多くのブランドにとって、ホリデーシーズンの計画が実際に始まるのは夏の間だ。しかし今年はさらに早く始まっている。紳士服ブランドのマックウェルドン社のCEOであるブライアン・バーガー氏は、同社が今年の第1四半期の終わりにはホリデーシーズンの計画を開始していたと述べている。これは通常のスケジュールより3カ月も早い。
夏も終わろうとしている現在、eコマースの経営者はすでにブラックフライデー、そしてその後を見据えている。
多くのブランドにとって、ホリデーシーズンの計画が実際に始まるのは夏のあいだだ。しかし今年はさらに早く始まっている。紳士服ブランドのマックウェルドン(Mack Weldon)社のCEOであるブライアン・バーガー氏は、同社が今年の第1四半期の終わりにはホリデーシーズンの計画を開始していたと述べている。これはマックウェルドンの通常のスケジュールより3カ月も早い。
昨年のホリデーシーズンにオンラインショッピングを行った人々は記録的な数にのぼった。これは、UPSやフェデックス(FedEx)などの運送業者に過重な負荷がかかっていたことを意味する。D2Cブランドはホリデーシーズンのために十分な在庫を確保し、消費者に遅延なく配達するため苦闘していた。
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今年のD2Cブランドは、在庫の製造と輸入をさらに前倒しにすることで問題をあらかじめ解決しようと試みている。しかし、デルタ変異株の脅威が増大するにつれ、自社の緊急事態対応計画の一部に問題が生じる可能性は否定できない。そして、このホリデーシーズンにブランドが直面する課題はそれだけではなく、Appleのプライバシー関連方針の一部変更により、デジタルマーケティングの情勢には大きな変動が起きている。
各ブランドはホリデーシーズンの計画中だが、4つのD2C新興企業のCEOに対して、第4四半期(2020年と同様に多忙と思われる)の計画で最も重視している点について質問することができた。得られた回答の要点を以下に紹介しよう。
港湾における遅延とコンテナ不足をまず解決することが、すべての企業の関心事:バーガー氏は、「昨年の(ホリデーシーズン)における最大の課題は、実際にはサプライチェーンの国内部分に関するものだった」と述べている。フェデックスやUSPSなどの運送業者にはeコマースの注文すべてに応じるため十分な容量がなく、一部の企業は予期しない配送制限を受けることになった。バーガー氏は、今年の運送業者はeコマースの注文に応じるため十分な体制を整えていることが期待されると語っている。
しかし、ホリデーシーズンに向けて自社の最大の懸念は何であるかという問いに対して4社のCEOは全員が、依然としてホリデーシーズンへ向けての国際的なサプライチェーンの遅延が最大の懸念であると回答している。具体的には配送コンテナの不足や、ロングビーチ(Long Beach)やロサンゼルス港(Los Angeles Ports)における継続的な遅延である。結局のところ、企業が十分な製品をホリデーシーズンに間に合うよう米国に輸入できなければ、この期間の販売目標を達成する大きな妨げとなる。
もっとも明らかな解決策は、第4四半期よりずっと前に製品を国内に持ち込むことで、多くの企業はすでにそのために動いている。しかし、これらの追加の在庫すべてをスケジュールより前に輸入することは、それ自体が余分なコストを引き起こす結果になる。加重毛布ブランドのバーラビー(Bearaby)社のCEOであるカトリーン・ハム氏は、同社の3つの倉庫が空いている(昨年は1つ)と回答している。
ハム氏は、2つの供給元(それぞれ中国とインドに拠点がある)が、両国における感染件数の増加のため、それぞれ逆の時期に何度も操業を停止したことがバーラビー社の業務の妨げになったと説明し、「昨年は、あちらを立てればこちらが立たずという苦労の連続だった」と述べている。氏は今年も同じ苦労が続くと予測している。
全世界でのコロナウイルスの感染件数増大により工場の生産はさらにひっ迫:質問を受けたすべてのCEOは、米国におけるコロナウイルスの感染件数の増大(ほとんどはデルタ株によるもの)が自社の操業に劇的な影響を及ぼすとは予測していなかったと回答している。結局のところ、これらの企業の多くは昨年の時点でリモート作業に慣れていたためだ。
しかし、米国におけるコロナウイルスの感染件数が急増するにつれて、これらの企業は再開を期待していた活動の一部を中断せざるを得なくなるだろう。たとえばバーラビー社のハム氏は、同社が来年までオフィスに復帰できないだろうと述べている。調理器具ブランドのキャラウェイ(Caraway)社の創設者であるジョーダン・ネイサン氏は、最近の感染件数の急増のため、同社が今年後半に再開予定だった対面式のマーケティング活動の一部を見直すことになったと述べている。
しかし、全世界で起きている事態に対する懸念も、国内と同様に存在する。そして、ほかの諸国でも引き続きコロナウイルスの感染件数が増大していき、海外の主要なパートナーが一時的な操業停止を余儀なくされ、港湾での遅延が悪化し、より多くの工場が停止すれば、ホリデーシーズンの計画はさらに複雑化するものと予測される。
たとえば、マックウェルドン社のバーガー氏は、氏が関係した工場(そのほとんどは東南アジア全体に所在する)のうち停止したものはほぼないものの、今年は「アジア全体で工場の停止が見られるだろう」と語っている。
新しいマーケティング情勢への適応:各ブランドのホリデーシーズン向け計画にとって脅威となるのは、コロナウイルスのパンデミックだけではない。この休暇シーズンにおける新しいマーケティング情勢への適応も必要だ。具体的にいうと、次のホリデーシーズンはiOS14のアップデートが行われてから最初の休暇シーズンになる。iOS14ではFacebookの広告追跡調査に「オフ」を選択した顧客を対象とする広告が制限される。
バーラビー社のハム氏は、iOS14のアップデートの結果、氏の最高事業成長責任者は限定製品や無料配布について協力を求めるほかの企業からの要請をこれまでになく多く受けていると語っている。これらは、新しい顧客を集めるためにFacebookにおける広告よりも費用対効果が高い方法と考えられている。この傾向はホリデーシーズンまで続くと氏は予測している。
どのホリデーシーズンでも同じだが、より多くの企業、そしてより多くの実店舗小売が新しい顧客を集めるためオンラインで広告を行うにつれ、オンラインでのマーケテイングコストは上昇すると予測される。
グリーンクリーニング供給会社のグローブコラボレーティブ(Grove Collaborative)社のCEOであるストゥー・ランデスバーグ氏は、メールで「eコマースが昨年劇的に増大したことから、オンラインでのトラフィックの競合はかつてないほど激化している。これにより、さまざまな時期にさまざまな単位の経済の組み合わされた、多くのビジネスモデルが困難に直面するだろう」と語っている。
質問を受けたすべての創設者は、昨年の休暇シーズンに得られた教訓から、今年の狂乱を生き残るうえで優位に立てるものと確信していることを強調していた。
キャラウェイ社のネイサン氏は、「自社のデジタルの経験とサービスを機敏に組み立てられる、デジタルネイティブでeコマースベースのビジネスが、この休暇シーズンにもっとも成功するだろう」と語っている。
[原文:DTC Briefing: Startups are already preparing for another chaotic holiday season]
Anna Hensel (翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu