7月20日から8月20日までニュージーランドとオーストラリアで開催されている女子ワールドカップは、(この記事の執筆時点で)第1週を終えた。この大会は世界最大級の女子スポーツイベントであり、サッカーは世界でも圧倒的に人気のあるスポーツだ。女子ワールドカップのようなイベントのおかげで米国でのサッカー人気が高まっており、つねに人気のカルチャーに関与したがるファッションブランドはそれに乗じている。
2019年に優勝を果たし、女子サッカー界の現チャンピオンに君臨している米国女子代表チームだが、今大会では英国の新進気鋭のファッションデザイナー、マーティン・ローズ氏と提携。ドレイク氏やケンドリック・ラマー氏などセレブリティのファンも多いローズ氏は、襟元に選手のイニシャルが刺繍された濃いブルーのスーツに、カラフルなスニーカーとサングラスで構成された公式オフフィールドウェアをチームに着用させた。
米国女子サッカーのスター選手、ミーガン・ラピノー氏がマーティンローズコレクションを着用している画像は、大会開幕時にナイキ(Nike)がインスタグラムに投稿した際に14万件以上の「いいね!」を獲得している。
サッカーをテーマにしたサステナブルファッションブランド、エイブルメイド(Able Made)のCEO、スザンヌ・マッケンジー氏は、米国でサッカー人気が高まっている理由をこう語る。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy」の記事です。
7月20日から8月20日までニュージーランドとオーストラリアで開催されている女子ワールドカップは、(この記事の執筆時点で)第1週を終えた。この大会は世界最大級の女子スポーツイベントであり、サッカーは世界でも圧倒的に人気のあるスポーツだ。女子ワールドカップのようなイベントのおかげで米国でのサッカー人気が高まっており、つねに人気のカルチャーに関与したがるファッションブランドはそれに乗じている。
2019年に優勝を果たし、女子サッカー界の現チャンピオンに君臨している米国女子代表チームだが、今大会では英国の新進気鋭のファッションデザイナー、マーティン・ローズ氏と提携。ドレイク氏やケンドリック・ラマー氏などセレブリティのファンも多いローズ氏は、襟元に選手のイニシャルが刺繍された濃いブルーのスーツに、カラフルなスニーカーとサングラスで構成された公式オフフィールドウェアをチームに着用させた。
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米国女子サッカーのスター選手、ミーガン・ラピノー氏がマーティンローズコレクションを着用している画像は、大会開幕時にナイキ(Nike)がインスタグラムに投稿した際に14万件以上の「いいね!」を獲得している。
サッカー人気が高まる米国
サッカーをテーマにしたサステナブルファッションブランド、エイブルメイド(Able Made)のCEO、スザンヌ・マッケンジー氏は、米国でサッカー人気が高まっているのは、女子ワールドカップのような大規模なイベントのほか、クリスチャン・プリシッチ氏やマット・ターナー氏といった米国人選手がヨーロッパの主要なサッカーリーグで活躍するようになったことや、伝説的な選手リオネル・メッシ氏が米国のサッカーリーグMLSでプレーするようになるなど、この1年間に起きたさまざまなことが要因だと述べた。
「私たちが(2013年に)活動を始めた頃からすると、米国でのサッカーの人気は大きく変化している」とマッケンジー氏は言う。2022年にエイブルメイドは、プーマ(Puma)やそのほかのブランドとのコレクションを含むコラボレーション中心のモデルから、プレタポルテファッションを中心にリニューアルした。マッケンジー氏は、夫でセミプロのサッカーコーチだった故ユーカル・マッケンジー氏を称えて、2009年にボストンを拠点とする若者向けの非営利サッカーアカデミー、ユーカルマッケンジー ブレイカウェイ ファウンデーション(Ucal McKenzie Breakaway Foundation)を設立して以来、サッカーに携わってきた。
7月末、エイブルメイドは英国のラグジュアリーブランド、バーバリー(Burberry)とのコラボレーションを発表、バーバリーの生地をサッカーウェアにアップサイクルすることを明らかにした。同ブランドは今年、コネチカット州に初の常設店舗をオープンしたほか、ブルックリンやコロンバス・サークルにあるマンハッタンのザ・ショップス(The Shops)でのポップアップでも引き続き存在感を示している。4月にはサッカーをテーマにした初のプレタポルテコレクションを発売し、1日で完売した。マッケンジー氏によると、2022年はブランドにとって収益面でこれまでで最高の年だった。女子ワールドカップのようなサッカーのビッグイベントは売り上げに目に見える影響を与えるという。
1972年から2004年のあいだに、サッカーが好きなスポーツだと答えた米国人の数は0.5%からわずか2%に上昇しているが、その数は2022年までに大幅に増加し、人口の10%近くにまで達している。
ファッションに浸透するサッカーの影響
