「社内エージェンシー」を設けた、信用調査会社の実績:テレビCMからゴミ箱のラッピング広告まで

ダブリンの信用調査会社エクスペリアン(Experian)は2年前に、社外のクリエイティブエージェンシーなしでもやっていけるように、インハウスエージェンシーの「クーラー(The Cooler)」を立ち上げた。

クーラーは15人の社員から構成され、エクスペリアン全体のブランディングとPRのためのストーリーテリングと戦略、コンテンツ作成を使命としている。クーラーはカリフォルニア州コスタメサにあるエクスペリアンの本社が運営している。その業務は広告のアイデアを生み出し、形にすることだ。広告の分野はテレビ放送からデジタル、ソーシャル、モバイル、体験型のイベント、アプリ、ゴミ箱のラッピング広告に至るまで多岐にわたる。以前、同社はIPGのエージェンシーであるマーティン(Martin)などと提携していた。

だが、クリエイティブの分野は、メディアバイイングよりもインハウスがやりやすい面も多い。エクスペリアンはインハウスでのメディアバイイングは行っていないし、その予定もないという。実際、同社のメディアを担当しているのは、ダラスを拠点とするキャメロット(Camelot)と、ニューヨークを拠点とするブラックウッド・セブン(Blackwood Seven)となっている。

クーラーの最高クリエイティブ責任者を務めるトッド・ミラー氏は、「指定広告代理店(AOR)が大手クライアントに対してできる業務のほとんどを自社で行っている」と語る。ミラー氏はJWTやTBWAといった歴史あるエージェンシーで最高クリエイティブ責任者を務めた経歴の持ち主だ。同氏は「一般的には、インハウスエージェンシーは本社に付随して業務を行うものだ。だが、クーラーは、ATLもBTLも、それ以外の業務もこなしている。このようなインハウスエージェンシーは少ないだろう」と語る。

「クライアント」と呼ぶ理由

トッド氏は、エクスペリアンの各部門をクーラーの「クライアント」と呼ぶ。それはクーラーのメンバーに、社外のエージェンシーのように考えて業務を行ってほしいからだという。たとえば、PR部門がソーシャルメディアへの投稿をリクエストした場合、PR部門は「クライアント」になり、クーラーはプロジェクトに関する説明を受けるといった具合だ。

過去2年間、クーラーはエクスペリアンと歩調を合わせて消費者に重点を置くとともに、クライアントのデータ管理を行い、クライアントからの信頼醸成に努めてきた。これまでクーラーはオリンピックやマーチ・マッドネス、NFLの試合といった高視聴率スポーツイベントのテレビ放送やデジタルコンテンツ、ラジオコンテンツなどでID保護に関するキャンペーンを行ってきた。さらに、9月には、カスタマーの財政的な情報を分析するウェブサイト、ファイナンシャル・プロファイル(Financial Profile)を立ち上げている。ここでは無料で信用記録などを見ることができ、貸し手側が起業や個人的に金銭的な決断を行うときに役立つサービスとなっている。このウェブサイト用の放送枠が9月に作られ、キャンペーンの最初の1週間では新規閲覧者のうち47%がアカウントを作成するにいたった。

「商品の構想と開発に一から携われるため、マーケティングと商品開発プロセス全体で協調して取り組める」と、ミラー氏は語る。「これは社外のエージェンシーで、割り当てられた業務をこなしていては不可能だ」。

クーラーのチーム体制

従来型の広告エージェンシーと同様、クーラーが取り組むプロジェクトの数は毎週変動する。ミラー氏によると、同時にこなすプロジェクトの数は2から10ほどだという。クリエイティブに関しては、大手の従来型の広告エージェンシーを雇っている。これで幅広い経験を得られるためだ。放送に関するニーズはとりわけ大きく、クーラーが重視している分野でもある。

社外のエージェンシーと異なり、クーラーは複数チームに分かれているわけではない。ミラー氏はこれについて次のように述べている。「テレビでもデジタルでも、分野を問わず全員で取り組んでいる。これはチームが150人ほどの規模になれば難しくなるかもしれない。70のクリエイティブをひとつの部屋でやりくりするのは難しいだろうからね」。

テレビ広告からソーシャルまで、すべてをこなせるインハウスエージェンシーが作れるほどのリソースと人材がある会社ばかりではない。なかでも障害となるのが人材だ。エクスペリアンですら、大きなプロジェクトではフリーランサーに協力を求めている。ファイナンシャル・プロファイルの立ち上げと関連キャンペーンにおいて、同社はナイキ(Nike)やコカ・コーラ(Coca-Cola)などの企業の国際的なCMを監督した経歴を持つ、映画監督のターセム・シン氏を起用した。

人材確保の問題解消

それでもインハウスのクリエイティブエージェンシーを維持するのは容易ではない。やはり人材が問題なのだ。沿岸部の都市以外に拠点を置く企業は、必要な人材の確保により難儀する傾向があり、古いタイプの動きが遅い人事部のままの企業も存在する。どれくらいの社員がいれば効果的にインハウスで物事を進められるのか、という疑問を抱えている企業は多い。米DIGIDAYが5月に行った調査によると、インハウスでのメディアバイイングに関し、73%のマーケターが必要な人材の雇用が非常に大きな障害になっていると回答している。エクスペリアンは、海沿いにあるコスタメサは社員にとって魅力的で、問題とはなっていないとしている。

広告コストコンサルタント企業のMBCサービシズ(MBC Services)の創設者でありマネージングディレクターを務めるミシェル・ブラッドリー氏は次のように指摘する。「仕事量に関していえば、できる確信がある量をこなすべきだ。そしてどの種類の業務をインハウスでこなし、どの種類の業務をアウトソーシングするかを決め、価値ある投資をしてクリエイティブの質を高く維持することが大切だ」。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:SI Japan)