2018年、大和ハウス工業はCCI、Gooと協力して、自社商品の広告をGooのニュース面に出稿するキャンペーンを実施し、リアルタイムアドセーフティツール、CHEQの効果検証を行った。結果、ブランドとメディア、双方にとって好ましい効果が確認できたという。
アドベリフィケーションの最先端では、リーチもブランドセーフティも、諦める必要がない。
YouTubeに投稿された過激主義者の動画に、大手企業の広告が配信されたことに端を発するブランドセーフティ問題。2017年のニューヨーク・タイムズ(The New York Times)による報道以降、その関連トピックは大きな注目を集めてきた。
だが、そのはるか以前から、デジタルメディアにおけるブランドセーフティに地道に取り組んできた企業がある。工業化住宅のパイオニアとして知られる、大和ハウス工業だ。購入に大きな決断を要する、住宅という高額商品を扱うだけに、広告配信の際のブランドセーフティには、徹底的にこだわってきた。
そんな同社が、いま大いなる期待を寄せているのが、イスラエル発のアドテク企業、CHEQ AI Technologies(チェック・AI・テクノロジー:以下、CHEQ)だ。「リアルタイムアドセーフティ」を謳うCHEQのサービスでは、PMP(プライベートマーケットプレイス)やAI(人工知能)を利用した新しい仕組みで、アドフラウド、ビューアビリティ、ブランドセーフティについて、リアルタイムにまとめて対応できる。
大和ハウス工業は2018年、デジタルマーケティング企業のCCIおよびNTTレゾナント株式会社が運営するポータルサイト「goo(グー)」と協力して、このCHEQの効果検証を実施。CHEQのタグを配置したgooのニュース面に、大和ハウス工業の広告を出稿した。そこで、ブランドにとっては配信先をコントロールでき、メディアにとっては広告枠の販売増大の可能性が見いだせるという、双方に好ましい効果が確認できたという。
1割ダメなら出稿しない
「ブランドを守るため、とにかくネガティブなコンテンツには広告を出さないという方針を貫いてきた」と、大和ハウス工業 総合宣伝部 デジタルメディア室 室長・大島茂氏は強い口調で語る。2007年からデジタルメディア室 室長に就任した大島氏は、「9割に問題なくても、1割に不安な要素があるのなら、そのメディアに広告は出せない」とする厳しい姿勢を、徹底して貫いてきた。
大和ハウス工業は、配信先リストを提示しないアドネットワークを一切使用しない。社内で調査した「信頼できるメディア」を選んでホワイトリストを作成し、半年ごとに定期的なチェックを行っている。いわゆる新聞社系のトラディショナルなメディアであっても、ブランドにとってネガティブなコンテンツへの出稿を止められないメディアは、メディアごとホワイトリストから除外するという。また同社は、DSPに関しても2013年にcciと協力しテストを実施したが、DSPでのホワイトリスト配信はコストが合わず「優良なアドネットワークの方が良い」という判断をしたという。
しかし、ここまで検証を重ねて対策を講じても、十分にコントロールできない事態は生じうる。ニュースサイトにはどうしても、ジャーナリズム的には重要であっても、台風や地震などの自然災害や、会社に関わる事件・事故といった、ブランド広告の出稿先としてはふさわしくない話題が記事として配信される場合がある。また、従来のマスメディアと違って、Web、特にスマホの場合には、インデックスページ以外は、それぞれの記事に広告が掲載される。そのため、「消費者がその記事をスポンサードしているように勘違いしてしまう可能性があるという事を以前から懸念していた」と大島氏。
続けて同氏は「たとえば、火事で死傷者が出たという記事に、大和ハウスの広告が掲載されると、その記事を読んだ人はどう思うか?これまでは、大和ハウスに興味関心が高い人がどんな記事を読むかがわからなかったため、上記のようなケースは避けられなかった」と語る。地震などの大きな災害がおきた時は、そのニュースが落ち着くまで一時的に広告配信を停めるなどの措置を講じてきたという。
こうした事態にどう対応するかは、ブランドセーフティにこだわるすべてのブランドにとって、大きな課題であり続けてきた。大和ハウス工業もこれまで、国内外を問わず、ありとあらゆるアドベリフィケーションツールを試してきたが、十分に満足する結果は得られなかったという。

