衣料品レンタル市場 、2020年に再編の兆し

2019年、実店舗を運営する複数の小売業者が、衣料品のレンタルサービスを試験運用すると発表した。そして現在、2020年の大きな問題は、このうち何社が生き残れるかということだ。

アメリカンイーグル(American Eagle)、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)、バナナリパブリック(Banana Republic)の3社は、衣料品レンタルの管理運営を一括で請け負うカースル(Caastle)と提携し、レンタル事業の実験を行うと発表した。5月には、アーバンアウトフィッターズ(Urban Outfitters, Inc.)が「ニューリー(Nuuly)」という自社操業のレンタル事業を発表している。この事業で1年以内に5万人超の有料会員を獲得し、年商5000万ドル(約53億円)を達成できるとしている。さらに、10月にはH&Mが、スウェーデンの店舗を改装し、ヘアサロンその他の美容サービスに加え、衣料品レンタルを行うテストスペースとして展開すると表明した。

これら新規のレンタルサービスの大半は月額定額制を採用している。そこには、実店舗を運営する小売業者にとって、継続的に利益をもたらす収入源になればよいという期待があり、そのような収入源は、ショッピングのオンライン化が進む今日、ことさらに魅力的なのだ。レンタルサービスの顧客が、気に入った商品を後から購入することもあるだろう。

だが、安定的な収入源は易々と手に入るものではない。レンタルは物流的に複雑な事業で、適切な商品を適切な顧客に、適切なタイミングで届けることはもとより、レンタルした商品をクリーニングに出して、次の顧客に貸し出す必要上、レンタル中の商品を期限通りに必ず返却してもらう必要もある。さらに、レンタル事業者は新規顧客の獲得に取り組むだけでなく、取引先の小売業者のリテンションにも注力しなければならない。多くの小売業者が、いまや時価総額10億ドル(約1080億円)というレント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway)の成功に意を強くする一方、月額制の衣料品レンタルサービスが儲かる事業であることを証明し、株式を公開した事業者はいまだひとつもない。

「問題は、[レンタルの]価値は何か、何を提供するものなのかということだ」と、フォレスター(Forrester)のアナリストで小売業界の分析を担当するスチャリタ・コダリ氏は指摘する。「普段着のレンタルで事業が成り立つものなのか、いまひとつ分からない」。

新しいレンタルビジネス

歴史的に、ファッションレンタルと言えば、ハイスクールの卒業記念パーティや結婚式など、人生一度の特別なシーンで着用するような、しかも即金で買うには高額すぎる衣服を扱うものだ。これはレント・ザ・ランウェイの中心的な価値提案でもあり、同社の事業はデザイナーズブランドの衣料品レンタルからスタートした。

しかし、2019年スタートした衣料品のレンタルサービスの多くは比較的安価な商品を扱っており、それは、借りるより買うほうが理に適っているのではないかという疑問を提起する。たとえば、アーバンアウトフィッターズのニューリーは月額88ドル(約9500円)で6点のアイテムを利用できるのだが、レンタル商品には400ドル(約4万3100円)のセーターといった高級品がある一方で、50ドル(約5400円)程度のトップスも置いている。

カースルのクリスティン・ハンシッカー最高経営責任者(CEO)は、米DIGIDAY兄弟サイトのモダンリテール(Modern Retail)が行った前回の取材で、「いまどきの消費者は、最新のファッションを試すなら、即金で買うより借りるほうがコスパがよいため、ワードローブの一部はレンタルでまかないたいと考える」と述べている。現在、カースルは14種類のレンタルプログラムを実施しており、そのうち8種類は今年立ち上げたプログラムで、多くはまだ試験運用の段階だ。たとえば、アメリカンイーグルは、前回の取材で、カースルと組んで12カ月間のテストを実施すると話していた。なお、同社はこの2月、独自のレンタルサービス「AEスタイルドロップ(American Eagle Style Drop)」の立ち上げを発表した。

