ほとんどの小売会社はブラックフライデーからクリスマスまでの時期にできる限り多くの売上を達成することに全力集中しており、1月はマーケティングを減らす。しかし、ワークアウト用のサプリメントやビタミンを販売する新興企業にとって、この時期は最大の売上が見込める期間のひとつがはじまったところだ。
こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります
健康とウェルネスのブランドにとって、1月は新たに年末商戦に相当する繁忙期になった。
ほとんどの小売会社はブラックフライデーからクリスマスまでの時期にできる限り多くの売上を達成することに全力集中しており、1月はマーケティングを減らす。しかし、ワークアウト用のサプリメントやビタミンを販売する新興企業にとって、この時期は最大の売上が見込める期間のひとつがはじまったところだ。
Advertisement
サプリメントブランドのアスレチックグリーンズ(Athletic Greens)で最高マーケティング責任者を務めるマット・カリントン氏は、「1月は当社にとって1年でもっとも重要な月だ」と私に語った。健康とウェルネスのブランド3社のエグゼクティブたちが、新年には多くの人々が抱負として健康増進を掲げるため、1月が新しい顧客を獲得するための大きな機会だと筆者に述べた。
これらの企業は今年、多くの戦略を採用しようとしている。大きなブランドでは、Facebookに加えてポッドキャストやTV広告などのチャネルへの投資を増やすことで、顧客が特定のサプリメントやビタミンのバンドルを購入するように誘導を試みている。これに対して、新興企業はブログ投稿や、自社のSEOランキングをあげるよう設計されたほかの教育的なコンテンツを通して、自社商品の評判を広めることに注力している。
新しい年、新しい顧客、新しい変化
年始直後の数週間は、健康とウェルネスのブランドにとって重要な期間になる。カリントン氏は、アスレチックグリーンで1月に獲得する新規顧客は、12月と比べて250%から300%も増加すると語る。同社は2022年も同様な新規顧客の増加を期待している。
ほかの健康とウェルネスのブランドのエグゼクティブも、新規顧客を獲得するには新年が重要な時期であるというカリントン氏の所感に同意している。プロバイオティクスサプリメントのブランドであるシードヘルス(Seed health)の共同創設者であるアラ・カッツ氏は、「メンバーシップモデルとして、当社は『新しい年、新しい自分』という心理が、健康とセルフケアの新しい分野としてマイクロバイオームとプロバイオティクスに興味を抱いているメンバーをもたらすということに注目している」と電子メールで語った。
しかし、エグゼクティブたちは、この時期に顧客の維持も課題となり得ることを認めている。ブルームバーグ(Bloomberg)によるフィットネスアプリのストラバ(Strava)に関する1月5日のプロファイルによれば、同社のエグゼクティブは社内で1月17日を「断念の日(quitter’s day)」と呼んでいるという。これは、新年に急増したトラフィックが一般にこの日前後に激減するためだ。
アスレチックグリーンは主にサブスクリプションモデルで運営され、サブスクリプションの月額は現在79ドル(約9090円)からだが、このサプリメントを1回購入した場合の価格は99ドル(約1万1400円)だ。カリントン氏は、「1月には常に、当社の非常に高い顧客継続率を維持するための労力が多少強まる」と述べている。「このため、チームは継続率向上を可能にするため多くの投資を行う」。同氏は、現在の継続率の統計を明らかにしていない。
ノイズのなかでの前進
多くの人々が新年の抱負を設定し、すぐに断念してしまうことから、筆者が話を訊いたエグゼクティブはすべて、1月の自社のマーケティングメッセージにおいて一般に、人々に対して抱負を達成するより「習慣」を作り上げるため役立つような言葉を使うと述べていた。自社の特定の製品の利点について人々に教化するのもまた重要な点で、それらの人々がまだ調査の初期段階であるなら、自社ウェブサイトに戻ってくるよう各種の方法で仕向けることも重要だ。
しかし、それぞれのブランドが採用する戦略はその規模によって異なる。アスレチックグリーンの場合、2021年は全般的にブランドへの認知を広めるため重要な年だった。
同社は11年の歴史において最初の外部資本ラウンドを行い、ルイス・ハミルトン氏、シンディ・クロフォード氏、ロビン・アルソン氏などセレブの投資家を呼び入れた。同社は7月に、年間ランレートが1億ドル(約115億円)に達したと発表した。カリントン氏は、更新後の2021年の収益額を明らかにしていない。
その結果、同社は2021年にTV、OOH、ダイレクトメールという3種類の広告チャネルにおける「スケーリング」に注力したと、カリントン氏は語っている。
新年は、2021年にうまく働いた活動を繰り返すことが計画されている。「当社は、自社が多くの学びを得ており、スケーリングと有効な方法に関して1月に大きな成功を収められるという考えに基づいて、その前の年を通して自社のチャネルをテストする」と同氏は述べている。同氏は、アスレチックグリーンのほかの重要な広告チャネルとして、ポッドキャストとインフルエンサーマーケティングのふたつを挙げている。
ほかの新興企業にとっては、新しいウェルネスの習慣を探している顧客を見つけ、自社ブランドをその顧客に紹介することが焦点となる。設立から2年のサプリメントブランドであるエイラ(Aila)の創設者であるケイティ・ウェブ氏は、「人々がこの時期に当社のブランドを見つけただけで、まだ購入する気がないなら、当社はそれらの人々が購入を考えているコンテンツを調べ、メーリングリストにサインアップする機会を必ず与えるようにし、場合によってはあとで割引を受けられるようにする」と述べている。
ウェブ氏は、同氏の会社が過去数年間にわたって特に重視してきたのは、ブランドのSEOランキングを上げるため役立つブログと記事の公開だったとしている。また、多くの人々が各種の新しい健康商品について調べる1月には、この戦術へのより多くの投資が計画されているという。同氏は、自社商品に含まれている特定の原料、たとえばスピルリナの利点についてのブログ投稿が、従来から良い効果があったと述べている。
これに対してカッツ氏は、シードヘルスは自社のソーシャルメディアチャネルで「消化管ブームを紐解く」キャンペーンを行い、人々が「錯綜としたプロバイオティクスの世界」についてもっときちんと調べるよう勧めると語った。
1月は顧客の獲得だけでなく、今後の展望を占う月となる可能性もある。カリントン氏は、新しい顧客と販売を呼び込むだけでなく、アスレチックグリーンのような健康とウェルネスのブランドが今後1年間にわたってどのような種類の成長を見込めるかを適切に予測するためにも、1月が重要だとしている。
「これによって、新しい年の操業に向けたベースラインが得られ、当社の計画がその年、この場合は2022年にどのように実行されるかを明確にするため役立つ」とカリントン氏は述べている。
[原文:DTC Briefing: For health and wellness brands, January is the ‘most critical month’]
Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:長田真)