ファストファッション 業界、「ビジュアル検索」で火花:競争力を高めるテクノロジー

ファストファッションのブランドたちは、オンラインのマーケットシェアをめぐって熾烈な競争を展開している。そこではビジュアル検索(visual search)が競争優位を得るひとつの手法として注目を集めているようだ。

先日、フォーエバー21(Forever 21)が「ディスカバー・ユア・スタイル(Discover Your Style)」機能をウェブとモバイルで提供を開始。これはビジュアル検索エンジン、ドンデ・サーチ(Donde Search)とのパートナー契約によるものだ。ユーザーはアイコンをクリックして、シルエットや色といった要素を指定すると、フォーエバー21の在庫から該当するものを表示してくれる。

フォーエバー21のモバイルアプリ上で、この機能のパイロット版が、5月にローンチされたが、今回はそれを拡大した形だ。パイロット版では、アプリ上でコンバージョンを増加させるだけでなく、平均購買価格も上昇させ、成功を収めた。それを、さらにスケールするべく、ウェブにも導入したわけだ。

重要なイノベーション

同社プレジデントのアレックス・オーク氏は、このビジュアル検索が最近のeコマースにおけるイノベーションのうち、もっとも重要なもののひとつであると考えている。「オンラインショッピングの便利さと従来のリテールにおける豊かな発見の体験のギャップを埋めるのがビジュアル検索だ。頭でファッションについて考えるとき、人々は言葉ではなくビジュアルを浮かべて考える。顧客はそれと同じ方法で衣服を検索することができるのだ」と、オーク氏は語る。さらに「世界でもっとも直感的なオムニチャネルなショッピング体験」を開発したいと述べた。

ドンデのファウンダー兼CEOのリアット・ザケイ氏は、このテクノロジーが言語に依存しないため、企業がグローバルマーケットでスケールするのに役立つという。フォーエバー21の場合、アメリカとカナダに加えて、ヨーロッパ、日本、韓国、そしてフィリピンで、現在展開している。

「我々はテキストベースではなく、ビジュアル中心である。そのためユーザーが『チュニック』だったり『コールドショルダー』といった用語を知っていなくても良いわけだ。スマートでありながら、楽しんで使えるツールを顧客に提供することでイライラしないで自分のスタイルを見つけてもらうことは重要だ」と、ビジュアル検索スタートアップ、イェスプリーズ(YesPlz)のCEOであるジウォン・ホン氏は説明する。

ビジュアル検索の応用例

ビジュアル検索の応用例は、さまざまある。一般には言葉ではなく、画像を使って検索エンジンに探したいものの情報を与えることを指す。「黒いAラインのドレス」と打ち込むのではなく、例えばドンデの場合、「ドレス」や「Aライン」「黒」といった要素を表すイラストを選ぶといった具合だ。また黒いドレスを来ている人物の画像を使って検索する、ということもありえる。ユーザーのカメラで撮影されたものや、オンラインで見つけた画像を使うことができる。それによって類似のスタイルを見つけるための検索を行うというわけだ。

ファストファッションにとってはビジュアル検索は特に都合の良いツールだ。ファストファッション業界ではトレンドの入れ替わりが激しく、顧客も追いついていけないことが多い。ユーザーたちは特定のトレンドを真似したいと考えているが、それを言葉でどう表現するか、知らない場合もある。

ザケイ氏はドンデについて、ファストファッションのブランドがeコマースに移るにつれて、実店舗でディスプレイできる数に制限される必要がなくなったと語る。もちろん、その結果プロダクトの数が増えたことで顧客も探すのが大変になり、リテーラーにとっても分類するのが大変になった。ファストファッションは次々に新しいアイテムを追加していく、そのためユーザーたちのクリックヒストリーから類似商品をおすすめする、という機能も実装しにくいのが現実だ。そのためドンデでは、アイテムを自動で分類し、カタログにすでに存在している類似アイテムを検知するということを可能にしている。

驚くほど新しいテクノロジー、というわけではないが、この1年で勢いをつけてきた。

各社のビジュアル検索

ザラ(Zara)もビジュアル検索に取り組んでいる。ユーザーが見ているプロダクトに似ている他のプロダクトを見つけるためのボタンを実装した。そして、エイソス(Asos)やH&M、ナスティ・ギャル(Nasty Gal)を抱えるブーフー・グループ(Boohoo Group)といった企業も画像をアップロードして、それぞれのブランドが類似のアイテムを販売していないかを検索する機能を提供開始した。これによってランウェイ上を歩くセレブたちの画像を元に、スタイルを真似しやすくなっている。

