スキンケア・ボディ・フレグランスのブランド、ヘッケルズ(Haeckels)はサステナビリティでも知られるイギリスのカルト的ブランド。同社は2月9日、エスティ・ローダー・カンパニーズから投資を受けることを発表した。これにより、ヘッケルズは新たにローンチしたスキンケアラインを拡張することが可能になる。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
スキンケア・ボディ・フレグランスのヘッケルズ(Haeckels)は、サステナビリティの取り組みや海藻を使った製品で知られるイギリスのカルト的なブランドである。同社は、2月9日、エスティ・ローダー・カンパニーズ(以下、ELC)から投資を受けることを発表した。
投資額は未公開であるが、これによりヘッケルズは新たにローンチしたスキンケアラインを拡張することが可能になる。需要に対応するため製造を拡大すると同時に、新しい国際市場にも参入する予定だ。ヘッケルズは引き続き独立運営され、ELCは取締役会には参加しない。
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ヘッケルズはこれまでにエンジェル投資を受けたことはあるが、ELCの投資は初めての「成長ラウンド」である。そう述べるのは、ヘッケルズのマネージングディレクター、チャーリー・ヴィッケリー氏である。
ヘッケルズの歴史
ヘッケルズは、ドム・ブリッジズ氏によって2012年ケント州マーゲートで設立された。セルフリッジズ(Selfridges)やミスターポーター(Mr. Porter)などの高級小売店で取り扱われており、イギリスの俳優エマ・ルイーズ・コリン氏やDJのケリー・リー・オーエンズ氏らセレブリティをはじめ熱狂的なファンを抱えている。2020年には、植えることができる種を含んだ紙に製品情報を印刷した、キノコから作ったパッケージで、ウォールペーパー・デザイン賞(イギリスのデザイン誌ウォールペーパー(Wallpaper)主催の賞)を受賞した。賞の審査員にはソランジュ・ノウルズ氏もいた。
ブランド名は、ドイツの博物学者で、生物画家としても知られるる進化論者のエルンスト・ヘッケル氏から取られた。ヘッケル氏は偽の人種論も発表しているが、これは一部の学者によるとナチスに影響を与えたと言われている。ヘッケルズによると、ブランド名はヘッケル氏の海の生物の絵画ゆえに選ばれたという。ヴィッケリー氏は、2020年8月の社内メールで次のように述べている。「エルンスト・ヘッケル氏は人種差別者だったが、これは我が社の価値観とは異なる。彼の意見を共有してはおらず、それはブランド名の選択には関与していない」。
ヘッケルズは、今年の第4四半期か来年の第1四半期までにアメリカに進出する予定である。現在はイギリスと日本で店舗を運営しており、モルディブのリゾート、パティナ(Patina)との提携の一環としてスリランカに製造施設を設立しているところだ。
スキンケアカテゴリーの強化
「我が社は2020年のはじめにはキャンドルと石鹸が中心だったが、いまではスキンケアの強化にフォーカスしている」と、ヴィッケリー氏は2020年のスキンケアのローンチ以来、同カテゴリーの「信じられないほどの牽引力」に言及している。今年8月にはスキンケアのラボをローンチする予定がある。
ヘッケルズのアルジー・プランプ・シーウィード&ヒアルロン酸フェイスセラム(Algae Plump seaweed and hyaluronic acid face serum)は現在もっとも売れている製品で、需要が高いため売り切れになっていることが多い。今回のELCの投資の大部分が、そのような需要に対応するための製造拡大に費やされるだろう。
「顧客が必要なときに製品を入手できるように製造を強化することは成長計画の一環だ」とヴィッケリー氏は述べている。
とくに海の環境問題に取り組む
海の持続可能性にフォーカスした「ブルービューティ」ブランドとして確立しているヘッケルズは、地元で収穫された海藻を原料に使い、パッケージは堆肥化可能で、水を使わない錠剤のシャワージェル(セラミックディスペンサー付き)などの環境に優しい製品を展開している。また、海のゴミを集めて店舗に持ち込む顧客には製品を無料で提供しているが、これは(年間売上の少なくとも1パーセントを環境問題に貢献する国際組織の)ワンパーセント・フォー・ザ・プラネット・イニシアチブの一環である。
ヴィッケリー氏は、ヘッケルズの持続可能なパッケージのサプライチェーンは「少し複雑」だが、余分な包装を回避する「スケーラブルな」方法でパッケージ製造を「強化」する方法に取り組んでいると述べている。
投資はするが口出しはしないELC
今回の投資による拡張でサステナビリティがおろそかにされることはない。
ヴィッケリー氏は次のように述べている。「この投資は我々を束縛するものではないので、幸運だと思っている。ELCが魅力的だったのは、『貴社がやっていることを継続してくれ。我々はそれを強化するのを支援する』と言ってくれたことだ」。
「我が社は多くのベンチャーキャピタルやファンドと話し合ってきたが、それらの企業はもっと積極的だった。『コストをカット、寄付金をカット、これもカット、あれもカット。そうすれば2年間でX億ポンドまで拡大できる支援をする』という話ばかりだった。それは我々のやりたいことではなかった」。
[原文:Estée Lauder Companies invests in cult UK brand Haeckels]
LIZ FLORA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)