デジタルメディア購入の内製化、エレクトロラックスの事例:「消費者データ」が最大のメリット

国際的な家電メーカーのエレクトロラックス(Electrolux)が、デジタルメディアバイイングの内製化に取り組んでいる。まず北米で内製化をはじめ、その後ヨーロッパやラテンアメリカのさまざまな地域に拡大する計画だ。

北米地域のデジタルマーケティング担当シニアディレクターを務めるジョエル・スタンレー氏によれば、同社は7月までに、すべてのデジタルメディアバイイングの計画と実行を、ノースカロライナ州シャーロットにある北米本社で行う予定だという。エレクトロラックスはスウェーデンに本拠を置くグローバル企業で、冷蔵庫で有名なフリッジデール(Frigidaire)、エアコンのギブソン(Gibson)、洗濯機のエレクトロラックス・ランドリー・システムズ(Electrolux Laundry Systems)など、さまざまな家電ブランドを傘下に抱えている。

エレクトロラックスは北米で、年間およそ2500万ドル(約27.6億円)をメディアバイイングに、300万〜500万ドル(約3.3億円~約5.5億円)をブランディングに費やしているとスタンレー氏はいう。ただし、デジタルメディアバイイングの具体的な金額については明らかにしていない。

目的は「消費者データ」

同社は10月、ブランドのメディアバイイング内製化を支援するエージェンシーのマイティハイブ(MightyHive)と提携し、北米で働く45名のマーケティングチームのなかで、新たな業務に携わるスタッフのトレーニングを開始した。目標は、WPPグループのエージェンシーVMLY&Rに依頼していたデジタルメディア関連業務を引き継ぎ、自社で管理できるようにすることだ。また12月には、初のテストキャンペーンも行っている。さらに4月には、はじめて広告エージェンシーを利用しない形で、フリッジデールのプログラマティックキャンペーンを行う計画だ。ただし、マイティハイブがこのキャンペーンを支援する。

スタンレー氏によれば、デジタルメディアバイイングとプランニングの内製化を決断した一番の理由は、ソーシャル広告やディスプレイ広告、それに検索広告から得られるすべての消費者データを自社で管理したいと考えたからだ。また、プログラマティックメディアバイイングを進めるための取り組みも管理できるようにしたかったという。

「以前は、メディアを管理するため、必死に代理店を管理しようとしていた」と、スタンレー氏は話す。「我々は優れた代理店パートナーを抱えていたが、ビジネスニーズの観点からメディアの良し悪しを判断できる専門知識を持つ企業のようにはいかなかった。重要なのは得られるデータのレベルだ。いまでは消費者についてはるかに詳しい情報を得ることができる」。

内製化のメリット

エレクトロラックスはこれまで、広告の視聴回数の測定で「非常に大きな問題」を抱えていた。独自のデータがないため、広告が25回視聴されたのか2回しか視聴されていないのか判断できなかったのだ。「さまざまなデマンドサイドプラットフォーム(DSP)が同じメディアを取り扱っている状況で、そのような情報を得るのは難しい」と、スタンレー氏は述べている。

もうひとつのメリットはコストの削減だ。スタンレー氏によれば、「相当な金額」を節約できるという。同社はVMLY&Rに毎年150万ドル(約1億6560万円)を支払っているが、エージェンシーへの支払いがなくなれば、3分の1から半分近い金額を節約できる。ただし、エレクトロラックスの指定広告会社であるVMLY&Rは、今後もエレクトロラックスのためにテレビ広告のプランニングとバイイングを手がける予定だ。また、エレクトロラックスのクリエイティブ関係の業務を管理するという。

エレクトロラックスが2月1日(現地時間)に発表した第4四半期決算によれば、同社の純売上高は344億3000万ドル(約3.8兆円)だった。この金額は、アナリストの予想を2.4%上回っている。

運用チームの構成と目標

メディアバイイングの内製化を実現するため、エレクトロラックスはマーケティングチームで4人の新しい人材(デジタルストラテジスト1名とメディアバイヤー3名)を募集しており、すでにデジタルストラテジスト1名とメディアバイヤー1名は決定した。彼らはデータおよびメディア責任者の下で、有料検索広告、ソーシャル広告、ディスプレイ広告の最適化と入札に関するノウハウを積み上げることになる。

