高級食料品店のエレウォンは、サブスクリプション式のウェルネス企業シードヘルスとのあいだで、ユニークな「 アフィリエイト小売 」パートナーシップを締結した。この契約の一環として、エレウォンは新興企業であるシードヘルスの唯一のプロバイオティクスサプリメントを、3月から年末までLAにある同社の7つの店舗で取り扱う。
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高級食料品店のエレウォン(Erewhon)は、サブスクリプション式のウェルネス企業であるシードヘルス(Seed Health)とのあいだで、ユニークな「アフィリエイト小売」パートナーシップを締結した。
この契約の一環として、エレウォンは新興企業であるシードヘルスの唯一のプロバイオティクスサプリメントを、3月から年末までLAにある同社の7つの店舗で取り扱う。エレウォンはそのあとで、来店客が固有のリンクまたはQRコードを使用してシードのウェブサイトからリフィルを申し込むと、リードジェネレーターとして追加料金を受け取る。これは、エレウォンの支援によってシードが獲得した各サブスクリプションに適用される。
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15%以上がサブスクに切り替え
シードはこのプログラムによって、アフィリエイトのマーケティングモデルを卸売小売の世界に効果的に持ち出し、パートナーは最初の購入時以外にも利益をあげることができるようになる。専門家によれば、この動きは実店舗の小売業者が新しいブランドを低リスクで試す方法を提供し、CPG企業は混乱した分野において分配を増やすことが可能になる。この場合、シードは自社の単発の商品をエレウォンの商品棚で販売し、自社のサブスクリプションプログラムも宣伝し、エレウォンにも利益をもたらすことができる。
両社は最初、「シェルフ・トゥ・サブスクリプション(棚からサブスクリプションへ)」戦略を昨年秋に60日間にわたってテストし、今年になってパートナーシップの拡大に合意した。シードの共同設立者で共同CEOを務めるアラ・カッツ氏によれば、テスト中の売上は予測値の2倍に達し、店舗内での購入は15%を超える率でサブスクリプションに切り替わった。
同氏は米モダンリテールとの対談で次のように述べた。「eコマースのウェブサイトとしては、このコンバージョン率は驚異的だ。テストの結果は我々の期待を超えていた」。
エレウォンのエグゼクティブバイスプレジデントを務めるビト・アントッチ氏は次のように語った。「当社は最初の契約おいて、コミッションモデルで見た売上を注意深く観察してきた。その数字が印象的だったので、このモデルを拡大しなければと思った」。
エレウォンとの提携アドバンテージ
シードは自社ウェブサイトで、腸の健康のための「DS-01」プロバイオティクスを毎月50ドル(約5750円)で販売しており、昨年春のシリーズAラウンドで4000万ドル(約46億円)を調達してから、アフィリエイト小売のパートナーシップをさらに探している。同社がエレウォンに接近したのは、エレウォンのエンゲージメントの高い顧客コミュニティに接触するためだと、カッツ氏は語った。
高級食料品店であるエレウォンは、過去10年間にわたり、セレブやソーシャライツ(名士)たちの人気スポットとして人もうらやむほどの名声を確立してきた。同社は、年間200ドル(約2万3000円)のメンバーシッププログラムを設け、加入者が購入した商品のポイントを獲得し、店舗やオンラインでの買い物で利用できるようにすることで、カルト的な地位を育成しようとしてきた。CPG企業はいっせいに、このトレンディな食料品店から認められようとして同社に接触するようになった。同社に認められると、ブランドの卸売りの軌道を上昇させることができると、一部ではささやかれている。
テストの準備として、カッツ氏は自ら複数の店舗を回り、エレウォンの栄養チームの研修を行った。プロバイオティクスの科学についての教育ビデオもチームに向けて上映された。