「ブランドセーフティの徹底には早くから取り組んできた自負がある」と大島氏
「これこそが欲しかった」
なんとか、コンテンツごとに広告の掲載可否を判断し、出稿をリアルタイムでコントロールできないか。そうしたニーズに応えるべく作られたアドベリフィケーションツールが、CHEQだ。「イベントでCHEQのプレゼンを聞いた瞬間に、あ、これこそ欲しかったツールだと思った。試用できないか、すぐに話をさせてもらった」と、大島氏は振り返る。
大島氏がCHEQの存在を知ったのは、2018年9月11日・12日に行われた、DIGIDAY[日本版]主催のクローズドイベント「DIGIDAY BRAND LEADERS」だ。そこで実施された、CHEQカントリーマネージャーを務める犬塚洋二氏と、CCIセールス・ディビジョン チームマネージャー吉田大樹氏による「リアルタイムアドセーフティとは何か?:その全貌とメリット」と題されたセッションだった。
その際、犬塚氏と吉田氏は、現時点でブランドが採るべきもっともブランドセーフティな対応は、PMPを利用することだと述べている。だが、それでも先述の理由で、ニュースサイトにわずかなリスクが残ることは否めない。これからはCHEQのような、コンテンツ単位で確実にブロックできるツールの重要性が増していくだろうと、展望を語っていた。
AIが瞬時に可否を判断
大島氏がCHEQに注目したポイントは2点。ひとつは、広告にとって望ましくない記事を事前にピックアップして、ブロックできること。もうひとつが、メディアやディレクトリ単位でなく、コンテンツ単位でブロックできること。いずれも、従来のアドベリフィケーションツールにはない機能である。
リアルタイムでその枠がブランドにとって適切/不適切かどうかを判断するという柔軟な対応が可能なのは、その判断をAIが行うからである。CHEQのタグは、メディアのWebページのヘッダに埋め込まれるため、バナーから読み込むタイプのツールより、はるかに多くの情報を得て判断している。
CHEQのAIが判断するのは、コンテンツの良し悪しではなく、ブランドとコンテンツの適合性だ。コンテンツにブランドの広告を表示していいのか、表示することで適切なストーリーテリングを実現させられるのか、である。そのAIは、約700のパラメーターを分析し、画像も含めた文脈を瞬時に判断することで、コンテンツ単位でのブロックがリアルタイムで可能になっているという。
そこで、2018年末にかけて、大和ハウス工業はgooと協力。自社商品Xevo Σ(ジーヴォシグマ)プレミアムの広告をgooのニュース面に出稿するキャンペーンを実施して、CHEQの効果検証を行った。
キャンペーン終了後、実際にブロックされたコンテンツの一覧レポートを確認した大島氏は、「ネガティブな記事、ネガティブと思われる記事には、広告がきちんと止まっていた。ちょっと止めすぎかなと思ったぐらい。弊社にとって非常にありがたい」と、好評価。キャンペーンを手がけた吉田氏は、「事後に検知して、後からPDCAでブロックしていく従来のアドベリフィケーションよりも、事前にリアルタイムでブロックしたほうが、作業工数的にも、コスト的にも効率がいい」と、副次的な優位性も指摘する。

「CHEQのAIはコンテンツのキーワードではなく、文脈を読み取る」と吉田氏
ブロックは全体の3割弱
「今回のキャンペーンでは、CHEQの効果を確認してもらうために、ブランドセーフティの度合いを厳しいレベルに設定した」と犬塚氏。しかし、実際タグを走らせてみると、ブロックした広告在庫は全体の3割弱だった。つまり、7割以上の在庫が完全にブランドセーフな状態で使える枠だと分かったのだ。これは、できるだけ多くの面を売りたいメディア側にとってもも、ブランドセーフと判断された枠をよりプレミアムの高い枠として、従来よりも高価格で販売することができるようになるため、メリットが大きい。
また、CHEQのアドセーフティサービスの導入サポートを担当する吉田氏も、「安心・安全だからこそ定性的な広告効果が見込めるプレミアムな枠であるということを、積極的に働きかけていきたい」と語る。安全であることが、すなわち広告価値が高いとする、新しい価値判断基準を普及させたいと意気込んだ。
メディアとしても、ブランドごとにコンテンツ単位で掲載をコントロールできることは、喜ばしいことであることは間違いない。gooの広告営業責任者であるNTTレゾナント株式会社 デジタルマーケティング事業部 広告営業部門長の福武雅則氏は「事件・事故が起きたらいっさい出稿できないとしてきたブランドが、安全が担保された部分だけでも出稿してくれるようになるのなら、大きなチャンスだ」と捉えている。また、そうした広告主の希望に沿う対応をすることで、メディアブランドの向上にも期待できると話す。

「CHEQのアドセーフティサービスはメディアブランドの向上にも役立つ」と福武氏
広告業界全体の健全化へ
最後に大島氏は、ブランド側からメディアへの要望として、とにかく安心して出稿できる上質なコンテンツを作り続けてほしい、と述べる。「ホワイトリストに掲載するメディアは、増やしたいと常々思っている」と同氏が語るように、配信面の増大は大和ハウス工業だけでなく、すべてのブランドにとって最重要課題のひとつだからだ。CHEQを使うことで安全が確実に担保されるのであれば、これまでNGとしてきたブログなどにも出稿の余地はあるし、ある程度のインプレッション単価が上がることも、やぶさかではないという。
広告の配信先と出稿状態を完全にコントロールすることは、確かに難しい。犬塚氏は、現状DSPがあまりにも発達しすぎてしまい、ブランドもメディアも、コントロールすることを半ば諦めてしまった部分があるのではないか、と推測する。しかし、たとえ1インプレッションでもその先にはリアルな1消費者がいる。その重要性をブランドはきちんと認識するべきだが、責任をメディアに押し付けるのも違う。犬塚氏は「CHEQがそのソリューションとして役立てるならば本望だ」と述べた。

「ブランド、メディア双方に最適なソリューションを提供したい」と語る犬塚氏
CHEQのようなAIを活用したサービスが、人間以上に正確に、素早く判断を行い、出稿を24時間監視する状態が具現化しつつある。ブランドにとっても、メディアにとっても、ひいてはデジタル広告業界全体の健全化にとっても、望ましい未来がそこまで来ているのかもしれない。
Sponsoerd by CHEQ
Written by 内藤貴志
Photo by 渡部幸和