コンシューマープラットフォームのエムシーはメタバースの拡張の一環として、インフルエンサー・クリエーターのための物理的なメタバースハブとなるエムシースタジオを設置するという。今年後半に、面積120万平方フィート(約11万平方メートル)のスタジオがロサンゼルスのダウンタウンにオープンする。
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コンシューマープラットフォームのエムシー(Emcee)はメタバースの拡張の一環として、インフルエンサー・クリエーターのための物理的なメタバースハブとなるエムシースタジオ(Emcee Studio)を設置するという。今年後半に、面積120万平方フィート(約11万平方メートル)のスタジオがロサンゼルスのダウンタウンにオープンする。
メタバースにつながる物理的スペースでアフィリエイト業界を革新
物理的なハブにメタバースの全要素を含めることはできるのだろうか。物理的なメタバースハブを制作するというのは矛盾しているように聞こえるかもしれないが、将来のデパートの可能性を提示してくれるものと考えてみよう。店舗やコラボレーションのコンテンツのハブは、デジタルの世界にリンクしているトークン投票権を通じてクリエイターが管理する。エムシースタジオはこの新しい物理的コンセプトでこの分野をリードすることを狙っている。
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2021年7月にローンチしたエムシーは、インフルエンサーがブランドから最大25%のコミッションを受け取れるようにする統合化され自動化されたデジタルプラットフォームを提供し、アフィリエイト業界に「革命」をもたらすことを目指している。クリエイターは物理的な空間であるエムシースタジオでエムシーとコラボレーションしている。昨年末の時点で、3000人のクリエイターと800のブランドが同社のウェイティングリストにあり、100人のクリエイターと100を超えるブランドが承認済みである。物理的なロケーションは、ロサンゼルスのダウンタウンのブロードウェイシアター地区にある、西海岸で最大のデパートだったハンバーガーズ・デパート(Hamburger’s Department Store)の建物になる。この建物の提示価格は4億2500万ドル(約489億円)であると2020年11月に報告されているが、最終的な売却額は開示されていない。エムシープラットフォームの支援者には、著名なデベロッパーで投資家の元WeWorkのジョエル・シュライバー氏がいる。
物理的スペースで協働しトークンを獲得
エムシースタジオの最初の計画は、最上階と屋上をペントハウスのリビングエリアやレジャーエリア、社交クラブなどから成るキャンパスにして、インフルエンサーたちがプロジェクトで協働できるスペースにするという。インフルエンサーのコミュニティの拡大にともない、建物の各フロアの機能は、今後数カ月以内に発売されるエムシーコイン($EMC)を通じてコミュニティが決定することになる。クリエイターらはエムシープラットフォームへの忠誠心の報酬として、エムシー店頭での販売の収益としてコインかトークンを受け取ることになる。
承認済みの「エムシーズ」、つまりインフルエンサーたちは、エムシープラットフォームを通じてオーディエンスに向けてオンライン店舗をキュレートすることができる。また、ブランドは、クリエイターとつながり、アフィリエイトレートを選び、エムシーの注文処理システムに依存することで、このプラットフォームを利用している。シモネット(Simonett)、Lisa Says Gah(リサ・セッズ・ガー)、ドニー(DONNI.)、ジ・アライバルス(The Arrivals)、チルハウス(Chillhouse)などさまざまなカテゴリーやニッチにおよぶ100人以上のインフルエンサー(エムシーズ)と100のブランドがプラットフォームに参加している。エムシーのビジネス開発ディレクターであるインフルエンサーのアリッサ・コスカレリ氏が参加できるインフルエンサーを決定する。つまり、インフルエンサー主導のメタバーススペースを作るために、ユニークな情報通のZ世代コミュニティをまとめ上げることになる。
コスカレリ氏は、このアイデアは、アフィリエイトプラットフォームの競合他社からエムシーを差別化して際立たせるものだと述べている。「アフィリエイトの収益スペースはまだゲーム化されていない。我々は、インフルエンサーに販売のたびにポイントを獲得するというインセンティブを提供する。店舗に商品を追加するたびにコインが得られる。インフルエンサーは売り上げのベンチマークを達成し、何らかの方法でこの素晴らしい仮装空間に還元できるものを獲得できるようになる」。コインは、アバター作成、$EMCコインによるソーシャルコマースのゲーム化、エムシーシティ(Emcee City)のローンチなど5部門から成る計画の一環だ。エムシーシティは2023年にローンチが予定されている。これは、IRLとデジタル環境を橋渡ししするフル機能を備えた没入型の世界として、社会的なインタラクションや商取引、エンターテイメントを再定義することを目指している。エムシートークンは、インフルエンサーやユーザー、ブランドなど全関係者が通貨として使うことになる。
コミュニティが決定する物理的スペースの利用法
「何か違うことをしたいと思っている」と述べているのは、エムシーの創設者兼CEOのジョン・アガヤン氏だ。「(コミュニティの意見を聞かずに)すべてを開発して、コミュニティにそれを楽しんでもらおうとは思っていない」。そうする代わりに、まず最上階と屋上を開発し、その後ほかの部分の利用方法を決める際にエムシートークンを通じた投票システムによってコミュニティが関与するようになる。複数のフロアは、ソーシャルメディアのプロモーションやライブストリーミング用のレコーディングスタジオや、物理的なスペースとエムシーシティのデジタルコンポーネントを組み合わせた体験型ポップアップの専用スペースとして使われる可能性がある。
建物の利用方法についてはまだ多くが未定であるが、ブランドがエムシーコインを使って物理的スペースも借りることができるのは判明している。物理的スペースはエムシーシティのメタバース仮想プラットフォームにリンクされて、そこではインフルエンサーやブランド、ユーザーがコインを獲得し、エムシースタジオとエムシーシティの機能をともに決定できるようになる。「この仮想世界で活動していないブランドが小売スペースに参入することはおそらくないだろう」とアガヤン氏。仮想世界で獲得したコインはバーチャルでもリアルでも通貨として機能することになる。
ブランドパートナーは、エムシーのオンラインスペースでリアルタイムの販売や自動化ペイアウト、在庫価格管理、コミュニケーションや顧客データなどの直接販売の一般的なメリットをすべて享受できるようになるという。
[原文:Exclusive: Creator platform Emcee announces physical metaverse hub in LA]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)