契約しすぎているために、誠実さが欠けてしまうことは、実に早い段階で問題として露呈される。
いくつかの企業は、双方向にホワイトリストを活用したいと交渉している。エリス氏によると、とある大手ブランドがプロモーションのためにインフルエンサーのホワイトリストへアクセスさせてくれるように依頼してきたことがあるという。そして知名度の高いインフルエンサー側もブランド独自のホワイトリストへアクセスを求めるという。そこで彼らのポストを投稿するのだ。「これは双方向のやり取りだ。インフルエンサーのネットワークも価値があるのだ」とエリス氏は言う。
Shareen Pathak(原文 / 訳:塚本 紺)
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