仮想通貨はいま史上最大の下落を経験しており、ビットコインの過去3日間(6月19日〜21日)の73億ドル(約9946億円)におよぶ損失は2008年のリーマン・ショックと比較されてもいる。しかしファッション企業はオンとオフチャネル両方で仮想通貨を受け入れると発表しており、Web3通貨への意外な忠誠心が示されている。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy」の記事です。
仮想通貨はいま史上最大の下落を経験しており、ビットコインの過去3日間(6月19日〜21日)の73億ドル(約9946億円)におよぶ損失は2008年のリーマン・ショックと比較されてもいる。しかし、ファッション企業はオンラインとオフラインチャネル両方で仮想通貨を受け入れると発表しており、Web3通貨への意外な忠誠心が示されている。
仮想通貨での決済OKのアロヨガ
アロヨガ(Alo Yoga)は、6月21日、顧客のオンライン購入に対して仮想通貨での決済を受け入れると発表した。また、フルタイムとパートタイムの従業員に仮想通貨で給料を支払うことになる初のファッション企業でもあり、他社の一歩先を進んでいる。これにより、小売業者が給料の新しい支払い方法を模索する可能性が開かれる。Web3通貨への移行はファッションブランドに限られたものではない。ファーフェッチ(Farfetch)のようなラグジュアリー小売プラットフォームも自社の単独ブランドやマルチブランドのブティックで仮想通貨を受け入れるようになっている。仮想通貨の価値は現時点では史上最低であるが、仮想通貨に進出することでファッション業界は将来のリスクの可能性を軽減しようとしているのだろうか。
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「我々はいつも時代を先取りしていたい」と述べているのは、アロヨガの共同創設者兼CEO、ダニー・ハリス氏だ。「メタバースで活動することは我々にとってその第一歩であり、暗号決済に対応することはその動きをさらに進めるものだ。Web3への現実的な接続を導入することには、我々の顧客の多くが興味を持っている」。
アロヨガは、1月にロブロックス(Roblox)に瞑想とヨガの島、アロ・サンクチュアリ(Alo Sanctuary)をローンチしており、今回の動きはWeb3への現在の投資の延長上にあるものだ。ロブロックスとのこの提携の結果について、アロのバイスプレジデント兼マーケティンググローバル責任者であるエンジェリック・ベンデッテ氏は次のように述べている。「ローンチから3カ月で我々のメタバースへのユニークビジターは約4000万人に上った。また、ロブロックス上のアバターは約4800万個のデジタルファッションを着用している。仮想通貨への移行は、ロードマップを引き続き推進してweb3に注力し続けて行っていく」。
従業員への給料も仮想通貨で
また、仮想通貨による給料支払いというアロヨガのオプションは同社のフルタイム社員350人にも提供されるという。これがどう受け止められるかは不明だが、取引手数料がないため、市場が安定すれば興味深い選択肢になる可能性はある。
「これによって通常の仮想通貨の取引がもっと容易になり、また無利子と(社員への)さらなる報酬も促進される」とベンデッテ氏。「我々はこれを特典だと捉えている。社員は、給料の振込先を銀行口座か投資プラットフォームかWeb3のどこにするかを選ぶことができる」。
ファーフェッチの仮想通貨対応
ファーフェッチの場合、仮想通貨は顧客の新しい支払い方法であり、また同社のメタバース計画を強固にするための新しいステップになる。CEOのジョセ・ネヴェス氏によると、仮想通貨での決済処理をオンラインで提供している小売業者は多いが、店舗で堅実なPOSソリューションを提供している小売業者はほとんどないということだ。グッチ(Gucci)、オフホワイト(Off-White)、フィリップ・プレイン(Philipp Plein)などのラグジュアリーブランドは、通常の店舗で仮想通貨に対応する計画を発表している。
したがって、ファーフェッチの店舗での仮想通貨の追加にはPOSハードウェアも含まれている。「ファーフェッチは、グローバル仮想通貨プラットフォームのルヌ(Lunu)と提携して、店舗での取引用の洗練されたPOS端末やオンラインウィジェットなどのルヌのオムニチャネルソリューションを活用している」とネヴェス氏は言う。
さらに、ファーフェッチとルヌの提携は、ファーフェッチがあらゆる面において仮想通貨の処理に関与しなくてよいということを意味する。ルヌは、ファーフェッチに代わって顧客から仮想通貨を受け取り、それを法定通貨と交換してから法定通貨をファーフェッチに送金するのである。ネヴェス氏は「この提携を通じて、我々はラグジュアリー業界での仮想通貨の広範な導入に貢献できる」と述べている。
顧客の関心に沿った拡張
確かに、ラグジュアリー分野は移行の準備が整っているように見える。ラグジュアリー企業にとってはNFTのコレクターズアイテム領域への参入は容易であり、メタバース内で強力なブランドプレゼンスが持てる。だが、アロヨガをはじめブランドの中にはロブロックスのようなプラットフォームでも多くの顧客を獲得しているところもある。
ロブロックスでのアロヨガのローンチは、メタバースでアロヨガと積極的に関与したいと思い、またそうすることができる新しい客層を惹きつけた。「仮想通貨への動きは、我々のメタバースへの継続的な投資である。当ブランドの将来性を保証するだけではなく、顧客がいる場所で彼らに会うこともできる」とベンデッテ氏。「彼らは早期に参入した人々であり、自分たちのウェルネスの実践をWeb3へ取り入れて、アロヨガとともに総合的に活動することに関心があると言っている」。
また、アロヨガは、次のニューヨークファッションウィークの期間中にそのウェルネスパートナーとしてNFTのローンチを発表するという。
ファーフェッチの拡張も顧客の関心に従ったもので、ラグジュアリーとWeb3の継続的なつながりを示している。「新しい支払い方法への顧客の関心はさらに高まっており、ラグジュアリーの顧客ベースにとって仮想通貨の重要性は高まっている」とネヴェス氏は述べている。ファーフェッチはこの機能を、今後数カ月でまずファーフェッチのプライベート顧客に、そして2022年後半には米国、英国、ヨーロッパの全顧客に拡大し、その後他国にも拡大していく予定だ。
また、ファーフェッチは、2023年初頭に同社のプラットフォームソリューション企業向けサービスの一部として、ブランドパートナーらに仮想通貨決済機能を提供する予定である。現在このサービスを使用しているブランドには、英国の小売業者ハロッズ(Harrods)、バーバリー(Burberry)、シャネル(Chanel)、トム・ブラウン(Thom Browne)、ゼニア(Zegna)がある。トム・ブラウンは最近、メタ(Meta)がローンチしたデジタルファッションの一環としてローンチしたばかりだ。ファーフェッチは仮想通貨決済サービスの早期導入から得た所見を活用して、その専門知識を将来店舗でこのソリューションを提供しようと考えているファーフェッチのブティックやブランドコミュニティと共有するという。
[原文:Fashion continues to wade into crypto, in spite of crash]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)