アントッチ氏は次のように述べた。「当社には、このようなすべての主要な活動をサポートする企業研修プログラムがある。ベータプログラムについては、当社はすべての従業員に、このプロバイオティクスが体内でどのように機能するかを教育した。これは、シードがエレウォンの店舗に参入するとき、全員が共通の認識を持ち、サポートされるようにするためだった。この作業は再度行うことを計画している」。
現在、このトライアルで使用されたシードの大型ディスプレイは、年末までエレウォンの通路に設置されることになった。商品棚にはDS-01のウェルカムキットが並ぶ。小さなダークグリーンの箱に1カ月分のカプセル、詰め替え容器、旅行用の小瓶が収められている。3月からは、ディスプレイにサブスクリプションリフィル用のQRコードと、シードについてさらに詳しく知りたい顧客のために、同社のソーシャルメディアハンドルが表示されるようになる。
より共生的な関係の構築
この展開には、AppleやGoogleによるプライバシーの変更により、オンラインで消費者を追跡することが難しくなり、各ブランドがアフィリエイトマーケティングの手法を再検討していることが背景にある。スキンケアブランドのスリーシップス(Three Ships)やフィフティー・シックス・アドバタイジング(Fifty Six Advertising)などの会社は、Facebookやインスタグラムでの広告の成績が低下したため、デジタルアフィリエイトのマーケティングチャネルに投資していると、米モダンリテールに語った。
カッツ氏は、アフィリエイト小売戦略が、すべての関係者にとって有益であると主張している。特に、発注やマージンを考慮すると、従来型の在庫モデルより利益が大きい場合があるという。そのコスト削減分は、このチェーン全体に存在するマージンを支払う必要のない消費者に還元される、と付け加えた。また、各ブランドが消費者に対するより豊富な見識を得るのにも役立つと主張した。
カッツ氏はさらに、「我々はこれを、強力なフィードバックループを作り上げる、より共生的な関係と考えている。これによって店舗内での商品の発見から、オンラインでのサブスクリプションまで、顧客を追跡できるようになる」と述べた。
ポストパンデミックを見据えて
従来型小売業者との関係を築き上げようとしているD2Cサブスクリプションブランドはシードだけではない。テレヘルス企業のヒムズ・アンド・ハーズ(Hims & Hers)はターゲット(Target)や、ウォルグリーン(Walgreens)、アーバン・アウトフィッターズ(Urban Outfitters)とのあいだで、自社の個人向けのヘルスケアとヘアケア用品を扱ってもらうパートナーシップを締結。ターゲットは昨年4月、家庭用必需品マーケットプレイスのグローブコラボレーティブ(Grove Collaborative)とも提携した。
ワービーパーカー(Warby Parker)や、アウトドアボイシズ(Outdoor Voices)、ジョイバード(Joybird)などのD2Cスタートアップ企業の店舗を管理してきた経歴を持つ小売コンサルタントのレベッカ・コンドラット氏は、シードの手法は、D2Cと従来型の小売業者が、特にマーチャンダイズ拡大と顧客の目に触れる機会を増やすというふたつの目標を満たすために協力し、持続可能なビジネスの関係を模索している様子を示している、と述べている。
同氏はまた、「私の知る限り、アフィリエイト小売モデルを現在実行しているブランドは存在しないし、帰属を明確にすることが難しくなる可能性があることもわかる」とも話した。「それでも、新しいブランドを低リスクでテストする(または逆に、ブランドが新しい小売業者をテストする)方法として、それは意味があるだろう」。
コンドラット氏はさらに続けた。「CPGで重要なのは、広範囲への分配だ。過飽和状態はアパレルやアクセサリーなどほかのカテゴリーでは害になる可能性があるが、CPGではまったく逆になる。そのため、正当性、流通、新規顧客獲得をもたらしてくれる大手小売業者とのパートナーシップは、ポストパンデミックにおいては非常に貴重なものだ」。
[原文:Erewhon inks ‘affiliate retail’ partnership with subscription wellness startup Seed]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Seed