ベルギーのファッションがいま、脚光を浴びている。
ベルギー人デザイナーのイゴール・ディエリック氏は、10月15日にフランスで開催された権威あるイエール国際モード・写真・アクセサリーフェスティバルにて、ホテルのユニフォームにインスパイアされた「イエッサー(Yessir)」コレクションで5つの賞のうち3つを受賞した。このフェスティバルは、デザイナーのアンソニー・ヴァカレロ氏、フェリペ・オリヴェイラ・バプティスタ氏、ジュリアン・ドッセーナ氏など、ファッション界の才能を発掘する場として発展してきた。
ディエリック氏は24歳と若いが、早くから頭角を現したベルギー人デザイナーは彼だけではない。ラフ・シモンズ氏やダイアン・フォン・ファステンバーグ氏のようなベルギー人デザイナーは、長い間業界から支持されてきたが、シモンズ氏は昨年、自身の名を冠したブランドを閉鎖し、プラダ(Prada)に専念している。ディエリック氏は2022年にアントワープ王立芸術アカデミーを卒業し、現在はエルメス(Hermès)のジュニアメンズウェアデザイナーとしてパリで働いている。
アントワープを拠点とするそのファッションスクールは、1990年代にベルギーのファッションデザインを牽引したことで知られる有名な「アントワープの6人」と呼ばれるデザイナーの育成に貢献した。その6人とは、アン・ドゥムルメステール氏、ドリス・ヴァン・ノッテン氏、ダーク・ビッケンバーグ氏、マリナ・イー氏、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク氏、ダーク・ヴァン・セーヌ氏である。それ以来、この学校は有望な若い才能を惹きつけてやまない。ディーゼル(Diesel)とYプロジェクト(Y Project)の現クリエイティブディレクターで、両ブランドの活性化に貢献したグレン・マーティンスもまた、アントワープ王立芸術アカデミーの出身である。
ベルギーのファッションがいま、脚光を浴びている。
ベルギー人デザイナーのイゴール・ディエリック氏は、10月15日にフランスで開催された権威あるイエール国際モード・写真・アクセサリーフェスティバルにて、ホテルのユニフォームにインスパイアされた「イエッサー(Yessir)」コレクションで5つの賞のうち3つを受賞した。このフェスティバルは、デザイナーのアンソニー・ヴァカレロ氏、フェリペ・オリヴェイラ・バプティスタ氏、ジュリアン・ドッセーナ氏など、ファッション界の才能を発掘する場として発展してきた。
ディエリック氏は24歳と若いが、早くから頭角を現したベルギー人デザイナーは彼だけではない。ラフ・シモンズ氏やダイアン・フォン・ファステンバーグ氏のようなベルギー人デザイナーは、長い間業界から支持されてきたが、シモンズ氏は昨年、自身の名を冠したブランドを閉鎖し、プラダ(Prada)に専念している。ディエリック氏は2022年にアントワープ王立芸術アカデミーを卒業し、現在はエルメス(Hermès)のジュニアメンズウェアデザイナーとしてパリで働いている。
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アントワープを拠点とするそのファッションスクールは、1990年代にベルギーのファッションデザインを牽引したことで知られる有名な「アントワープの6人」と呼ばれるデザイナーの育成に貢献した。その6人とは、アン・ドゥムルメステール氏、ドリス・ヴァン・ノッテン氏、ダーク・ビッケンバーグ氏、マリナ・イー氏、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク氏、ダーク・ヴァン・セーヌ氏である。それ以来、この学校は有望な若い才能を惹きつけてやまない。ディーゼル(Diesel)とYプロジェクト(Y Project)の現クリエイティブディレクターで、両ブランドの活性化に貢献したグレン・マーティンスもまた、アントワープ王立芸術アカデミーの出身である。
オーディエンスが変化し、ニッチなファッションが注目の的に
「ベルギー、とりわけアントワープは、歴史的にファッションの破壊とアヴァンギャルド主義のいい意味での温床だった」と、戦略コンサルタント会社フューチャーラボラトリー(he Future Laboratory)のシニアフォーサイトアナリスト、マルタ・インデカ氏は言う。「いま、私たちが目にしているのは、より広く一般大衆がそのことを意識していることだ。ディーゼルを率いるグレン・マーティンス氏の大きな成功や、ハイダー・アッカーマン氏に対するZ世代の熱狂も確かに貢献しているが、オーディエンス自身の変化という別の要因も作用している」。
インデカ氏によると、Z世代はインスタグラムやTikTok、Pinterestでファッションコンテンツを見るため、ファッションの歴史に関する知識は以前の世代に比べて百科事典的だという。そのため、よりニッチなブランドやファッションの中心地がそうした世代から注目されている。また、ソーシャルメディアによって盛り上がっているのは、東京とそのファッションシーン、そしてソウルである。ベルギーのアパレル市場の昨年の収益は100億6000万ドル(約1.5兆円)だった。エッセンシャルアントワープ(Essentiel Antwerp)やラグジュアリーバッグブランドのカアイ(Kaai)といったベルギーのブランドは、若い層の関心と購入が伸びており、積極的に米国に進出している。
