アディダス(Adidas)、ナイキ(Nike)、ニューバランス(New Balance)、ディオール(Dior)、リーボック(Reebok)、フェンディ(Fendi)、パンガイア(Pangaia)など、フットウェアとファッションの最大手ブランドは、昨年、3Dプリントによる限定版シューズをローンチした。また、2013年の時点からこのアイデアを試している企業もある。だが、各ブランドは全面的なサプライチェーンの導入に取り組むというよりは、限定コレクションに留まっており、いまだこのテクノロジーの規模拡大にはいたっていない。とはいえ、商業規模での生産に取り組む新たな企業のおかげで、その状況が変わろうとしている。
「靴業界は、複雑なハンドメイド関連の最後の砦」と話すのは、ビボベアフット(Vivobarefoot)のデザインディレクター兼共同創業者で、7代目の靴職人であるアッシャー・クラーク氏だ。ビボベアフットは現在、デザインカスタマイゼーションプラットフォームと3Dプリントシューズスタイルによる次世代フットウェア・ソリューションを開発中で、どちらも来年ローンチする。
「過去1年半で、フットウェアの3Dプリンティングに対する認知度は大きく高まっている」と、B2Bの3Dプリンティング企業ハイロス(Hilos)の共同創業者兼CEO、イライアス・ストール氏は言う。「3Dプリントされた靴を目にすることが増え、一部はパリ・ファッション・ウィークのランウェイにも登場した。欠けているのは、実際に商業的に実行可能な量へと拡大する人たちだ」。ディオール、キッズスーパー(KidSuper)、レインズ(Rains)、ボッター(Botter)など、多くのブランドがパリ・ファッション・ウィークで3Dプリントのシューズを披露している。
3Dプリンティングのつくり方とは?
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy」の記事です。
アディダス(Adidas)、ナイキ(Nike)、ニューバランス(New Balance)、ディオール(Dior)、リーボック(Reebok)、フェンディ(Fendi)、パンガイア(Pangaia)など、フットウェアとファッションの最大手ブランドは、昨年、3Dプリントによる限定版シューズをローンチした。また、2013年の時点からこのアイデアを試している企業もある。だが、各ブランドは全面的なサプライチェーンの導入に取り組むというよりは、限定コレクションに留まっており、いまだこのテクノロジーの規模拡大にはいたっていない。とはいえ、商業規模での生産に取り組む新たな企業のおかげで、その状況が変わろうとしている。
「靴業界は、複雑なハンドメイド関連の最後の砦」と話すのは、ビボベアフット(Vivobarefoot)のデザインディレクター兼共同創業者で、7代目の靴職人であるアッシャー・クラーク氏だ。ビボベアフットは現在、デザインカスタマイゼーションプラットフォームと3Dプリントシューズスタイルによる次世代フットウェア・ソリューションを開発中で、どちらも来年ローンチする。
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「過去1年半で、フットウェアの3Dプリンティングに対する認知度は大きく高まっている」と、B2Bの3Dプリンティング企業ハイロス(Hilos)の共同創業者兼CEO、イライアス・ストール氏は言う。「3Dプリントされた靴を目にすることが増え、一部はパリ・ファッション・ウィークのランウェイにも登場した。欠けているのは、実際に商業的に実行可能な量へと拡大する人たちだ」。ディオール、キッズスーパー(KidSuper)、レインズ(Rains)、ボッター(Botter)など、多くのブランドがパリ・ファッション・ウィークで3Dプリントのシューズを披露している。
無駄を削減する3Dプリンティング
3Dプリンティングは、一足一足の靴をオンデマンドで製造するか、あるいは少なくとも製造数を減らすことができるため、無駄を省きたいブランドからの関心を集めている。このプロセスでは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)やポリウレタンのような素材を使用し、デジタル3Dデザインに沿ってTPUやポリウレタンの細い線を3Dプリンターから絞り出す。通常、スニーカーやフットウェアは鋳型を使って作られている。3Dルックのイージーフォームランナー(Yeezy Foam Runners)でさえもそのひとつで、最終的なソールとアッパーを作るために発泡材を鋳型に注入している。
鋳型は廃棄物も出す。3Dプリンティングでは、アイテムが形成されると機械は停止し、余分なものは出ない。「ブランドは鋳型を作るために25万ドル(約3536万円)も投資しなければならない。どれだけの製品が売れるかわからないし、変更がきかない」と、ストール氏は言う。「小規模のラグジュアリーブランドやファッションブランドは、販売数が多くない傾向がある。600種類のデザインがあっても、ひとつのデザインにつき数千足しか売れないかもしれない。鋳型はそうしたブランドにとって本当に制約になっている」。
「(そのようなパラメーターの)枠から飛び出してすばやくイテレーションを行うだけでなく、合成テクスチャーや素材の外観を開発し、各製品のデザイン言語全体を30日以内に作り上げる能力をブランドに提供できるとすれば、非常に説得力のあるものになる」とストール氏。ポートランドを拠点とするハイロスは、現在、3Dプリンティングの商業化に向けてスポーツやアウトドアのマスブランドと提携している。
