顧客獲得がより困難で高価になってきた現在、デイリークイーン(Dairy Queen)のような予想外の場所からヒントを得ているブランドもある。
たとえば、スキンケアブランドのアーバンスキンRx(Urban Skin Rx)は、サマーセールで型破りなアプローチをとった。同社によると、このセールは人気アイスクリームチェーンから着想を得たものだったという。6月9日から11日まで、同ブランドは通常価格20ドル(約2780円)のクリアー・アンド・イーブン・トーン・クラリファイング・グリコーリック・パッド(Clear & Even Tone Clarifying Glycolic Pads)を、同社のD2Cウェブサイト限定で1ドル(約139円)で販売した。この実験の目的は、この商品と、この商品ラインの売上と認知を上げるとともに、在庫をさばくことだった。最終的に、キャンペーンの予測収益目標を44%上回り、1日の平均顧客獲得数は454%も大幅に増加した。さらに、このセールは週末のあいだに、インスタグラムとTikTokにわたって5000以上のエンゲージメントと、52万5000回の再生を生み出した。
このプロモーションは、多くのD2C企業と同様、この数年間で前例のないeコマースでの成長を果たした後、既存店売上を維持する圧力を感じていたブランドにとって、重要な時期に行われたものだ。同社の2020年に無報酬のインフルエンサーの投稿を通じて、クレンジングバーがTikTokでバイラル化したときにオンラインで存在感を示した。翌年、同社は3000万ドル(約41億7000万円)の売上を生み出した。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
顧客獲得がより困難で高価になってきた現在、デイリークイーン(Dairy Queen)のような予想外の場所からヒントを得ているブランドもある。
たとえば、スキンケアブランドのアーバンスキンRx(Urban Skin Rx)は、サマーセールで型破りなアプローチをとった。同社によると、このセールは人気アイスクリームチェーンから着想を得たものだったという。6月9日から11日まで、同ブランドは通常価格20ドル(約2780円)のクリアー・アンド・イーブン・トーン・クラリファイング・グリコーリック・パッド(Clear & Even Tone Clarifying Glycolic Pads)を、同社のD2Cウェブサイト限定で1ドル(約139円)で販売した。この実験の目的は、この商品と、この商品ラインの売上と認知を上げるとともに、在庫をさばくことだった。最終的に、キャンペーンの予測収益目標を44%上回り、1日の平均顧客獲得数は454%も大幅に増加した。さらに、このセールは週末のあいだに、インスタグラムとTikTokにわたって5000以上のエンゲージメントと、52万5000回の再生を生み出した。
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このプロモーションは、多くのD2C企業と同様、この数年間で前例のないeコマースでの成長を果たした後、既存店売上を維持する圧力を感じていたブランドにとって、重要な時期に行われたものだ。同社では、2020年に無報酬のインフルエンサーの投稿を通じて、クレンジングバーがTikTokでバイラル化し、オンラインで存在感を示した。そして翌年には3000万ドル(約41億7000万円)の売上を生み出した。
1ドルセールの効果
アーバンスキンRxの創設者であるレイチェル・ロフ氏は、「これは、現在の市場は極めて過当競争であることから、なぜ行き詰まっているかを明らかにするためのテストと学習の戦略だった」と筆者に語った。この1年間に成長が鈍化していることから、同社はソーシャルメディアでのエンゲージメントを引き上げたいといい、同氏は、特に「最近ではアルゴリズムとROI(投資回収率)が存在せず、非常に高価である」と、広告が多いインスタグラムのフィードについて言及した。アーバンスキンRxは現在、アルタ(Ulta)、CVS、ターゲット(Target)など複数の小売業者で販売されるようになったため、同社はD2Cチャネルの認知度を引き上げる方法を模索しているとロフ氏は語る。同氏は、キャンペーンのアイデアは、デイリークイーンのようなチェーン店がこの夏、顧客を呼び込むために、人気のブリザード(Blizzard)を0.85ドル(約118円)で販売するセールを行っていることに部分的に着想を得たと語った。
同社は年間を通じて、15%割引や季節休暇の割引セットなど、さまざまなキャンペーンをコンスタントに実施している。しかし、同ブランドが1ドルで商品を販売するのは初めてのことだ。
このセールが赤字にならないようにするため、いくつかの規則があった。顧客は割引を受けるためにプロモーションコードを使用する必要があり、送料無料の下限である50ドル(約6950円)を下回った場合は配送料を払う必要があった。さらに、1人につき1つの商品に限られていた。
