ニューヨーク・ファッションウィーク(NYFW)が9月7日に開幕した。今シーズンは、サンクアセプト(Cinq à Sept)、ヘルムートラング(Helmut Lang)、プロエンザスクーラー(Proenza Schoule […]
ニューヨーク・ファッションウィーク(NYFW)が9月7日に開幕した。今シーズンは、サンクアセプト(Cinq à Sept)、ヘルムートラング(Helmut Lang)、プロエンザスクーラー(Proenza Schouler)、ティビ(Tibi)など多くの主力ブランドが登場する。だが、新しいブランドや歴史あるブランドもまた、それぞれがファッションウィークでデビューを果たしている。
ショーを活用しD2C販売の拡大を目指す
オハド・セローヤ氏とアビアド・クリン氏が5年前に創業したブランド、レトロフェット(Retrofête)は、9月11日に初のショーを開催。同ブランドは昨年12月にニューヨークのソーホーに初の実店舗をオープンしてからまだ1年も経っていないが、クリン氏にとって今回のショーは成長への次のステップとなる。
「これはブランドの5年という節目だ」とクリン氏はGlossyに語った。「ショーをやるという話は以前からしていたが、ついに思い切って大きく出る段階にきたと感じている」。
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レトロフェットは昨年、アクセサリーやハンドバッグといった新たなカテゴリーを増やすことにかなり力を入れており、その結果「大きく出る」準備が整った。今回初めて、モデルに頭からつま先までレトロフェットを着せて、完全なルックを披露することができる。
また今回のショーは、クリン氏によればD2C販売へのブランド全体の注力の一環として、専用のモバイルアプリの発表と同じ週に開催される。ショーの目的は、小売店のバイヤーやパートナーを惹きつけることではなく、顧客との直接的な関係を強化することだ。全コレクションは、ショー終了後すぐにそのアプリで予約注文が可能になる。
レトロフェットは、プランタン(Printemps)やセルフリッジ(Selfridges)のような大手百貨店や、特にブランドにとって2番目に大きな市場であるイタリアで取引を行うニューヨークの卸売りブランドとしてスタートした。だが、最大の市場である米国では、D2C販売の拡大に重点を置く。
初めてのショーを行う80年代創業のブランド
レトロフェットはNYFWで初のショーを行う新進ブランドだが、かたやウィメンズウェアブランドのジョヴァニ(Jovani)も9月8日の夜、40年にわたるビジネスにおいて初めてNYFWデビューを果たす。同ブランドは1980年代にジェイコブ・マスラヴィ氏が創業し、現在は彼の息子ソウル・マスラヴィ氏が運営しており、新たに焦点を当てたクチュールとプレタポルテの衣服のデビューにショーを活用する。
「長年いつもすべてのショーを見に行っていた」とソウル・マスラヴィ氏。「ショーが自分たち向きだと思ったことはなかったが、我々はクチュールとプレタポルテに力を入れ始めた。今、それがうまくいっており、自分たちにできることを人々に披露する時期がきたと感じている」。
マスラヴィ氏は、ヘイリー・カリル氏、カミール・コステック氏、ジェン・セルター氏のようなインフルエンサーをショーに招待する計画だと語った。みなソーシャルプラットフォームに何百万人ものフォロワーがいる人々だ。セルター氏だけでもインスタグラムに1400万人以上のフォロワーを抱えている。こうしたインフルエンサーは貴重な存在だ。昨シーズンのローンチメトリックス(Launchmetrics)は、NYFWを通してブランドが生み出した7億ドル(約1026億円)以上のアーンドメディアバリューのうち、21%をインフルエンサーが占めたと報じている。
「これはブランドの新たなクチュールのフェーズをスタートさせ、それに全力投球するという我々のやり方だ」とマスラヴィ氏は語る。「ショーは大きな出来事だが、それよりもショーの後に何をするかが重要だ。ソーシャルポストや優秀なPRチーム、インフルエンサーを通じて、ショーが我々にもたらす注目を最大限に活かそうと考えている」。
マスラヴィ氏は一参加者として、NYFWは年々、特にパンデミック後の数年間で変化していると語った。まず、観客層が変わった。かつてはファッションエディターやサックス・フィフス・アヴェニュー(Saks Fifth Avenue)のような小売店のバイヤーのためのイベントだったのが、いまでは主にインフルエンサーや消費者向けのツールになっているという。その上、以前はショーの数は少なかったが、観客数はかなり多く、ときには2000人から3000人が参加していたという。
巨大イベントから韓国の新進ブランドのショーまで
そうしたメガイベントは現在も行われている。9月9日にセントラルパークで予定されているマルコ・マルコ(Marco Marco)によるデザインをフィーチャーするドリームランド(Dreamland)のショーには、5000人以上のゲストが招待され、1回のファッションショーの最高出席者数というギネス世界記録を打ち立てようとしている。しかし最近ではニッチなブランドの小規模なショーが街のあちこちで開催されるようになっている。そうしたオープンなアプローチは、レトロフェットやマスラヴィのようなデビューを歓迎している。
また、米国、フランス、イタリアといった伝統的なファッションの中心地以外からの新進デザイナーの認知度も高まっている。9月12日にスプリングスタジオ(Spring Studios)で開催されるコンセプトコリア(Concept Korea)のショーでは、韓国の新進ブランド、ムーア(Mmam)、キミージェイ(Kimmy.J)、チャームズ(Charm’s)が初めてNYFWの観客に向けて披露される。これらのデザイナーにとってNYFWへの参加は、米国の顧客だけでなく、有名になる前に注目の新しいブランドを紹介したいと考えている小売業者に対しても自分たちのブランドをアピールする機会になるという、2つの意義がある。
チャームズのクリエイティブディレクターであるヨハン・カン氏は、翻訳者を介してGlossy宛のEメールで次のように述べている。「私たちはブランドのリニューアルとともにチャームズの10周年を記念しており、NYFWはグローバルな舞台で自分たちの競争力を示すチャンスだ。私たちの長期的な目標は、国際的なブランドとしての地位を確立すること、そして10年の歴史を通じて自分たちのアイデンティティを再構築することだ。今回のショーの焦点は、米国市場を皮切りに私たちの仕事を世界的に広めることである」。
[原文:Fashion Briefing: This season, NYFW is a launching — and relaunching — point for brands]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)