話題の新しいソーシャルメディアアプリ、クラブハウス(Clubhouse)を初めて使った多くのユーザーは、そこで話をする人々の熱心さや情熱に驚くことが多い。ハイスノバイエティ(Highsnobiety)の共同創設者であるジェフ・カルヴァーリョ氏もまた、同アプリのユーザーの熱心さに衝撃を受けている。
話題の新しいソーシャルメディアアプリ、クラブハウス(Clubhouse)を初めて使った多くのユーザーは、そこで話をする人々の熱心さや情熱に驚くことが多い。ハイスノバイエティ(Highsnobiety)の共同創設者であるジェフ・カルヴァーリョ氏もまた、同アプリのユーザーの熱心さに衝撃を受けている。3月第3週に配信された彼の週刊番組「カルチャークラブ(Culture Club)」は、300人以上の聴衆を集めた。リスナーたちはアジア系アメリカ人に対する人種差別について質問し、意見を述べた。クラブハウスによると、視聴に費やした平均時間で測ったクラブハウスユーザーの上位20%は、1日に2時間以上アプリを使っている。
2020年3月にローンチして以来、1000万回以上ダウンロードされているクラブハウスは、ストリートウェアやファッションの詳細について議論するハブとして急速に成長している。ファッションを中心に、アートや映画などさまざまなテーマを扱うカルチャークラブは、2万3000人以上のフォロワーを抱えている。カルヴァーリョ氏と一緒に番組のホストを務めるのは、元ヴァイス・メディア(Vice Media)のパートナーコンセプト部門バイスプレジデントであるベン・ディエツ氏、ノードストローム(Nordstrom)の男性ファッションディレクターであるジアン・デレオン氏、ティファニー(Tiffany&Co.)のエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターであるルバ・アブーニマ氏といった顔ぶれだが、彼らのフォロワー数は5000人から2万人であり、カルヴァーリョ氏のフォロワー数は300万人以上だ。
この大きなフォロワー数は、彼が同アプリに参加したのが昨年4月と、アプリのローンチからわずか1カ月後だったことが大きい、とカルヴァーリョ氏は言う。カルヴァーリョ氏は、カルチャークラブを毎週開催しているほか、NFTからトレーディングカードまで、さまざまなクラブの話を毎日のように聞いているという。ヴァーギル・アブロー氏のようなストリートウェア界のリーダー的存在やデザイナーのジェフ・ステイプル氏、ストックX(StockX)の共同設立者ジョシュ・ルーバー氏などの著名人は全員、このアプリの常連ユーザー(そしてカルチャークラブのゲスト)であり、スニーカーヘッズ・アノニマス(Sneakerheads Anonymous)のようなストリートウェアに特化したクラブには何万人ものフォロワーがおり、フォロワーたちは、そこでファッション業界の関係者の議論を何時間も聴いている。
Advertisement
エグゼクティブと考えを交わす場
現在クラブハウスで目立っていないのはブランドによって運営されているクラブだ。このアプリには、カルチャークラブやスニーカーヘッズ・アノニマスのようなグループのリスナー規模に匹敵するようなファッションブランドの部屋はあまりない。ナイキ(Nike)からニューバランス(New Balance)まで、ブランドはほとんどの場合、自社ブランドの代表者がほかのクラブに一度だけ顔を出すことで満足してしまっている。その一方で、このアプリは、新規ブランドからも老舗ブランドからも、ブランド創設者やエグゼクティブたちが出会って、新しいアイデアを生み出したり、ほかのエグゼクティブと考えを交わすための場となっている。
クラブハウスのユーザーにとって、業界内部の情報へのアクセスは大きな魅力となっている。スニーカー愛好家のヴィネイ・パーマー氏が2020年10月に創設したスニーカーヘッズ・アノニマスは、主に数百人のスニーカー愛好家が最新のスニーカーを逃してしまったことを嘆く場だった。それは、パーマー氏がナイキのサプライチェーン・エンジニアであるライアン・スミス氏に12月に自身のクラブで質疑応答を実施してもらったことで変わった。それ以来、パーマー氏は毎週月曜日の夕方に、スニーカー業界の関係者との議論という方向にクラブのフォーカスを転換した。ニューバランスのパートナーシップ責任者ジョー・グロンディン氏も参加している。スニーカーヘッズ・アノニマスは現在、4万人以上のレギュラーリスナーを抱えている。