アーバンスキンRxのマーケティングディレクターを務めるケラン・ルック・ロイ氏は、「期間限定セール」の緊急性が、ウェブサイトでのセッションの増加というハロー効果を生み出し、それによって多数の新規顧客がほかの商品も見て回ったことを確認した。
ロフ氏は、初めてアーバンスキンRxの製品を購入する人たちに、より身近に感じてもらうために、チームはあえてグリコーリックパッドを選んだという。「当社には40のSKU(在庫管理単位)があるが、グリコーリックパッドは、さまざまな肌の問題に効果が期待でき、誰でも使えるものだ。同時に、身体に注目したスキンケア、という現在のトレンドとも結びついている」と同氏は述べる。
このプロモーションで得られたコンバージョンの約50%は新規顧客だったとロフ氏は述べる。今後1年間、同社はこれらの顧客の支出を観察し、リターゲティング・プロモーションによって顧客の維持を図る。
オーガニックに顧客獲得を実現する手法
このように価格を大幅に引き下げることには、マイナス面もある。このセールの取引にはほかの製品も含まれていたとはいえ、「AOV(平均注文金額)が減少する。当社はこの1年間にこの問題と優先的に取り組んできた」とロフ氏は述べる。しかし、この新しいグループの顧客から今後生み出される売上によって、このトレードオフを相殺することができると同氏は考えている。「当社の新しい顧客の50%以上は30日以内に再度訪問してくれるため、リスクを冒すだけの価値はあったと感じている。実際のところ、広告コストの状況を考えれば、現在は、顧客の獲得が最優先だ」と同氏は述べた。
同社は当初、報道で取り上げられることによって、リアルタイムでセールを促進したいと考えていた。「ライブでの報道が間に合わなかった。そのため、皮膚科専門医のインフルエンサーにメッセージを送り、彼らのフォロワーに商品のことを伝えてくれるよう依頼した」とロフ氏は話した。
金利の上昇とインフレが収まる気配がないなかで、eコマースのブランドは成長を阻害する多くの課題に直面している。最近では、AppleのiOS 14更新により引き起こされた需要減少によって、ナイトウェアのD2C新興企業であるルーニャ(Lunya)が破産を申請した。デジタル広告への依存から抜け出すため、D2Cブランドはより安価で効果的な戦略によって顧客獲得を試みている。
eコマース成長アドバイザーのアレックス・グレイフェルド氏は、ユーザー生成コンテンツから、潜在顧客の注目を集めるためのクリエイティブなセールまで、さまざまな方法があると語る。アーバンスキンRxが行ったようなフラッシュセールは、頻繁に行うのは難しいが、躊躇している顧客を転換させるために思慮深く活用することができる。この戦略はサンプリングと似ており、お得なセールを活用したい人々を引きつけ、新しいスキンケア商品を試すきっかけを作ることができる。「誰もが、顧客をオーガニックに獲得して広告料金を節約するための新しい戦略をテストしている」と、グレイフェルド氏は述べた。
さまざまな戦術を試す価値
実際に、現在の経済環境において、アーバンスキンRxのようなD2Cブランドは、特に小売店で競合他社との競争に勝つために、さまざまなプロモーション戦術を試す必要があるとロフ氏は語る。
たとえば7月には、アルタと提携してセールを行った。このセールは、アルタでアーバンスキンRxの商品を20ドル(約2780円)分購入すると、アーバンスキンRxのウェブサイトで使える20ドルのギフトカードを受け取れるというものだ。ほかには、ターゲットの買い物客限定で、8月のビヨンセのコンサートを観に行く旅行が当たるものも実施した。ロフ氏によると、このコンテストが4月に発表されて以来、ターゲットでの同ブランドの売上高は約10%増加したという。これに対して、ターゲットでの買い物で、スターバックス(Starbucks)のコーヒーが無料になるプロモーションは目立った効果がなかった。「しかし、何がうまくいくかを知るためには、テストを続けていくことが大切だ」と同氏は述べた。
大幅割引について、同氏は「過剰在庫に悩んでいるなら、そのようなキャンペーンを行う意味があるだろう。しかし、戦略的に行う必要がある。もっとも売れている商品を割り引いて、その商品の売上を減らすべきではない」と、同氏は付け加えている。
アーバンスキンRxは、1ドルセールの成功を受け、今後も同様なキャンペーンを戦略化していくとロフ氏は述べる。「昨年リリースした男性向けコレクションがあり、この商品のブランド認知を行う」。
[原文:DTC Briefing: Why Urban Skin Rx tested a $1 flash sale to acquire new customers]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)