アディダスはサッカーチームや選手の最大のスポンサーであり、リオネル・メッシ氏のようなスーパースター選手や、世界でもっとも価値のあるサッカーチームであるマンチェスターシティと提携している。女子ワールドカップでは、米国代表のアレッシア・ルッソ選手、レナ・オーバードルフ選手、メアリー・ファウラー選手、男子サッカー界のレジェンドであるデビッド・ベッカム選手やリオネル・メッシ選手、そしてジェナ・オルテガ氏のようなサッカー好きのセレブリティを起用した広告キャンペーンを展開した。ローンチメトリックス(Launchmetrics)のデータによると、このキャンペーンは280万ドル(約4億円)のメディアインパクト価値を生み出し、オルテガ氏をフィーチャーした投稿は78万2000ドル(約1.1億円)相当のメディアインパクト価値となっている。
米国女子代表といえば、アディダス(Adidas)北米プレジデントのルパート・キャンベル氏は、同社が女子サッカーのスター選手であるクロエ・リケッツ氏とミア・ブータ氏と契約を結んだと発表した。
キャンベル氏によると、サッカーウェアの影響はカジュアルウェアやストリートウェアのファッションにも浸透しており、アディダスもそれを認識してアディダス オリジナルズ(Adidas Originals)のコレクションに取り組んでいるという。最近のアディダス サンバ(Adidas Samba)のブームを見てもわかるように、室内用サッカーシューズがルーツのシューズは、オリビア・ロドリゴ氏などのセレブリティが履いているおかげで売り切れの常連となっている。
サンバは昨年、もっともホットな製品のリストインデックス(Lyst Index)でトップに輝き、グレース・ウェールズ・ボナー氏やロニー・フィーグ氏のようなファッションデザイナーがクラシックなサッカーシューズに独自のアレンジを加えたことで、この2年間で需要が10倍に高まったといわれている。ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)のクリエイティブディレクターであるファレル・ウィリアムス氏でさえ、アディダスとコラボレーションして、この夏の終わりにサンバを発売する予定だ。
「スポーツに力を入れるだけでなく、ファッションやスタイルと組み合わせてより多くの消費者やオーディエンスにリーチできるような、新しくエキサイティングなルックを作り出している」とキャンベル氏は述べた。
スポーツとファッションのあいだには多くのクロスオーバーがある
マサチューセッツ州を拠点とするフットウェアブランド、ヘイデュード(Heydude)も女子ワールドカップに乗じているブランドである。7月19日、同ブランドは米国女子代表選手のジュリー・アーツ氏をブランドアンバサダーに起用したと発表した。同時に、アーツ氏とのコラボレーションによる新コレクションを発表、同社のeコマースサイトにアーツ氏のお気に入りの製品11点を掲載する「ジュリー・アーツのスターティング11」という新しいセクションを追加している。
「女性や女子サッカーにはいま、大きな勢いがある」とヘイデュードのCMOケリー・マッカスカー氏は述べた。「女子サッカーと全米女子サッカーリーグの成長とともに、サッカーがより大きな声と広がりをみせていることを喜ばしく思っている」。
7月初め、史上最高のサッカー選手のひとりとして多くの人から注目されているリオネル・メッシ氏が記者会見を開き、新たに結成された米国のサッカーチーム、インテル・マイアミ(Inter Miami)に加入すると発表した。メッシ氏は史上もっとも人気のある選手のひとりであり、その発表を受けてインテル・マイアミの半年分のグッズが1日で完売した。10月まで入手できない彼のジャージは、すでに数カ月待ちの状態だ。アディダスもまた7月23日にメッシ・イン・マイアミ関連グッズのコレクションを発表している。
マッケンジー氏は、メッシ氏のニュースによるハロー効果や、さらにはイングランドのサッカーチームを率いるアメリカンフットボールのコーチを描いたドラマ『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく(原題:Ted Lasso)』の人気も、彼女のブランドの成長を後押ししていると語った。エイブルメイドは今年初めに120万ドル(約1.7億円)の資金調達ラウンドを終え、ナイキなどの投資家とともに数百万ドルのシリーズAラウンドを完了している最中である。
「スポーツとファッションのあいだには非常に多くのクロスオーバーがあり、サッカーはその大きな部分を占めている」とマッケンジー氏は言う。「レブロン(Lebron)は(英国のクラブチーム)リバプールの一部オーナーだし、(NBA選手の)ヤニス(アデトクンボ氏)とケヴィン・デュラント氏はどちらもチームを所有している。みなスタイリッシュで影響力のある男性だ。両者のクロスオーバーとサポートは常に拡大している」。
[原文:Fashion Briefing: The Women’s World Cup is drawing fashion brands to soccer]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)