Google Glass(グーグルグラス)は、2012年のダイアン・フォン・ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)のランウェイで近未来的なアクセサリーとして派手に登場したことが、多くのファッションファンの記憶に残っている。だが、ファッションは次世代のスマートグラスを即座に却下すべきではない。なぜならマルチモーダルAIがスマートグラスを次のレベルに引き上げようとしているからだ。
9月27日、Meta(メタ)は複合現実ヘッドセットのQuest3(クエスト3)と同時に、AIアシスタントを組み込んだレイバン(Ray-Ban)のMetaスマートグラスを発表した。このスタイルは、レイバンを所有するエシロールルックスオティカ(EssilorLuxottica)との提携で作られたものだ。その数日前の9月20日には、Amazonがイタリアのアイウェア大手サフィロ(Safilo)とそのアイウェアブランドであるカレラ(Carrera)と提携したファッション性の高いエコーフレーム(Echo Frames)を発表している。どちらも現在はプレオーダーが可能で、エコーフレームは10月に発売される予定だ。
ブランドが体験へと移行する中、期待されるコンテンツの機会
Metaのスマートグラスは、ハンズフリーで画像や動画を撮影したり、音楽を再生したり、Bluetoothを使って電話をかけたりすることができる。通話機能はMeta Viewと呼ばれている。Metaの前モデルと比較すると、今回のスマートグラスは動画の画質が向上、インスタグラムとFacebookのライブストリーミングのオプションがさらに進化しており、バッテリーとスピーカーも改良されている。
「コンテンツのチャンスは非常にエキサイティングであり、特にCovid後においてブランドはより多くの体験を望む方向へと移行している。(ブランドはこれまで以上に)経験に基づいたイベントや旅行、製品やサービスに関する没入型のAR体験を行うようになっている」とインフルエンサーエージェンシーのビリオンダラーボーイ(Billion Dollar Boy)のプレジデント、パーメル・ドイル氏は話す。同エージェンシーは、2022年の夏にMetaとの提携でローンチしたレイバン初のスマートグラス、レイバンストーリーズ(Ray-Ban Stories)のインフルエンサーキャンペーンに起用されている。
ビリオンダラーボーイによると、ストーリーズのローンチには、スマートグラス向けの記録的な量の独占コンテンツが備わっていた。だが、Metaは、販売開始から7カ月間で30万個という目標の3分の1しか達成できなかったと報じられている。
Google Glass(グーグルグラス)は、2012年のダイアン・フォン・ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)のランウェイで近未来的なアクセサリーとして派手に登場したことが、多くのファッションファンの記憶に残っている。だが、ファッションは次世代のスマートグラスを即座に却下すべきではない。なぜならマルチモーダルAIがスマートグラスを次のレベルに引き上げようとしているからだ。
9月27日、Meta(メタ)は複合現実ヘッドセットのQuest3(クエスト3)と同時に、AIアシスタントを組み込んだレイバン(Ray-Ban)のMetaスマートグラスを発表した。このスタイルは、レイバンを所有するエシロールルックスオティカ(EssilorLuxottica)との提携で作られたものだ。その数日前の9月20日には、Amazonがイタリアのアイウェア大手サフィロ(Safilo)とそのアイウェアブランドであるカレラ(Carrera)と提携したファッション性の高いエコーフレーム(Echo Frames)を発表している。どちらも現在はプレオーダーが可能で、エコーフレームは10月に発売される予定だ。
ブランドが体験へと移行する中、期待されるコンテンツの機会
Metaのスマートグラスは、ハンズフリーで画像や動画を撮影したり、音楽を再生したり、Bluetoothを使って電話をかけたりすることができる。通話機能はMeta Viewと呼ばれている。Metaの前モデルと比較すると、今回のスマートグラスは動画の画質が向上、インスタグラムとFacebookのライブストリーミングのオプションがさらに進化しており、バッテリーとスピーカーも改良されている。