「すべてのスタッフが、少なくともシステム全体について十分に理解できるようになってほしい」と、スタンレー氏はいう。「自分の専門分野に閉じこもる人がいないようにしたいのだ。たとえば、有料検索の担当者には、ディスプレイ広告の仕組みを知っておいてもらいたい」。一方、バイヤーについては、メディア業務の経験がない応募者を求めている。そのほうが、一からトレーニングできるからだ。

エレクトロラックスの北米でのメディア支出は、もっぱらGoogleとFacebookに向かっているが、Amazonが第3のオプションとして浮上しているという。同社のデジタル広告支出のうち、約75%はGoogleの検索広告とディスプレイ広告、それにYouTubeの動画広告に使われ、残り25%はFacebookとインスタグラム(Instagram)の広告に支払われている。Amazonは、ディストリビューター経由で一部製品を販売するために利用しているが、今後は広告チャネルとして利用することも検討しているという。Amazonでは、標準のディスプレイ広告でタグを利用して、広告のクリックから製品購入に至るまでのコンバージョンを確認できるため、「非常に魅力的」だとスタンレー氏は述べている。

マーケター業界の動向

エレクトロラックスと同じように、一部のマーケティング業務を内製化している企業の大半は、データ管理の強化を内製化の目的として挙げている。DIGIDAYリサーチが214名のマーケターを対象に行った11月の調査によれば、回答者の38%が、マーケティング業務の管理を強化できることが社内エージェンシーを持つ最大のメリットだと述べていた。

一方、ブランドコンサルタントのジーン・フィッシャー氏は、内製化を賢明な戦略だとしながらも、唯一の欠点として、エージェンシーパートナーを通じたパブリッシャーとの関係構築が難しくなる可能性を指摘した。「大手パブリッシャーと強固な関係を築いている古参のメディアエージェンシーやクリエイティブエージェンシーの支援がなければ、(エレクトロラックスは)そのようなパブリッシャーとのコンテンツ取引ができなくなる可能性がある」と、フィッシャー氏は述べている。

メディアバイイングの内製化を国外に広げる計画については、詳細がすべて決まっているわけではない。だが、まずブラジルのサンパウロで技術スタックを構築してから、グローバル本社があるストックホルムで同様の取り組みを行う計画だ。具体的なプロセスは、地域によって変わってくるだろう。ヨーロッパとラテンアメリカでは、複数の国が関わってくるため、状況はより複雑になる。そこでこれらの地域では、メディアエージェンシーと提携して取引を進めながら、すべてのデータと技術を管理できるようにするという。ただし、そのスケジュールは確定していない。ブラジルでは、3月末までに独自の技術スタックを構築することを目指している。ストックホルムや他のヨーロッパ諸国では、第2四半期末までかかることになるだろう。

「エージェンシーが我々の技術スタックを利用するようになれば、オーディエンスの開拓がすべて我々の技術で行われるようになる」と、スタンレー氏は語った。

「多くが取り組んでいる」

現時点では、社内で小規模な内製化を実現したことで、幹部らがメディアバイイングを進めやすくなっているとスタンレー氏はいう。同社では、Frigidare.comとElectrolux.comという2つのサイトを、1名のグラフィックデザイナーと2名の開発者が管理している。また、他のブランドで「内製化の動き」が進んでいることも後押しとなっている。スタンレー氏によれば、同社は酒類メーカーのディアジオ(Diageo)やスポーツ用品メーカーのアディダス(Adidas)といった世界的ブランドと交流し、彼らから学んでいるという。こうした取り組みが、さまざまな地域でマーケティングの内製化を進めるうえで役立っているようだ。

「このような取り組みのおかげで、当社の幹部は不安を感じることなく、この計画を進められるようになった」とスタンレー氏は話す。内製化が「我々だけの考えではなく、多くの企業が取り組んでいること」であるのがわかったからだ。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:ガリレオ)