「私が初めてこのアプリを使ったとき、スニーカーについての議論はあまりなかった」とパーマー氏は述べた。カルヴァーリョ氏はクラブハウスの黎明期を、金融業界やIT業界人たちに支配されていたと表現した。現在、ファッショントークス(Fashion Talks:1万7000人のフォロワー)、ファッショントーク101(Fashion Talk 101:3万4000人のフォロワー)、ファッション・クリエイティブス・リンクアップ(Fashion Creatives Linkup:6万4000人のフォロワー)など、会員数を増やしている新しいファッション関連のクラブが相次いでいる。パーマー氏は、スニーカーヘッズ・アノニマスのようなクラブを、NikeTalk.comのような2000年代初期の影響力のあるスニーカーフォーラムのバージョン2だと表現した。
モデレーター能力が人気の秘訣
パーマー氏自身は業界人ではない。彼は金融関係の仕事をしており、元プロバスケットボール選手だ。しかし、彼のスニーカーに関する知識と、グロンディン氏のような業界人が持つアピールのおかげで、スニーカーヘッド・アノニマスの人気は高まっているという。
シアーマ・ミーガー氏によると、ただの業界関係者でなくグロンディン氏のようなエグゼクティブたちに誰もがカジュアルな環境で話を聞けることは、プラットフォームの大きな強みのひとつだという。ミーガー氏は、小売コンサルティング会社スケーリング・リテール(Scaling Retail)の創設者であり、クラブハウスで毎週開催されるスケーリング・リテール・クラブ(Scaling Retail Club)のホストを務めている。このクラブではeコマースブランド「クーヤーナ(Cuyana)」の共同創設者シルパ・シャー氏のようなブランド創設者や、そしてインターミックス(Intermix)のストア担当バイスプレジデントであるロン・サーストン氏を会話に迎えている。
クラブのリスナーの大多数は、アドバイスを求めている新進ファッションブランドの創業者やエグゼクティブたちだ。ミーガー氏によると、既存のブランドのなかから、参加したり、アドバイスをしたり、質問に答えたりしたいと思っているエグゼクティブは容易に見つけられるという。彼女が話を聞いたエグゼクティブたちは皆、アプリをテストして使い方を学ぶことに熱心だという。
「レベッカ・ミンコフのような本当に影響力のある人であっても、フォロワー数は必ずしも多くない」とミーガー氏。ミンコフのフォロワー数は約6000人だが、一方でブランドではないミーガー氏やパーマー氏のようなクラブハウスにおけるクラブホストが4000人以上のフォロワーを抱えている。「あなたの信頼性は、あなたの人気に基づいているのではなく、良い議論を促進し、人々の関心を引くあなたの能力に基づいている」。
ブランド担当者たちは興味がない
パーマー氏は、ニューバランスやナイキなどのブランドにいる知り合いに、なぜ自分たちでクラブハウス上に部屋を作らなかったのか尋ねたが、彼らは興味がないと答えたという。
ブランドがクラブハウスをほかのプラットフォームのように扱おうとしないのは良いことだ、とミーガー氏は言った。ブランドイメージを厳密にコントロールすることを心配することなく、自分が興味を持った議論にパッとエグゼクティブが参加できるようにすることで、同アプリにおける会話が持つフォーマルでない性質を受け入れるべきだ。
ミーガー氏は「クラブの名前をめぐって現在、競争が行われている」と言い、特定のブランドのために作られたクラブは多くの場合は企業ではなくファンによって作られていることを指摘する。たとえば、1万3000人のメンバーを持つ「SNKRS」クラブはナイキとは提携していないが、ナイキのSNKRSアプリについてのみ議論している。「もしもブランドがクラブを作りたいのであれば、ブランドに焦点に当てるのではなく、ブランド自身ではなく隣接した題目をクラブの中心に据えるべきだ。サステイナビリティを掲げるブランドであれば、サステナビリティについてクラブを作り、それについて話す賢い人々を連れて来るべきだ」。
「メッセージを伝えるのに最適な場所」
ミーガー氏によると、アプリ上でのファッションの存在感の大部分は、ブランドのファウンダーやエグゼクティブを通じて現れているという。彼らはこのアプリを使って個人的なイメージを構築し、ブランドに間接的なマーケティングを提供している。ミンコフ、グロンディン、アブローといった人々は、ファッション・トークやカルチャー・クラブのようなブランドとは関係のないさまざまなクラブにレギュラー出演している。
「(ブランドの)ファウンダーにとっては、ブランドのメッセージを共有できる絶好の場所だ」とカルヴァーリョ氏は言った。「トップショップ(Topshop)のCEOのようなあらゆる種類のファウンダーを抱えている。ユーザーに自分が何者かを知らせ、広告にならずにメッセージを伝えるのに最適な場所だ」と述べた。
[原文:Fashion is flourishing on クラブハウス by putting the focus on people versus brands]
DANNY PARISI(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)