フォーエバー21のビジュアル検索結果

フォーエバー21のビジュアル検索結果

各種プラットフォームやマーケットプレースも、このテクノロジーに取り組みはじめている。ピンタレスト(Pinterest)に加えてインスタグラム(Instagram)でも、画像に含まれるアイテムを分別し、販売されているアイテムとマッチさせることができる。イーベイ(eBay)はこれまでも画像マッチング検索を実装していたが、そこに「類似アイテムをショッピングする」というオプションを追加した。7月には好奇心旺盛なプログラマーたちはSnapchat(スナップチャット)がAmazonと協働して、ビジュアル検索機能をアンドロイドアプリに追加しようとしていることを発見した。

スライス(Slyce)はトミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)とパートナーを組み、ヒルフィガーのアプリを使ってランウェイショーと同時に、そこでモデルたちが着ているアイテムを使ったビジュアル検索ができるようにした。スライスがビジュアル検索技術を提供しているブランドの数は、60にものぼる。そのなかにはメイシーズ(Macy’s)、ニーマン・マーカス(Neiman Marcus)、JCペニー(J.C.ペニー)、グローバルリテール複合企業であるランドマーク・グループ(Landmark Group)のようなヨーロッパ、中東を拠点にする企業も含まれる。CEOであるテッド・マン氏は「ビジュアル検索は私たちがミーティングを行うリテーラーのほとんどにとって、実施して当然な最低限の取り組みとなっている」という。彼によると独立系のリテーラーたちはスライスを使うことで過去3年間、月比較でビジュアル検索の利用率が継続して20%上昇してきたという。中東におけるビジュアル検索利用は予想をはるかに超えるものであったようだ。しかし「まだ初期のテクノロジーであり、音声検索が10年前にあったような段階だ。(音声検索は)それから飛躍的に進化した」とも認めた。

H&Mでは画像をアップロードするという方法を取っており、フォーエバー21の場合はアイコン群から選ぶという方式になっているが、こういったさまざまなアプローチのうち、どれがベストなのかは意見が分かれるところだ。

デジタルネイティブの需要

しかしアプローチに違いはあっても、デジタルネイティブと呼ばれるZ世代がその所得を伸ばすにつれてビジュアル検索はさらに利用され、親しまれるようになるだろう。

ピンタレストの報告によると、昨年1年間にビジュアル検索は70%近くの成長率を見せたという。月間ビジュアル検索の回数は6億回にものぼる。ピンタレストのリテール・バーティカル戦略の責任者であるエイミー・ヴィーナー氏は、リテールはそもそもビジュアル体験に根ざしたものであると指摘する。ウィンドウディスプレイから店舗内を歩き回る行為に至るまで、視覚が中心になっている。「オンラインショッピングとモバイルデバイスが台頭することで、ビジュアル体験が犠牲になってきていた。顧客に思いがけない発見をしてもらう、ということが難しくなっている。ユーザーたちは正しい言葉や用語を知らなくても、検索して新しいアイデアを見つけたいと思っているものだ」と語った。

セールスフォース(Salesforce)による2017年版「コネクテッド・ショッパーズ・レポート(Connected Shoppers Report)」によると、ミレニアル世代の35%が、プロダクトのレコメンデーションを得るために実店舗で商品を検索する、画像を使ってデジタル形式で検索するといったことを行いたいと答えている。この数字はX世代では30%、ベビーブーム世代では23%に落ちる。全体的には「ビジュアル検索」という項目はパソーナライズレコメンデーションや通知、モバイルウォレット、チャットボット、ドローン配達といった項目よりも人気であった。またアクセンチュア(Accenture)による2017年のリサーチでも、若年層消費者の69%がビジュアル中心の検索だけで購入することに興味を示している。

売上も高まる可能性

利用率が増えれば、売上も高まる可能性がある。ピンタレストのヴィーナー氏はeマーケター(eMarketer)によるモバイルリテールアプリについての2018年レポートのためにアナリストのアンドリュー・リップスマン氏と話しているが、そこではビジュアル検索を用いた購買体験は「価格を気にする程度」が低くなり、購入価格を大きくすると述べている。この発言はフォーエバー21アプリにおけるドンデ利用の結果でも実証されている。「ディスカバー・ユア・スタイル」をローンチした月には平均購買価格において20%の上昇を確認している。

「リテーラーにとってはより効率的であり、消費者にとってはより直感的だ。ビジュアル的に検索をすること。これは時計であれ椅子であれドレスであれ、ビジュアルなプロダクトすべての検索方法になるだろう」と、ザケイ氏は語る。

Maghan McDowell(原文 / 訳:塚本 紺)