革の代替品と同様に、現在の3Dプリンティング素材はバイオベースではないが、3Dデザイン機能を長期的に考えるブランドによってバイオ樹脂が検討されている。だがTPUやポリウレタンは、いったん使い古したものを溶かしたり、他のアイテムにダウンサイクルしたりすることが可能だ。
3Dデザインに必要なのはコスト競争力
調査会社テックナビオ(Technavio)によると、3Dプリントフットウェア市場は、2022年から2027年にかけて年平均成長率19.7%で成長すると推定されており、市場規模はその間に19.7億ドル(約2784億円)に達すると予想されている。フットウェア業界は、3Dプリンティングが解決しうる大きな廃棄物問題を抱えている。調査会社スタティスタ(Statista)によれば、毎年230億足の靴が製造され、220億足が埋立地に捨てられているという。
3Dプリントフットウェアのスタートアップ、ゼラーフェルド(Zellerfeld)は、2月に靴の3Dプリンティングプラットフォームを立ち上げた。4月にはパンガイアと共同で「アブソリュートスニーカー(Absolute Sneaker)」を発表、2色展開でそれぞれ250ドル(約3万5000円)で限定発売している。このスタートアップは、B2Bモデルを通じてオンデマンドで靴を製造し、ブランドが独自の3Dプリンティングのスタイルを作るのを支援している。各シューズは、スマートフォンで撮影した3Dスキャンを使って、履く人の足に合わせてカスタマイズできる。また、7月にはモンクレール(Moncler)と提携し、同ブランドのコミュニティメンバーだけが購入できる限定スニーカーをローンチした。
他の企業やブランドも、バーチャル試着、正確な足のサイズ測定、無駄のない生産を可能にするという点で、3Dプリンティングに似た技術やソリューションをテストしている。ハイロスは最近、長年のナイキのエグゼクティブからの資金提供を含む500万ドル(約7億円)の投資ラウンドを発表した。同社はまた、ナイキのデザイナーを雇い、3Dプリンティングの活用で可能なデザインと機能のレベルを紹介している。
「結局のところ、3Dデザインにはコスト競争力がなければならない」とストール氏。「ブランドや小売業者にとって経済的に合理的でなければ、大規模に採用されることはないだろう。しかしブランドは過剰に生産し、売上を逃している。店舗に行ったり、オンラインに行ったりしても、欲しい色やサイズの在庫がないことがよくあるからだ」。3Dプリントされたスタイルが店内でオンデマンドで提供されるようになれば、買い物客は求めているものを確実に手に入れられるようになる。
「現在行われている方法によってインセンティブを与える構造全体がある。私がデザイナーやマーチャンダイザーなら、セルスルーや清算に基づく純収益は気にせず、売上総利益率を気にする」。
新たなフットウェア・サプライチェーン・モデルの始まりか?
一部のブランドにとって、3Dプリンティングは、完全に没入できる、テクノロジーを駆使した新しいフットウェア体験を創造するためのスタートにすぎない。「現在、靴は時間がかかるアナログで複雑な海外のサプライチェーンで作られていて、非常に工業的だ。だがそれはいまだに無駄の多いプロセスであり、すべての靴が同じようにフィットする」とクラーク氏は言う。「フロントエンドとバックエンドにおけるサプライチェーンと製造の複雑さだけでなく、製造前の環境廃棄物コストも膨大だ」。
3Dプリントのソールと3Dニットのアッパーを備えたビボベアフットのシューズ、バイオーム(Biome)は、2024年夏に発売される予定だ。2024年5月の試験段階終了後の価格は335ドル(約4万7360円)。同社のビボバイオーム(Vivobiome)というテクノロジープラットフォームでは、写真遠隔測定技術を使い、顧客は携帯電話のカメラで自分の足の正確なモデルを作成できる。また、靴をデザインしてARで試着することも可能だ。
同社は、シューズのライフサイクル全体でコネクテッド体験を可能にするため、9つの異なるパートナーと提携している。3Dでデザインされプリントされた靴の申し込みから、予約注文、配送、製品寿命終了時の分解まで、すべての要素がアプリを介してつながっている。それぞれの靴は、ブロックチェーンでバックアップされたデジタルツインを持つことになる。同社は2024年までに、3Dプリンティングとニッティングの全業務をヨーロッパで完全にニアショアリングする計画も進めている。現在、3Dニッティングの一部のコンポーネントは中国で行われており、3Dプリンティングはすでにヨーロッパで実施されている。
ビボベアフットの2023年の売上高は、昨年の6500万ドル(約91.9億円)から9100万ドル(約128.6億円)になると予測されている。同社は、カナダ、英国、日本など世界各国で、卸売りパートナーや直営店を通じて販売するグローバルな小売事業を展開している。主要な市場はヨーロッパ、オーストラリア、日本だ。
また、ビボバイオームアプリは、コンテンツへの参加や、「ポケモンGO」のような宝探し型のゲームで報酬がもらえるなど、ユーザーが購入後も関与できるようになっている。「約3週間前から稼動しているが、主にソーシャルメディアとビボベアフットの顧客コミュニティを通じて全世界で1万8000人近い登録があった。当社のコミュニティの3分の1が登録している」とクラーク氏は述べた。ゲーミフィケーション、3Dプリンティング、ブロックチェーン、オーダーメイドといった革新的なコンセプトを活用することで、クラーク氏はフットウェア業界の未来を創造したいと考えている。
[原文:Fashion Briefing: 3D printing is coming for footwear design and manufacturing]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)