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「コンテンツのチャンスは非常にエキサイティングであり、特にCovid後においてブランドはより多くの体験を望む方向へと移行している。(ブランドはこれまで以上に)経験に基づいたイベントや旅行、製品やサービスに関する没入型のAR体験を行うようになっている」とインフルエンサーエージェンシーのビリオンダラーボーイ(Billion Dollar Boy)のプレジデント、パーメル・ドイル氏は話す。同エージェンシーは、2022年の夏にMetaとの提携でローンチしたレイバン初のスマートグラス、レイバンストーリーズ(Ray-Ban Stories)のインフルエンサーキャンペーンに起用されている。
ビリオンダラーボーイによると、ストーリーズのローンチには、スマートグラス向けの記録的な量の独占コンテンツが備わっていた。だが、Metaは、販売開始から7カ月間で30万個という目標の3分の1しか達成できなかったと報じられている。
ターゲットはクリエイター
AIアシスタントの統合がアップグレードされたとしても、レイバンのMetaのスマートグラスの販売数がそれ以上になるかどうかは不明だ。この新技術により、ユーザーは写真の編集やテキストの翻訳、レイヤー化された物理的・デジタル的環境との関与ができるようになる。カメラとストリーミングの統合で、クリエイターがこのスマートグラスのターゲットとなっているのは明らかだ。Tube Girl(地下鉄の女の子)ことサブリナ・バースーン氏のようなTikTok向きのインフルエンサーにとって、このスマートグラスは、たとえばファッションショーにフォロワーを連れて行くといった機会を提供する。間違いなくクリエイターやインフルエンサーは、スマートグラスを売ろうという以前の試みよりも、製品を効果的に宣伝できる立場にある。2022年にはケンダル・ジェンナー氏がインスタグラムでストーリーズのスタイルを宣伝するためにレイバンに起用されている。
「ブランドにとっては、これらのスマートグラスを利用して完全な体験を見せ、よりインタラクティブにするチャンスだ」とドイル氏は述べた。「我々はファッションウィークにかなりの数のインフルエンサーを送り込んでいるため、インフルエンサーが生の体験を記録することに可能性を感じている」。
Metaは空間コンピューティングに本格的に着手
Metaの今回のローンチは、消費者向けAIチャットボットと大規模言語モデルのLlama 2(ラマ2)の導入に続く、マルチモーダルAIにフォーカスした同社の最新の動きである。Llama 2は複数の種類のデータを処理し、理解し、答えを生成することができる人工知能の一種である。
アドバイザリー会社ジャーニー(Journey)のチーフフューチャリスト、キャシー・ハックル氏は「来年マルチモーダルに向かうことで、Metaは空間コンピューティングに本格的に着手することになる」と述べた。「これは、こうしたデバイスが身の回りの世界を目にして理解し、調和することができる地点であり、MetaのQuest3がすでにやっていることだ」。
レイバンのMetaスマートグラスにはカメラが統合されているため、装着するとAIは周囲を3Dスキャンし、周辺や場所を理解することができる。ブランドは顧客を理解し、顧客はよりパーソナライズされた体験を得るという新たな可能性を切り拓く。「ロケーションスキャンを使って、ブランドは場所を見て、顧客が(たとえば)店の近くにいるときにプロモーションやパーソナライズされたレコメンデーションを提供できる。あるいは、スタイリングのアドバイスも与えられる」とドイル氏は言う。
ファッションブランドのコラボでスマートグラスの着用性は増す
ほかのイテレーションと同様に、AI機能がこの次世代スマートグラスの最大のセールスポイントのようだが、ファッションのデザインの影響力がこの分野で牽引力を得ている。Amazonにとって、エコーフレームの最新アップデートは、カレラとのパートナーシップに加え、新たなオーディオの進化、アレクサ(Alexa)のアシスタンスへの新しいアクセシビリティ、バッテリー寿命の延長にも力を入れている。カレラを所有するサフィロは、トミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)、エトロ(Etro)、ケイト・スペード(Kate Spade)、スチュアート・ワイツマン(Stuart Weitzman)のアイウェアライセンスも保有している。
