ファッションブランドにとって、米国とEUにおける持続可能性関連の法律の影響はもはや遠い未来の概念ではない。
9月14日、出来高制の労働の廃止、労働者の権利向上、ニアショアリングを求めるファブリック法(Fabric Act)が議会に再提出された。また、9月17日から24日まで開催されるクライメートウィークNYC(Climate Week NYC)の一環として、9月19日にはファッション政策に関するパネルディスカッションが開催され、ファッションと気候についての会話が行われる予定だ。また、ニューヨークファッションウィークでは、コリーナ・ストラーダ氏やタナー・フレッチャー氏ら30人以上のデザイナーが自分のコレクションで持続可能性にフォーカスした。
米国とEUの法改正により、持続可能性はもはや「あれば好ましい」ものではなく、法的拘束力のある指令を遵守するために不可欠なものとなっている。
「(ブランドのあいだでは)コンプライアンスへの注力が進むだろう」と述べているのは、エバーレーン(Everlane)のサステナビリティ担当ディレクター、カティナ・ブティス氏だ。「特に、可決された欧州の法案のいくつかに対してそれが起こっているのをすでに目にしている。カリフォルニア州の気候変動関連開示法についても同じだ。国別にせよ、全体にせよ、かなり厳格な報告要件が求められている」。
さらに、ブティス氏は「報告要件、そして特に定量化された炭素測定や企業のデューデリジェンス、アップストリームのバリューチェーンの透明性などのデータと指標に関する保証の必要性により、さらに専門的な人々から構成されるチームの責任が拡大するだろう」と付け加えた。
つまり、米国とEUにおける新しい規制への認識と遵守が求められており、これは、米国とEUで販売するすべてのブランドにとってまもなくさらに重要な焦点となるだろう。
ファッションブランドにとって、米国とEUにおける持続可能性関連の法律の影響はもはや遠い未来の概念ではない。
9月14日、出来高制の労働の廃止、労働者の権利向上、ニアショアリングを求めるファブリック法(Fabric Act)が議会に再提出された。また、9月17日から24日まで開催されるクライメートウィークNYC(Climate Week NYC)の一環として、9月19日にはファッション政策に関するパネルディスカッションが開催され、ファッションと気候についての会話が行われる予定だ。また、ニューヨークファッションウィークでは、コリーナ・ストラーダ氏やタナー・フレッチャー氏ら30人以上のデザイナーが自分のコレクションで持続可能性にフォーカスした。
米国とEUの法改正により、持続可能性はもはや「あれば好ましい」ものではなく、法的拘束力のある指令を遵守するために不可欠なものとなっている。
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「(ブランドのあいだでは)コンプライアンスへの注力が進むだろう」と述べているのは、エバーレーン(Everlane)のサステナビリティ担当ディレクター、カティナ・ブティス氏だ。「特に、可決された欧州の法案のいくつかに対してそれが起こっているのをすでに目にしている。カリフォルニア州の気候変動関連開示法についても同じだ。国別にせよ、全体にせよ、かなり厳格な報告要件が求められている」。
さらに、ブティス氏は「報告要件、そして特に定量化された炭素測定や企業のデューデリジェンス、アップストリームのバリューチェーンの透明性などのデータと指標に関する保証の必要性により、さらに専門的な人々から構成されるチームの責任が拡大するだろう」と付け加えた。
つまり、米国とEUにおける新しい規制への認識と遵守が求められており、これは、米国とEUで販売するすべてのブランドにとってまもなくさらに重要な焦点となるだろう。
米国の法律の焦点は、炭素の排出と労働者の権利
米国で提案されている持続可能性関連の法案のなかには、9月14日に議会に再提出されたファブリック法(Fabric Act)がある。同法には、米国へのオンショアリングを増やし、出来高制労働などの悪慣行を排除する目的がある。この法案は、法案作成に関与したエバーレーンやマラ・ホフマン(Mara Hoffman)をはじめ200のブランドから支持されている。
「約3年間、法規制への取り組みが大幅に増加しており、毎週多くのブランドが加わっている」と述べているのは、マラ・ホフマンのサステナビリティ・製品・ビジネス戦略担当バイスプレジデント、ダナ・デイビスだ。「大手ファストファッションブランドの一部からは抵抗があると思われるが、どうなるか興味がある」。
「我々はポリシーの策定に関与しているため、報告段階や調査・理解の段階において(ブランドにとって)技術的に何が困難になるかがわかる。また、そのコンプライアンスを実現するためにどのような財務投資が必要になるかについて意見を述べることもできる」とブティス氏。米国では、ブランドはボトムアップのアプローチでロビー活動を行い、法案の制定の方向付けをして、達成しやすい結果をもたらすことができる。
だが、だからといってコンプライアンス遵守が容易になるわけではない。「現時点では、すべてを100%遵守できると自信を持って言える人はいないだろう」とブティス氏は言う。
カリフォルニア州では、9月11日、カリフォルニア州で事業を行う収益10億ドル(約1478億円)以上の大企業に対し、2027年までにスコープ3排出量の開示を義務付ける法案SB263が可決された。スコープ3排出量とは、サプライチェーンと消費者製品使用の過程において排出される量である。これは、炭素排出量の開示についての既存のファッション法と、カリフォルニア州の労働者の権利に関する法案SB62に加えて制定されるもので、今後5年間においてファッション業界に影響を与えることになる。
「(ニューヨーク州都の)オールバニでは、議員たちにこの法案を支持して、署名して、同意してもらおうと尽力している。つまり、教育を行っている」とデイビス氏。「ファッション業界の規模と影響に関して大きな隔たりがある。議員たちはファッションというのはきらびやかで華やかなものだと依然考えており、農業にいたるまで関与している産業についてのことだとはあまり理解されていない」。
