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ファッション業界で盛り上がる、「回収プログラム」の現実:運用は複雑で難しいが、需要は高い

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この5年ほどで、「循環性(Circularity)」という言葉は、ファッション業界の流行語となった。多くのブランドが製品の寿命を延ばしたり、着用後に何か別のものとして、再利用するといった方法を導入している。しかしブランドが、どのように使用済み製品を自らのもとに回収しているかは、あまり知られていない。

回収プログラムにはさまざまな形態がある。パタゴニア(Patagonia)、アイリーン・フィッシャー(Eileen Fisher)、キュヤナ(Cuyana)などのブランドは、製品を集めて加工するさまざまな手法を持っている。多くの場合、使用済み製品は郵送や店頭での受け渡しで回収され、社内で処理されるか、他社の協力を受けて処理される。現在こうしたプログラムは、その複雑さにもかかわらず、人々のあいだで人気を集めている。実際、アイリーン・フィッシャーが2021年3月に回収した衣料品は約1万9000点で、1月の約6000点、2月の約8000点から増加した。2009年にこのプログラムを開始して以来、同ブランドは合計150万着の服を回収しているという。また、スウェーデンのフットウェア・ブランドであるバガボンド・シューズ(Vagabond Shoes)は、2019年だけで2.5トンの靴を回収したと報告している。

現在、持続可能なファッションに対する顧客の需要は、かつてないほど高まっており、製品回収プログラムは、今後も注目を集めそうだ。しかしなかには、プロセスの複雑さに注意して、慎重にプログラムを構築するブランドもいる。先週、製品回収プログラムを来年に始動する意向を発表した、ローシーズ(Rothy’s)などがそうだ。

大変なのは製品の数量管理

「回収プログラムの実施でもっとも手間がかかるのは、製品の数量管理だ」と述べるのは、アイリーン・フィッシャーのリニューアル部門ディレクター、シンシア・パワー氏だ。同社の衣料品は全国50以上のブランド店舗で回収され、一点一点、シアトルとニューヨーク州アービントンにあるふたつの倉庫で手作業で仕分けされる。なお、回収を容易にするため、店員は返品された製品を店舗で保管し、十分な数の製品が集まった時点で、倉庫に一括して送るようにしてるという。顧客はプロダクトを直接倉庫に送ることもできるが、店内引き取りの方が一般的だとパワー氏は述べた。

「いまでも私たちは学んでいる最中だ」とパワー氏。「しばらくのあいだは、良好な状態の製品のみを再販し、それ以外はすべてリサイクルに回していた。だが2020年になってようやく、使用済の製品を低価格販売に踏み切ることができた。我々はもっと変化できるだろう」。

一方、製品の複雑さを回避するため、仕分け作業を他社に外注する企業もいる。スレッドアップ(ThredUp)はなかでも人気の外注先で、MMラフレア(M.M.LaFleur)やキュヤナといったブランドの回収プログラムも支えている。MMラフレアのファウンダーでCEOのサラ・ラフレア氏によると、新規購入で顧客に製品を送る際には、スレッドアップの回収用バッグを同梱するという。これは、製品を使わなくなったら、スレッドアップに送付させるための仕掛けだ。一方、水泳ブランドのフェア・ハーバー(Fair Harbor)は、7月末にローンチしたトゥー・リウェア(2 ReWear)という企業を、外注先として利用している。

また、ローシーズのサステナビリティ責任者であるサスキナ・ヴァン・ゲント氏によると、現在同社は試験的に回収プログラムを作成している最中であり、外注といった手法に関してもさまざまな選択肢を検討しているという。「周囲の企業が取り組みはじめていることとはいえ、まだ未知の領域だ」と同氏は述べる。「製品を回収するための最善のステップは何か、どのパートナーを活用すべきか、店舗はどのような役割を果たすことができるのか、まだ模索中で、あらゆるオプションが検討対象になっている。2022年は、我々にとって学びの年だ」。

回収を念頭に製品を開発

さらに、なかにははじめから回収を念頭に製品を作るブランドもいる。アナザー・トゥモロー(Another Tomorrow)は、持続可能性を重視したブランドであり、2021年後半に回収プログラムを開始する予定だ。しかし、プログラムの計画自体は、2020年のブランド立ち上げ以来粛々と進め、あらゆるプロダクトを一定価格で買取ってきた。また、それぞれの製品には独自のQRコードが付与されており、スキャンすると製品の履歴が表示されるほか、これは顧客に対し、製品を捨てないようメッセージを伝えるためにも利用されているという。

同社の創業者で、最高経営責任者を務めるヴァネッサ・バーボーニ・ハリック氏は、「私たちの再販モデルは、デジタル化された製品エコシステムによって支えられている。我々は、それぞれの衣服に独自のデジタルIDを付与している」と述べた。

プログラムにインセンティブを付与するブランドもいる。アディダス(Adidas)のリサイクルを前提に作られたスニーカー、フューチャークラフト・ループ(Futurecraft Loop)の場合、顧客は古いフューチャークラフト・ループをアディダスに送れば、新品を受け取ることができる。しかし、ほかのブランドでは、ギフトカードを提供するだけで、インセンティブとしては通常は十分だ。また、回収促進のため、アイリーン・フィッシャーは、ブランドに返品された製品1点につき、5ドルのギフトカードを提供しており、メイドウェル(Madewell)、スニーカーブランドのサウザンド・フェル(Thousand Fell)も、同様のプログラムを展開している(サウザンド・フェルでは、顧客は同社のスニーカーを同社か、小売パートナーのメイドウェルに送ることができる)。

プログラムの認知も重要

回収プログラムを成功させるためには、顧客にそのオプションが存在することを、確実に伝えることも重要だ。しかし、ここでもブランドは注意する必要がある。パワー氏によると、アイリーン・フィッシャーはまだ、このプログラムの宣伝を強くしすぎないよう抑えているという。2年前に、すべての店舗に「服を返してください(We’d like our clothes back, please)」と書かれたウィンドウ広告を掲載したように、時折大きくプログラムを宣伝することがある。しかし、一般的には同社の回収キャパシティに見合ったメッセージを送ることが重要だと述べた。

「本音をいえば、回収プログラムに関するメッセージを、もっと積極的に発信したい」とパワー氏。「しかし、我々のロジスティクスを圧倒したくはない。パタゴニアのような大企業であれば、いつでも自社の回収プログラムについてメッセージを送ることができるが、それ以外の企業は注意が必要だ」。

[原文:Fashion’s circular takeback programs are difficult, complex and growing in popularity

DANNY PARISI(翻訳:塚本 紺、編集:村上 莞)