ダンキンドーナツ(Dunkin’ Donuts)が、TikTokフォロワー数第1位のレジェンド、チャーリー・ダメリオとのコラボレーション商品を発売した。パンデミックにより爆発的な成長を遂げたTikTokだが、そのなかでもチャーリー・ダメリオのフォロワー数は、実に1億1170万人を誇っている。
ダンキンドーナツ(Dunkin’ Donuts)が、TikTokフォロワー数第1位のレジェンド、チャーリー・ダメリオ(以下、ダメリオ)とのコラボレーション商品を発売した。
パンデミックにより爆発的な成長を遂げたTikTokだが、そのなかでもダメリオのフォロワー数は、実に1億1170万人を誇っている。そんな彼女が、毎朝ダンキンドーナツのミルクとキャラメル入りのコールドブリューを愛飲しているというメッセージを、TikTokで投稿した。その影響力は絶大で、2020年9月にはダンキンドーナツが、このコールドブリューを全米の店舗で販売するに至った。それだけではない。2021年3月末には、ダメリオとダンキンドーナツのコラボレーション商品も展開されている。
コラボレーション商品は、16ドル(約1800円)のキーチェンや100ドル(約1万1000円)のコールドブリュー用のタップハンドル、シュシュやタンブラー、きぐるみ、靴紐、スマホケースなどだ。
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現在のTikTok人気にあやかろうと、各社は従来の手法に捉われない、さまざまなアプローチを展開している。また、このダンキンドーナツの取り組みは、TikTokを単なる「お試し」プラットフォームではなく、マーケティングの主戦場として考える広告主が、増えていることを示している。
@charlidamelio my @dunkin obsession…but make it merch!! coming tomorrow 3/30, 3pm est🧡 shopdunkin.com ##ad
「話題性と特別感を提供する」
実店舗メインのブランドや、小売企業が関連グッズ販売を展開するのは、ダンキンドーナツの取り組みがはじめてではない。2019年12月、マクドナルド(McDonald’s)は、アパレルとアクセサリーを販売するオンラインストア、ゴールデン・アークス・アンリミテッド(Golden Arches Unlimited)を立ち上げた。また、コカ・コーラ(Coca-Cola)はオンラインストアで、オーナメントや家庭用品などを販売している。タコベル(Taco Bell)も、過去には水筒やパジャマ、パズルなどを販売したことがある。
今回のダンキンドーナツのコラボレーションは、マーケターのあいだで、TikTokが信頼を獲得しつつあることを示す、一例といえるだろう。実際TikTokは、大きな可能性を秘めている。ココナッツ飲料ブランドのビータココ(Vita Coco)では、インフルエンサーのLizzoが、同社の商品にベリーを添えて「自然界のシリアル(nature’s cereal)」とTikTokで紹介したことで、1週間で売上が15%も跳ね上がった。
バイラルネーション(Viral Nation)の事業開発責任者、ゲイブ・フェルドマン氏は、こうしたアプローチを「賢いやり方だ」と評価。また、「自撮り写真とキャプションを投稿するだけの単発的な施策ではなく、長期的なアンバサダーシップである点も良い」と述べる。ちなみに、ダンキンドーナツの取り組みは、2020年9月にマクドナルドがラッパーのトラビス・スコットと行ったコラボレーションに似ている。このときマクドナルドは、トラビス・スコットが幼少の頃に好きだったというメニューを特別に発売した。
ダンキンドーナツのブランドエンゲージメント・マネージャーであるケマ・ケファラス氏は、今回のコラボレーションを「話題性と特別感を提供する、カプセルコレクションだ」と表現する。また、コラボレーション商品の企画には、ダメリオも参加したという。
大きな収益を得るためではない
「この種の関連グッズ販売において大切なのは、話題やエンゲージメント獲得の視点だ。通常、大きな収益を得るためのものではない」。こう話すのは、IMCライセンシング(IMC Licensing)のプレジデント、エミリー・ランドルズ氏だ。「食品や飲料ブランドが関連グッズを販売する場合も例外ではなく、重視すべきはターゲットの想起率の向上だ」。
また、コンサルティング企業のエルムウッド(Elmwood)で、クリエイティブ責任者を務めるメグ・ベッカム氏は、関連グッズの販売はブランドイメージの構築につながる戦略として、パンデミック以前から企業のあいだで活用されてきたと指摘する。特に実店舗を持つブランドや非耐久消費財ブランドにとって、このアプローチは、消費者と新たな接点を持つための効果的な手段だからだ。
しかし、最近ならではの新しい傾向も見られている。「ブランドは、単にトートバッグにロゴを入れるだけではなく、商品にもっと価値を見いだそうとしている。ただロゴを付けただけのトートバッグを販売するといった例は、減りつつある」とベッカム氏。「賢いブランドは、関連グッズをブランドストーリーの延長にあるもののと捉え、実用性やブランドとの関連性を重視している」。
長期のパートナーシップが得策
ダンキンドーナツが、はじめてオンラインストアをローンチしたのは2019年12月。これは、ネイルポリッシュやリップクリームといった商品の店頭売れ行きが良いことを受け、クリスマスシーズンの販売を狙った取り組みだった。
同社は関連グッズ販売における収益について、具体的な数字は明かしていない。また、今回の取り組みで交わされたのはライセンス契約ではなく、ダメリオとのパートナーシップ契約だという。
フェルドマン氏は、こうしたパートナーシップ契約は、通常一括払いではなく、ロイヤリティ契約やレベニューシェアによって支払われると述べ、「過去にはブランドとパートナーの分配比率が50対50、なかには70対30という事例も見られた」と付け加えた。
ランドルズ氏は「もちろんブランドやパートナーシップごとにインセンティブなどの条件は変わってくるが、一般的な傾向として、1~2年の契約よりも長期の契約をしたほうがROIが高い」と述べる。「また、食料品などの場合は、リピート購入が発生する可能性があるため、ROIが高くなる」と述べている。
[原文:Dunkin’ Donuts’ latest merchandise drop builds on TikTok popularity]
ERIKA WHELESS(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)
ILLUSTRATION BY KEVIN KIM, DIRECTED BY IVY LIU