[ DIGIDAY+ 限定記事 ]アトリビューションは長年にわたり、ブランド勢のなかでもとりわけ、マーケティングミックスを本格的に展開するところを悩ませています。さまざまな方法が存在する、アトリビューション分析。最近、ますます人気なのが「フラクショナルアトリビューション(fractional attribution)」です。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]アトリビューションは長年にわたり、ブランド勢のなかでもとりわけ、マーケティングミックスを本格的に展開するところを悩ませています。さまざまな方法が存在する、アトリビューション分析。最近、ますます人気なのが「フラクショナルアトリビューション(fractional attribution)」です。
広告支出の多様化を図り、FacebookとGoogle以外にも投資しているいわゆるD2Cブランドの場合はとくに、マーケティング費配分を決める際、ラストクリックといった従来のクリックベースの代わりに、フラクショナルアトリビューションモデルを利用する傾向が高いのです。
ただ、フラクショナルモデルの採用は簡単な話ではなく、Googleアナリティクスに登録するのとはわけが違います。同モデルを使用するには、自社の典型的顧客の購入に至るまでの動きと、新たなマーケティングモデル導入時に必要となるテストの適正な実施法を正確に把握している必要があるのです。
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──まず、フラクショナルアトリビューションとは?
たとえば、ある女性が結婚式用にドレスを買おうと思っています。彼女は2人の友人からそれぞれ別の機会に勧められたとあるドレスに決めたとしましょう。友人1からは数週間前にそれを勧められたが、それほど親しい間柄でもなく、ファッションセンスもいまひとつ信用できない。ところが別の日に、センス抜群だと思っている友人2からも同じドレスを勧められ、彼女は早速そのブランドのウェブサイトに行き、購入ボタンを押す。
この場合、購入に直接与えた影響力は、どちらが大きいと言えるでしょう。ドレスを最初に勧めた友人1か? それとも購入者がより「信用できる情報源」 と見なす友人2か? その答えを探し出すのがフラクショナルアトリビューションの役割です。
基本的に、フラクショナルアトリビューションの場合は、消費者に購入を最終的に決意させたことに対する「評価」のさまざまな形を比較するため、異なるマーケティングチャンネルを必要とします。
「ユーザーがある広告をまずFacebookで見て、次にGoogleでクーポンを探し、最終的にクーポンサイトからコンバージョンに至った場合、どのチャンネルがもっとも重要なのか、という話だ」と、D2Cペットフードブランド、オリー(Ollie)のグロース部門トップ、エヴァン・ウッズ氏はeメールで回答しました。「ラストタッチアトリビューションはそのクーポンサイトだというだろうが、クーポンをすでに使ったことがある人ならば誰しも、クーポンサイトを訪れるときには購入態勢に入っていると、D2Cマーケターは言うかもしれない――そうでなければ、わざわざクーポンを探す理由はないだろう、と」。
──以前にも聞いたことのあるような。でも、呼び名が違うのでは?
フラクショナルアトリビューションは実際、マルチタッチアトリビューションのもっとも一般的な形態です。両名称を区別せずに使うマーケターもいます。両者の目指すところがほぼ同じであり、ひとつではなく、複数のマーケティングチャンネルの評価を目的としているからです。ただし、フラクショナルアトリビューションと、ほかのアトリビューションモデルとの決定的違いは、前者の場合、すべてのマーケティングチャンネルが同等の価値を持つわけではない、という大前提に基づいている点にあるのです。
──フラクショナルアトリビューションをすぐにでも使うべき?
規格外青果物の定期購入サービス企業インパーフェクト・プロデュース(Imperfect Produce)のグロース部門トップ、ジェレミー・グレウィッツ氏によれば、フラクショナルアトリビューションモデル導入時期の判断の拠り所にできる完璧な物差しはないといいます。ですが、氏は同時に、もしも広告に年間100万ドル(約1億円)以上費やしているのであれば、そろそろGoogleアナリティクスに内蔵のアトリビューションモデル以外の何かを使ってもいいかもしれない、とも言い添えます。アトリビューションソフトウェアを販売するベンダーに頼ってもよいし、インハウスで独自のフラクショナルモデルを構築するのもひとつの手だと言っていました。
──独自のモデルを作ってみたいのですが、そのためには何が必要?
グレウィッツ氏、ウッズ氏ともに、独自のフラクショナルアトリビューションモデルを構築したいのであれば、カスタマージャーニーを確実に抑えておく必要があると指摘します。たとえば、社サイトの訪問またはメーリングリストへの登録から購入に至るまでの平均的時間は? Facebookにおける広告を見てからの時間はどうなっている? などです。
フラクショナルアトリビューションモデルをインハウスで構築したい企業にはまた、クリック数を測定できない従来/オフラインのメディアチャンネルの効果測定法を複数有していることも必要となります。グレウィッツ氏は、次のような例を挙げています――カスタムプロモコード、バニティURL(例:「初めて注文する方はimperfectproduce.com/tvまで」)、購入者に自社を知った経緯を訊ねる事後調査、TVまたはポッドキャストでCMが流れた正確な時間を把握している場合は、ウェブサイトのスパイクアクセスを確認など。
これに、FacebookやGoogleといった、ほかのデジタルマーケティングチャンネルからのクリック数トラッキングを併用すれば、購入に至るまでの道のりにおいて、どのチャンネルがもっとも重要な働きをしたのか、より正確な把握が可能となるでしょう。
最後になりましたが、無論、相応の資金も欠かせません。これは企業にもよりますが、フラクショナルモデルを構築する時間的余裕のあるデータサイエンティストとマーケターをいずれも引き入れる必要が出てくることは、十分に考えられます。
──うちのチームは、すでに納得の行く、フラクショナルアトリビューションモデルを構築したのですが、これでもう安心?
Pinterest(ピンタレスト)やSnapchat(スナップチャット)をもっと評価すべきかどうか知るために、既存のアトリビューションモデルでくり返し分析する必要があると感じているD2Cブランドがいる一方、グレウィッツ氏は「実は、メディアのテスト法について真剣に考えるほうが、完璧なアトリビューションモデルを開発するよりも得策だ」と断言します。多額のマーケティング費を注ぎ込むだけの価値があると見込んでいる新規マーケティングチャンネルをテストする際には、まず、何を検証したいのかを社内で具体的かつ明確にしておくことが重要と、氏は指摘します。そこがどんなチャンネルなのか、いくら投資したいのか、テスト期間中に期待する収益はいくらなのか。投資額を増やすことでテスト期間中以上の収益が望めるか否かを知るには、これが欠かせないといいます。
「[大規模な]実験と小規模な実験にはメリットとデメリットがついて回る。リスクが小さければ、当然手にできるものも小さい」と、グレウィッツ氏は語っていました。
Anna Hensel(原文 / 訳:SI Japan)