Amazonのスマートアイウェア部門のディレクターであるジーン・ワン氏は、スタイルとバッテリー寿命に関する初期の顧客からのフィードバックを指摘し、次のように述べた。「人々は(このスマートグラスを)一日中使い続けたいと思っている。特に重要な瞬間に、人々はスマートグラスによって自分たちが世界の一部であると感じ、必ずしも世界をブロックしているわけではないと思いたがっている」。
Amazonのスマートグラスユーザーに関するデータによると、過去1年間で、エコーフレームを使用した人は平均して、Metaのストーリーズの結果を上回り、より多く使用している。Amazonは、販売されたスマートグラスの数については言及を避けた。ワン氏によれば、もっと多くの有名ファッションブランドがスタイルでコラボレーションすれば、AIスマートグラスの着用性は増すという。
「人々が心地よさを感じると同時に、テクノロジーによって力を与えられたと感じることが重要だ」とワン氏。「機能や特徴を追加することを検討する際に大切なのは、社会的受容性、快適さ、そして見た目だけでなく、その製品が行うことのために(そのスタイルを)人々に着用してもらうという高い水準を確実に維持していくことだ」。
視聴覚障害者に包括的な機会を提供
ファッションブランドにとって、自社製品を便利なAIツールと統合するには、パートナーシップが必要となることが多い。サフィロと協力して、Amazonはスマートグラスの技術、最初のデザインアイデア、必要な流通サービスを提供した。一方、サフィロは既存のスタイルを活用してデザインを完成させ、生産を担当し、物理的およびデジタルでの流通の拡大を支援した。
「ファッションメゾンが(スマートグラスの)分野で活躍するのを引き続き目にすることになるだろう。ブランドはすでに長いあいだ、この分野で活躍しているが、裏方的な役割だった」とハックル氏は言う。「やがては携帯電話や時計、バーキン(Birkin)のバッグのように、自分について何かを物語るような、誰もが身につけたくなるデバイスになるだろう」。
スマートグラスはまた、聴覚や視覚に障害を持つ人々との明確なコミュニケーションを可能にする、より包括的な機会をブランドに提供する。たとえば、スマートグラスのデザインのおかげで、補聴器をつけたままでもアレクサを使って音楽を聴いたり、買い物をしたりすることが簡単にできる。オーディオコマースは企業にとって成長分野だが、いまのところ、Amazonがアレクサに統合したのはアイテムの再注文に限られている。
この技術が発展すれば、AmazonはマルチモーダルAI用の光学技術をスマートグラスに統合し、周囲の認識や環境の分析、Amazonを利用した店舗での購入の促進が可能になる。特に当てはまるのが、1月にAmazonファッションが従来の眼鏡のARショッピングでスナップ(Snap)と提携したことだ。だが、スナップはこの発表からわずか半年後にAR企業向けサービスを終了した。
ブランドがスマートグラスに関して理解すべきことは
とはいえ、ブランドのチャンスはハードウェアがすべてではない。「ファッションブランドは、Metaのようなハードウェアプロバイダーと提携することだけに注力すべきではない」とハックル氏は言う。「またブランドは、消費者や着用者、特に若いZ世代やアルファ世代がコンテンツをどのように消費し、これらの新しいデバイスを介してどのように世界と関わるかという意味で、(スマートグラスに関して)どういった行動を取るのかを理解し始めるべきだ」。
テクノロジーがより容易に利用できるようになるにつれ、ファッション業界はますますデータに注力するようになり、顧客を獲得し理解する上でのデータの重要性に着目するようになっている。環境スキャンやAIに関しては、まだプライバシーへの配慮が必要だが、新たなデータ収集の機会はありそうだ。新しいスマートグラスの波は、新たなコンテンツや商品の機会を提供すると同時に、顧客をよりよく理解するための動きを示す可能性がある。
「どのブランドにとっても、バーチャルか物理的かを問わず、顧客の行動やコンピュータと人間との相互作用の初期段階を理解することは、データ収集のやり方にもよるが、消費者とそのウェアラブルの利用がどのように発展していくかについて、近い将来に大量のデータを与えてくれるだろう」とハックル氏は言う。そして現時点で言えるのは、インターネットやeコマースの初期段階を鑑みるに、多くのブランドは先行者利益の重要性を知っているということだ。
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)