業界に影響を与える米国の政策について助言する責任を負うアメリカン・アパレル・フットウェア協会(The American Apparel & Footwear Association)も、グリーンマーケティング主張に関する規則をめぐって連邦取引委員会(Federal Trade Commission)と協議している。グリーンウォッシングの指令は、2023年4月のEUの「グリーンクレーム(環境主張)」案でEUではすでに議論されており、企業は10日以内に自社製品についてのグリーンクレームを証明すべきで、それができなければ「効果的で、相応の、抑止力のある」罰金が科せられることになる。
その結果、一部のブランドはコンプライアンスに注力することになるが、これは既存のサステナビリティチームを危うくし、新規プロセスへの移行に時間を無駄にする可能性がある。環境影響ソリューションを検証する組織のアパレル・インパクト・インスティテュート(Apparel Impact Institute)の最高影響責任者、カート・キプカ氏は「これは『どちらか一方』ではなく、『両方』の会話であるべきだ」と述べている。このインスティテュートには、ユニクロを所有するファーストリテイリング(Fast Retailing)、シーイン(Shein)、ターゲット(Target)、ナイキ(Nike)などの44のブランドパートナーがいる。「コンプライアンスのために有意義な進歩を犠牲にすることはできない。コンプライアンスへの移行によって、実現できうる実際の進歩を奪うことになるだろう」。
EUの焦点は、グリーンウォッシング、デジタルパスポート、サプライチェーン責任
ヨーロッパでは、法の施行はもっと早く行われている。
廃棄物防止および循環経済法政令第2022-748号(
The Anti-waste and Circular Economy Law, Decree No. 2022-748)は、2022年4月に提案され、2023年1月に発効した。これにより、フランスで販売するブランドと小売業者には、環境への影響に関する詳細な情報を消費者に提供することが義務付けられている。売上高が5000万ユーロ(5300万ドル、約78億円)以上の企業、またはフランス市場で毎年2万5000点の製品を販売する企業は直ちに遵守する必要がある。これは2025年までには中小企業にも適用される予定だ。
EUで販売しているエバーレーンはEUの法律への準拠にすでに取り組んでいる 「変革と進歩の最前線に立とうとしている企業は、EUで進んでいる大規模な立法措置ゆえに、EUで今何が起きているかについて注目している」とブティス氏は語っている。
ラベルメーカーのエイブリィ・デニソン(Avery Dennison)で持続可能性・コンプライアンス・コア製品ライン管理を統括するデビー・シェイクスピア氏は、「フランスで販売している企業は、とにかく規制への準備をしなければならない。フランスの規制のほうが先に始まるからだ」と述べる。
フランスは、消費者製品を製造するブランドに対する法律と厳しい罰則の適用において主導的な立場にある。また、より幅広いEUの義務に先駆け、EUの持続可能性とグリーンウォッシングの法規制も先導している。今後5年間で、トレーサビリティを提供するプロダクトパスポートと廃棄物に関する拡大生産者責任の指令は特に大手ファストファッションブランドに大きな打撃を与えると思われる。
リード・スミス(Reed Smith)のパートナーで、競争・欧州法部門の共同責任者であるナターシャ・ターディフ氏は、「重大な影響について予想するのはまだ時期尚早だが、規制が避けられないのは間違いない。廃棄物の発生に関して、報告に慣れていない企業やわずかなデータしか報告していない企業にとっては、報告義務によりコストが新たに生じる可能性がある」と述べている。
米国でもEUでも鍵となるのは、正確なデータ収集
ブランドは間もなくデータを提供する以外の選択肢がなくなるため、ブランドとデータプラットフォームの間に新しいパートナーシップが多く生まれている。アメリカン・アパレル・フットウェア協会の持続可能性ディレクター、チェルシー・マーサ氏は、「データの正確性への期待事項と時間をかけて改善すべき方法について、多くの議論を行っている」と述べた。
マラ・ホフマンは自社メーカーとサプライチェーンのデータを一元化するために、データプラットフォーム、リトレイスト(Retraced)のパイロットプログラムを5カ月前に開始した。このプラットフォームはAIを使ってデータ処理時間を短縮するものだ。以来、このプロジェクトは長期的なパートナーシップへと変化している。
「実に長いあいだ、サプライチェーンに至るまでデータを収集している」とデイビス氏。「サプライチェーンを理解することは必ずしも課題ではないが、これは大手ブランドにとっては困難だろう。情報を取得してシステムに取り込むための処理能力を社内に確保することが重要だ」。これは、数人だけで構成されたサステナビリティチームを持つ小規模なブランドにとっては依然課題となるだろう。
だが、これは、大手ブランド、特に詳細な情報開示に慣れていないブランドにも影響を及ぼすと思われる。キプカ氏は次のように述べている。「ほとんどの大手ブランドには対応すべきデータにまだギャップが存在する。これは、特に製造のホットスポットに注目した場合、アパレル・テキスタイル業界のサプライチェーンがいかに複雑で不透明であるかを示すものだ」。
多くのブランドにとって、コンプライアンスとデータ収集に関する問題はサプライチェーンのもっともアクセスしにくい領域から発生する。キプカ氏は、「最大の影響を及ぼすのは、またはその可能性があるのは裁断工場やサプライチェーンの末端ではない。それはサプライチェーンのずっと奥にある。多くの場合、ブランドがサプライチェーンのその層を把握していない可能性がある」と述べた。
[原文:Fashion Briefing: Brands contend with compliance and data as legislation becomes reality]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)