ファストファッション小売企業は手頃な価格が売りだが、より高価なサードパーティーブランドを商品構成に加えることで事業を拡大しようとしている。
H&MのCEOを務めるヘレナ・ヘルマーソン氏は6月後半、さらに多くのサードパーティーブランドをオンラインと店舗の両方で販売していく計画だと述べた。オンライン・ファストファッションのシーイン(Shein)は最近になり、サードパーティーマーケットプレイス戦略を多様化する一環として、ハイエンドブランドのポールスミス(Paul Smith)とスチュワートワイツマン(Stuart Weitzman)を誘致し、自社ウェブサイトで販売している。一方でザラ(Zara)は、靴メーカーのクラークス(Clarks)や、韓国ブランドのアーダーエラー(Ader Error)とコラボレーションし、高価格帯の限定商品を販売している。
eコマース大手に対抗するため、ファストファッション各社はマーケットプレイスの事業モデルを模倣しはじめている。より多くのブランドや利益率の高い商品を販売することで、ファストファッションブランドは、新規顧客を獲得できるだけでなく、自社イメージも改善できる。サードパーティーブランドにとっては、ファストファッションブランドと提携することで、より幅広い顧客層への露出が可能になる。
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトです
ファストファッション小売企業は手頃な価格が売りだが、より高価なサードパーティーブランドを商品構成に加えることで事業を拡大しようとしている。
H&MのCEOを務めるヘレナ・ヘルマーソン氏は6月後半、さらに多くのサードパーティーブランドをオンラインと店舗の両方で販売していく計画だと述べた。オンライン・ファストファッションのシーイン(Shein)は最近になり、サードパーティーマーケットプレイス戦略を多様化する一環として、ハイエンドブランドのポールスミス(Paul Smith)とスチュワートワイツマン(Stuart Weitzman)を誘致し、自社ウェブサイトで販売している。一方でザラ(Zara)は、靴メーカーのクラークス(Clarks)や、韓国ブランドのアーダーエラー(Ader Error)とコラボレーションし、高価格帯の限定商品を販売している。
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eコマース大手に対抗するため、ファストファッション各社はマーケットプレイスの事業モデルを模倣しはじめている。より多くのブランドや利益率の高い商品を販売することで、ファストファッションブランドは、新規顧客を獲得できるだけでなく、自社イメージも改善できる。サードパーティーブランドにとっては、ファストファッションブランドと提携することで、より幅広い顧客層への露出が可能になる。
eコマース大手との競合
ファストファッションブランドは何年にもわたり、Amazonのようなeコマース大手との競合に直面してきたと、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)のシニアアナリストを務めるスカイ・キャナバス氏は語る。インサイダーインテリジェンスの6月の予測によると、Amazonでのアパレルとアクセサリーの売上額は、2023年に697億2000万ドル(約9兆6900億円)に達し、この分野における米国の小売eコマース売上全体の32.6%を占めることになる。ファストファッションブランドが巻き返さない限り、このカテゴリーでのAmazonのシェアは増える一方と予測されている。
「ファストファッションブランドは常に競争が激しく、eコマースによってさらに激しくなった。長期的には、これらのファストファッション業者のすべては、品揃えを多様化して刷新し、より利幅の大きい事業に移行することを望むだろう」と、同氏は述べている。
ファストファッションブランドは、従来の商品構成を補完するための商品を増やしたり、ザラの場合は、ほかのブランドとリソースやアイデアを共有することで利益を得ている。H&Mやシーインのやり方とは異なり、ザラは限定版のコラボレーションに力を入れている。クラークスとの最近のコラボレーションでは、レザーアンクルブーツを定価219ドル(約3万400円)で販売する。
H&Mの売上倍増計画
H&Mの場合、2030年までに売上を倍増させるという目標を達成するためには、サードパーティーブランドをウェブサイトに加えることが鍵となる。同社はすでに、6つの市場で70の外部ブランドを自社プラットフォームで販売している。アディダス(Adidas)やニューバランス(New Balance)といったブランドの商品は、H&Mグループ(H&M Group)の直営店やウェブサイトの一部ですでに購入できる。同社は先月、昨年開始されたマーケットプレイス戦略の拡大を計画していると発表した。
「この戦略は、H&Mの品揃えをほかのブランドで補っている顧客から非常に好評だった。今後は、収益性のある成長を確保するため、たとえば適切なロジスティクスなど、正しいバックボーンを保有することに労力を注ぐ必要がある」と、ヘルマーソン氏はロイター(Reuters)に語った。
H&Mの第2四半期の純売上は6%増の576億クローナ(約53億6000万ドル、約7450億円)に達した。一方、最近の四半期におけるザラの店舗内およびオンラインでの売上額は13%増の76億ユーロ(約80億ドル以上、約1兆1100億円以上)だった。
ファストファッションブランドとサードパーティーブランド、両者の利点
コンサルティング企業のパーカーアベリー(Parker Avery)でシニアマネージャーを務めるリー・ウィタカー氏は、ブランドがサードパーティーのブランドパートナーから、関連する消費者データを得ることができると語った。このデータは、ファストファッションブランドが新しいトレンドをつかみ、将来のマーチャンダイジング戦略に活かすのに役立つだろう。サードパーティーブランドにとっては、ファストファッションブランドの幅広い消費者層から利益を得られるだろうと同氏は述べた。
「取引の交渉や契約書の書き方次第だが、多くの場合、一方から他方への売上データの共有が行われる」と、ウィタカー氏は述べる。サードパーティーブランドにとっては、ファストファッションのプラットフォームに参加することで、「これまでは食い込むことができなかった顧客グループ」へのアクセスが可能になると同氏は付け加えた。
いくつかの利益が得られる可能性はあるものの、これらのファストファッションブランドの一部の課題は、より多くのブランドを自分たちのプラットフォームに参加させることだ。ファストファッションブランドは何年にもわたり、その労働慣行や環境への影響について厳しい目にさらされてきたと、ブランドエキスパートでAライン・パートナーズ(A Line Partners)の創設者であるガブリエラ・サンタニエロ氏は述べる。
ファストファッションの負の印象を断ち切る
シーインは、自社プラットフォームでの販売が認定されたブランドに特典を提供している。ウォールストリートジャーナル(The Wall Street Journal)の報告によると、同社はサードパーティーブランドに対して、プラットフォームでの最初の3カ月について広告配信無料・コミッションなしという特典を与えている。認定を受けるブランドは、Amazonで200万ドル(約2億7800万円)を売り上げている必要がある。
「ソーシャルメディアでは多くのうわさが流れており、それが真実かどうかにかかわらず、多くのファストファッション小売企業の悩みの種になっていると考えられる。これは、そのような状況を断ち切るための方法だ」と、サンタニエロ氏は述べている。
[原文:Fast-fashion retailers like Zara & H&M are introducing higher-margin brands into their assortments]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via zara.com