コラボレーションは小売業界ではすっかり主流になり、今や各ブランドにとってコラボレーションの追及は「すべきか」ではなく「いつすべきか」という問題になりつつある。
コラボレーションはうまく行けば、ブランドを新しいオーディエンスに紹介し、転換の機会となる可能性がある。例としてクロックス(Crocs)は、ジャスティン・ビーバーやポスト・マローンなどのミュージシャンや、KFC(ケンタッキーフライドチキン)などのファストフードチェーンとのキッチュなコラボレーションを背景に、この5年間で自社を建て直し、売上を成長路線に戻した。しかし、コラボレーションが退屈な、または金儲けの要素が強すぎれば、ニューバランス(New Balance)が最近行ったブルーボトル(Blue Bottle)とのコラボレーションのように、ニュースやソーシャルメディア上で広く非難されるリスクもある。
そのため、コラボレーションを確実に成功させるための明確な方程式は存在しない。多くの場合、良好なパートナーシップを作り上げるためのアドバイスは、「本物であること」「志を同じくする2つのブランドを巻き込むこと」といった大雑把な一般論が語られる。しかし、これが実際に意味するものは、両者がそれぞれ独自に作り出せるものからあまりにかけ離れたものであってはならないということだ。また、ブランドが掲げているものと正反対のブランドとは組まないということも意味する。さらに、厳しい経済環境において、多くのブランドはパートナーシップにおいていくつもの目標を追い求める。コラボレーションはしばしば高額になるため、メディアで取り上げられるだけでなく、人々が店舗に足を運んだり、顧客獲得コストを下げるのに役立つものでなければならない。
食肉サブスクリプション新興企業のブッチャーボックス(ButcherBox)の創設者マイク・サルジェロ氏は最近、2024年が「パートナーシップの年」になるとソーシャルメディアで予想し、顧客獲得コストの増加をその理由に挙げている。しかし、これは何年にもわたってパートナーシップを推進する要素として数えきれないほど言及されてきたものにすぎない。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
コラボレーションは小売業界ではすっかり主流になり、今や各ブランドにとってコラボレーションの追及は「すべきか」ではなく「いつすべきか」という問題になりつつある。
コラボレーションはうまく行けば、ブランドを新しいオーディエンスに紹介し、転換の機会となる可能性がある。例としてクロックス(Crocs)は、ジャスティン・ビーバーやポスト・マローンなどのミュージシャンや、KFC(ケンタッキーフライドチキン)などのファストフードチェーンとのキッチュなコラボレーションを背景に、この5年間で自社を建て直し、売上を成長路線に戻した。しかし、コラボレーションが退屈な、または金儲けの要素が強すぎれば、ニューバランス(New Balance)が最近行ったブルーボトル(Blue Bottle)とのコラボレーションのように、ニュースやソーシャルメディア上で広く非難されるリスクもある。
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そのため、コラボレーションを確実に成功させるための明確な方程式は存在しない。多くの場合、良好なパートナーシップを作り上げるためのアドバイスは、「本物であること」「志を同じくする2つのブランドを巻き込むこと」といった大雑把な一般論が語られる。しかし、これが実際に意味するものは、両者がそれぞれ独自に作り出せるものからあまりにかけ離れたものであってはならないということだ。また、ブランドが掲げているものと正反対のブランドとは組まないということも意味する。さらに、厳しい経済環境において、多くのブランドはパートナーシップにおいていくつもの目標を追い求める。コラボレーションはしばしば高額になるため、メディアで取り上げられるだけでなく、人々が店舗に足を運んだり、顧客獲得コストを下げるのに役立つものでなければならない。
食肉サブスクリプション新興企業のブッチャーボックス(ButcherBox)の創設者マイク・サルジェロ氏は最近、2024年が「パートナーシップの年」になるとソーシャルメディアで予想し、顧客獲得コストの増加をその理由に挙げている。しかし、これは何年にもわたってパートナーシップを推進する要素として数えきれないほど言及されてきたものにすぎない。
リソースの共有