高い認知度と時間をかけて成長するアプローチ
現在のベルギー人デザイナーの成功は、認知度は高いが、ロゴのないデザインとブランドを成長させるためのゆっくりとしたアプローチにも起因している。最近、ドリス・ヴァン・ノッテン氏は、経済が不安定な時代にはゆっくりと成長することが理想的だと語っている。ベルギーのファッションは長いあいだマキシマリズムなプリントと色彩、わかりやすく実用的なデザインに重点を置いてきた。
ベルギーのラグジュアリーバッグブランド、カアイの共同創業者であるイネ・ベルハートIne Verhaert氏は、「ベルギーのブランドは認知度が高いことで有名だ。ドリス・ヴァン・ノッテンを認識するのに、ロゴは必要ない」と話す。カアイの場合、角ばったフォルムを損なわないよう、バッグには小さなロゴしかない。
小売業のベテラン、イネ・ベルハート氏とヘルガ・メールスマンス氏がベルギーのアントワープで2018年に創業したカアイは、耐久性と機能性を求める女性の買い物客のためにデザインされた。そのバッグは女性のライフスタイルに合わせて多くの仕切りがあることで有名である。小売価格は95ドル(約1万4300円)から799ドル(約12万円)で、顧客の年齢層は20代から60代と幅広い。同ブランドはベルギー王室にも人気がある。今年初め、ベルギー王女がこのブランドを使用する姿が目撃された際、同ブランドの1カ月の売上は、年間予想売上の40%にまで伸びた。
着実に成長して米国進出を果たす
カアイは、ゆっくりと着実に成長を遂げてきた。同社はまず、15店舗を展開する地元ベルギー市場での成長に注力し、その後、ラグジュアリー卸売業者を通じてオランダ、フランス、ドイツに進出した。オランダでは、オンライン売上が今年3倍に伸びた。2020年にベルギーの投資家が参入するまで、当初は創業者たちによる自己資金で運営されていた。創業者たちは今のところ、米国でのブランドローンチを自己資金で賄っている。
カアイは10月に米国専用のeコマースサイトを開設した。それに先立ち、昨年ヨーロッパと米国で共有していたeコマースサイトで購入をした米国の消費者の高い関心に基づいて、ニューヨークにある高級店フライングソロ(Flying Solo)で米国での卸売りを開始した。同ブランドは全体の売上高を公表していないが、米国でのオンライン売上高は毎月4倍増となっている。
いまやファッションに国境は存在しない
ベルギーのデザインはファッション業界では大衆にアピールしており、米国進出を狙うブランドにはそれが有利に働いている。だが、その興味を維持するには独創性が必要だ。「アントワープの6人のおかげで、ベルギーのファッションは業界内ではつねに話題になっているが、結局のところ、どのデザイナーもみな異なるイメージとクリエイティブなスタイルを持っていた」と、エッセンシャルアントワープの共同創業者兼クリエイティブディレクターのインゲ・オンセア氏は言う。
エッセンシャルアントワープは、拡大を検討する以前からベルギーで20店舗を展開し、小売業として確固たる地位を築いていた。同ブランドは10月25日にニューヨークに米国1号店をオープンし、その特徴であるカラフルなデザインを米国に持ち込んだ。1999年のブランドローンチ以来、ヨーロッパとアジアで国際的な成長を遂げ、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)、ニーマンマーカス(Neiman Marcus)、リボルブ(Revolve)、ファーフェッチ(Farfetch)、アンソロポロジー(Anthropologie)などの卸売業者を活用してきた。顧客は25歳から45歳で、このブランドもまた米国でのローンチは自己資金で行っている。
エッセンシャルアントワープは、パンデミックの前にロンドンに店舗をオープンし、売上高が急増した際に大きな成長を遂げた。しかしパンデミックの最中、同社は小売店を合理化するために初心に帰った。「自分たちの流通システムをもっと厳選している」とオンセア氏は言う。「長期的に付き合いたい小売店を慎重に選び、その関係により多くの投資をしている」。
現在、エッセンシャルアントワープは小売店の3分の1を削減したにもかかわらず、2019年の数字である2023年の売上高5820万ユーロ(約93.6億円)に達する勢いだ。
「私たちはベルギーだけでなく、国際的なブランドを目指している」とオンセア氏。「いまでも国際的なデザイナーを求めている小売業者もいるが、もはや国境は存在しない。ソーシャルメディアによって、ベルギーファッションもイタリアファッションもなくなった。ひとつの大きなミックスなのだ」。
[原文:Fashion Briefing: Why the time is ripe for another Belgian fashion era]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)