ハンシッカー氏は、編集部に宛てたメールで、試験運用を延長した顧客の数を明かさなかったが、カースルが管理するレンタルサービスの有料会員のうち、平均で50%がブランドにとって新規の顧客である点を指摘し、こう言い添えた。「これはもっとも重要なことだが、定額制のレンタル事業は開始1年目から十分な利益を出しており、販管費を含めた各ブランドの営業利益は20%を超える」。

「不断の努力」と「不測の事態」

しかし、レンタル事業で利益を出しているブランドでさえ、質の高いサービスを維持するには不断の努力が要求される。

「考えてみれば、レンタルというのは100%の返品にほかならない」と、フルフィルメントサービスのスタートアップ、メイソンハブ(MasonHub)のドニー・サラザール最高経営責任者(CEO)は指摘する。「たとえば、顧客がある商品を2週間後にレンタルしたいとする。その商品を物理的に保有しているとしても、在庫のなかから必要な商品を必要な顧客に割り当てるには、どんなシステムを構築すればよいのだろうか。それはとんでもなく複雑な在庫割り当てモデルだし、たいへんな技術力を必要とする」。

実際、アーバンアウトフィッターズのニューリーは、自社操業の倉庫とフルフィルメントセンターをフィラデルフィアに建設し、水洗いとドライクリーニングのサービス、さらにはクラウドベースの在庫管理および倉庫管理サービスを自前で用意しなければならなかった。加えて、独自のレンタルシステムを軌道に乗せるため、データサイエンティストを雇ってレコメンデーションエンジンまで自社開発した。

レンタルサービスが商品を期限通りに顧客の手元に届けることができなければ、それは破滅的な結果を招きかねない。9月のこと、レント・ザ・ランウェイは注文の受付を一時停止せざるをえない状況に陥ったが、同社のジェニファー・ハイマン最高経営責任者(CEO)は、当時顧客に宛てたメールの文面で、ニュージャージーの倉庫のソフトウェアをアップデートしたところ、「不測の事態」が生じたため、と説明している。

この一件が起きてからまだ日が浅く、レント・ザ・ランウェイの事業に与える長期的な影響についてはまだ何とも言えない。モダンリテールは、匿名化したクレジットカードデータを分析するセカンドメジャー(Second Measure)から、9月に起きた倉庫の一件以降の、レント・ザ・ランウェイの顧客数と売上の推移に関するデータを入手した。このデータは、同社の成長の鈍化を示している。

具体的には、セカンドメジャーのデータを見る限り、レント・ザ・ランウェイの10月の売上と顧客の総数は、9月の数字と比べてほんの1%伸びたにすぎない。しかし、11月の顧客数は10月と比べて6%増、売上は7%増だった(レント・ザ・ランウェイはセカンドメジャーのデータについて、コメントを差し控えた)。

レンタル専業なら「勝ち目」も

レンタル商品を返却できる場所を増やせば、物流上の負担をいくらか軽減できる。レント・ザ・ランウェイもノードストロム(Nordstrom)と提携して、すでにこの試みを開始している。これにより、顧客はレント・ザ・ランウェイでレンタルした商品を、ノードストロムの一部店舗で返却できるようになった。すでに多数の実店舗を運営する小売業者にとっても、レンタル事業のコスパを改善する手立てとなるかもしれない。

それでも、ブランド側ではどうにもできない理由で、注文品が期日通りに届けられないこともある。配送業者が納期を守れないケースから、レント・ザ・ランウェイが経験したソフトウェアの不具合まで、考えうるすべてのシナリオに備えるのは困難だ。

「既存の小売業者がレンタル事業に参入する場合は、技術的あるいは物流上の難しい課題に直面するだろう」と、サラザール氏は指摘する。「だが、はじめからレンタル事業として出発するなら、優位に立てる」。

Anna Hensel(原文 / 訳:英じゅんこ)