メタ(Meta)とGoogleの従来のチャネルはどんどん高価になるばかりだと、サルジェロ氏は筆者に語った。そして、以前にも増して多くの企業がブッチャーボックスに接触し、「メールのリストを共有しないか?」や「共同でプロモーションをしよう」という提案をしてきているという。ブッチャーボックスはこれまであまりパートナーシップを行わなかったが、来年は増やすことを検討していると、同氏は述べる。
ブランドが提携するもっとも簡単な方法のひとつは、ソーシャルメディアで共同ブランドのプレゼントキャンペーンを行うことだ。多くの場合、このようなプレゼントキャンペーンに参加するには、該当ブランドのメーリングリストに登録するか、ソーシャルメディアで両方のブランドをフォローする必要があるため、これによって各ブランドは、メール購読者やソーシャルメディアのフォロワーを増やすことができるという利点がある。
2つのブランドが協力して共同ブランドの商品を作り出すのは、これより多くの労力が必要になるが、実際の売上を促進できるという利点もあり、また、新しい商品を実際にリリースするので、メディアで触れられる機会も増えることになる。
スタッズ(Studs)の共同創設者で最高ブランド責任者を務めるリサ・ババーズ氏は、ピアスの新興企業である同社にとって、コラボレーションは2019年の創設以来重視してきたという。「我々は常に、イヤースケーピングは自己表現と個人個人のスタイルを解放するものだと感じてきた」と同氏は述べる。よりシリアスでプレミアムなジュエリーブランドとは対照的に、スタッズはもっと「楽しい」新興企業という立場にありたいという。
そのため、コラボレーションはスタッズにとって、ジュエリーにこれまで見られてきた商品の限界を押し広げる方法のひとつになる。
スタッズがこれまで行ってきたコラボレーションには、セレブリティゴシップサイトのデュースモワ(Deuxmoi)と共催したホリデーパーティーや、インフルエンサーのセレナ・ケリガンとの共同ブランドのコレクションなどがある。
9月下旬には、他社とのコラボレーションによる初の商品シリーズをリリースした。シェイクシャック(Shake Shack)とのパートナーシップでデザインされた、ハンバーガーをモチーフにしたイヤリングとイヤースケープのセットだ。
ババーズ氏によると、スタッズがシェイクシャックとの提携するアイデアは、以前のコレクションから得たものだという。スタッズは数年前にニューヨークをテーマにしたコレクションとして、ダンプリングや、マティーニ、ベーグル、ハンバーガースタッドなどの商品をリリースして人気を博した。
ヒットするコラボレーションの要素
コラボレーションが成功するための要素について問われたとき、特にアパレルやアクセサリーの分野においては「身に着けられる」ことが必要で、自社が独自に製造するものとかけ離れていてはいけないと、ババーズ氏は述べる。
これと同様に、飲料ブランドであるサンゾー(Sanzo)のマーケティング担当シニアディレクターを務めるキンバリー・ラム氏は、優れたコラボレーションは、「組み合わせたブランドに対して何か価値のあるものを作り出す」ことだと筆者にメールで教えてくれた。サンゾーは今夏、飲料分野以外で初の共同ブランド商品を発売し、サンゾーをテーマにしたビックルボール用パドルや、眼鏡ブランドのコブリー(Covry)とのパートナーシップによる、飲料フレーバーの色をイメージしたサングラスといった商品を作った。
新しいオーディエンスにリーチできることもまた、重要な考慮事項だ。カウボーイブーツブランドのテコバス(Tecovas)は最近、ファッションデザイナーとの初のコラボレーションとして、クリストファー・ブロック氏が製作したカプセルコレクションをリリースした。
「成功するコラボレーションとは、既存の消費者に対して価値と興奮を与えると同時に、新しいオーディエンスにリーチする助けになるものだ」と、テコバスのパートナーシップ担当シニアディレクターを務めるロビン・ウェッジワース氏はメールで語った。テコバスが現在注力している主要な成長分野は女性向けビジネスで、ブーツや、ドレス、農園をイメージしたスカーフなどを取り揃えたコレクションは、まさにその一助になったと同氏は付け加えた。
既存のオーディエンスにアピールすることは、そのブランドがコラボレーションでクリエイティブになれないという意味ではない。スタッズのように、キッチュで楽しいブランドとして知られているのであれば、より多様なコラボレーションを試みる余地がある。そしてもちろん、シェイクシャックとのコラボレーションの場合、スタッズは文字通り過去にハンバーガーのイヤリングをすでに作っていた。
しかしこれは、自社が表現するものと正反対のブランドとは提携できないということも意味する。たとえ、それによってより多数のオーディエンスにリーチできる可能性があるとしてもだ。たとえばサルジェロ氏は、ブッチャーボックスは健康やウェルネス分野におけるほかのブランドと提携したいと語る。そして、「たとえばトゥインキー(Twinkie)のようなブランドとは提携しない」と付け加えた。
肌着の新興企業のパレード(Parade)は1月、共同ブランドの商品ラインにおいてコカコーラ(Coca Cola)と提携したことで、ソーシャルメディアにおいてちょっとした反感を買うことになった。Redditやインスタグラムのユーザーは、パレードがサステナビリティを重視していると語りながら、多くのプラスチック汚染を引き起こしているコカコーラと提携したのはどういうことかと疑問を提起するコメントを残した。
いくつかのブランドは、顧客獲得コストの低減のためにパートナーシップを試しているが、通常はどれだけパートナーシップが成功しても、効率的なマーケティング活動を生み出すために十分ではないと、サルジェロ氏は語る。
たとえば、パレードはコカコーラとのコラボレーションによって怒りを買ったが、同時にジューシークチュール(Juicy Couture)やガニー(Ganni)など、人気で話題性のあるファッションブランドとのパートナーシップも実現させた。しかし、パレードが独立のブランドとして運営し続けるには、それでも十分ではなかった。新興企業の同社はランジェリー製造業者のアリエラアンドアソシエイツ(Ariela and Associates)に売却されたと報道されたが、その際、創設者のカミ・テレズ氏は、自分は解雇され、契約から事実上何も受け取れなかったと、従業員に語った。
そのため、コラボレーションをビジネス推進の大きな要因とするには、多くの場合、何年にもわたるいくつもの投資が要求される。クロックスのブランドプレジデントを務めるミシェル・プール氏は、フットウェアブランドである同社がポレックスポッド(Pollex Pod)コレクションのため、クリエイティブディレクターとしてデザイナーのサレヘ・ベンバリー氏と2年契約を結んだことを発表した最近の声明の中で、「コラボレーションと商品パートナーシップは、何年にもわたってブランド戦略の中心となっている」と語った。
成功の適切な指標を見つける
実際に、今日のD2Cブランドの経営者たちは、パートナーシップの限界を認識している。企業が、たとえばクロックス程度の規模に成長し、有名デザイナーやセレブリティと話題性のあるコラボレーションを毎年いくつも行えるようになるまで、パートナーシップは売上を大きく推進する要因にはらない。むしろ、長期的に話題を呼ぶための方法となるのだ。
しかし、だからといってブランドがコラボレーションの目標を持たないわけではない。今、新興企業が特に注目している分野のひとつは、実店舗での販売がより重要になるなか、コラボレーションを利用して店舗への訪問を促進することだ。
たとえば、サンゾーがこの夏、パートナーシップを増やすことを決定した理由のひとつは、取り扱い店が約3000店舗に増加し、サンゾーをイメージした眼鏡をインスタグラムで見つけた人々に、地元の食料品店でもサンゾーの飲料を手に取ってもらえるよう、より簡単に働きかけることができるようになったからだという。「これらのパートナーシップにより、ライフスタイル分野で自社ブランドの名を広めることができるようになったのと同時に、競合他社が多い飲料カテゴリーで差別化を行えるようになった」とラム氏は述べる。
同様に、ババーズ氏は、シェイクシャックとのコラボレーションでは、訪問客を増やすことが重要な焦点であったと述べた。コレクションをを宣伝するため、スタッズは19スタジオのうち11スタジオで、レストランチェーンであるシェイクシャックのハンバーガーやシェイクを提供する予定だ。「これははじめての試みだ。スタッズが全国にスタジオを保有し、シェイクシャックのような全国ブランドと提携できるようになったこと自体はじめてだからだ」と、同氏は述べている。
ババーズ氏は、スタッズでは、パートナーシップが成功したかどうかを判定するために3つの基準を見るという。パートナーシップによってPRの言及が促進されたかどうか、ソーシャルメディアのコンテンツ、特に「我々が気になるクリエイター」からのコンテンツが生み出されたか、そしてもちろん売上だ。
それでも、「我々は決して、こうした提携が巨額の収益をもたらすことを期待しているわけではない。ブランドにファンがいる場合、そのファンは、ブランドがエキサイティングで楽しいことをしたり、クールなものを見せてくれないかと期待しているのだ」と同氏は述べている。
[原文:DTC Briefing: The new rules of brand collaborations]
Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Studs