「会員モデル」導入で、顧客維持を狙うネット直販ブランド

オンライン下着ショップのミアンディーズ(MeUndies)が、サブスクリプションビジネスを開始して7カ月。同社はこの方針に変更を加えた。

これまでのシステムでは、毎月定額を支払うことで、カスタマーは新しい下着を定期的に受け取ることできた。だが今回、その方式を取りやめ、サブスクリプションを簡単に解約、または月によってスキップできるように改定。そのかわりに、カスタマーは下着を割引価格で購入できるようになり、さらに限定版商品や、下着以外の商品も割引で購入できるシステムにした。ロイヤルカスタマーからの定期的な支払いをひとつにまとめたビジネスモデルといえる。これは同社が華やかなマーケティング戦略よりも、既存のカスタマーの維持に重点を置いていることを示している。ミアンディーズの創設者兼会長を務めるジョナサン・ショクリアン氏によると、同社では会員からの収益が非会員の倍に達しており、全収益の50%を占めているという。

サブスクリプションモデルの魅力は、獲得したカスタマーを最初の購入以降、常連客にできる点にある。ミアンディーズが現在の会員モデルに舵を切った理由もそこだ。カスタマーが登録を行うと、割引価格で同社の商品を毎月購入することになる(男性会員は16ドル、女性会員は14ドルだが、スキップも取り消しも可能)。非会員の場合、下着2枚の価格は男性20ドル、女性16ドルとなっている。さらに会員になると、限定版製品(会員限定の商品も存在する)の購入や、スウェットパンツなどほかの商品を割引価格で購入できるという利点もある。

曲がり角のDTCブランド

日用品の分野では、カミソリブランドのダラーシェーブクラブ(Dollar Shave Club)やビリー(Billie)、タンポンブランドのローラ(Lola)をはじめ、DTC(Direct to Customer:ネット直販)ブランドが広範な販売ネットワークの代わりに、サブスクリプションモデルを採用することで収益を向上させてきた。

だが、デジタルネイティブのブランドもまたカスタマーの獲得から維持へと重心を移しており、これまでのスケーリングの手法とは異なる、独創的な方法でカスタマーの囲い込みをはじめている。たとえばFacebookのリターゲティングやGoogleの検索広告などもこれにあたる。極めて競争の激しい小売業界では、実験的な手法、たとえば割引価格でのサブスクリプションサービスやメール登録による独占商品の提供といった手法が導入され、会員によるビジネスモデルが急速に台頭しつつある。

これについてカスタマー分析企業であるカストラ(Custora)の最高経営責任者(CEO)のコレー・ピアソン氏は、「ロイヤルカスタマーと会員というビジネスモデルを検討するデジタルネイティブなブランドは増えつづけている。これはデジタルネイティブなブランドが、生涯価値(LTV)やリピート率、カスタマーの囲い込みといった要素をDNAがレベルで、極めて重要視しているという証左だ」と分析する。「昔ながらの小売企業もロイヤルカスタマーについて重視してきたが、それは購入や同一店舗での指標といった数字面での話だ。DTCブランドでは、極めて競争力のある方法でカスタマーの囲い込みを実施している」。

ロイヤルカスタマーの重要性

さらに、ブランド各社はロイヤルカスタマー向けに有料の魅力的な特典を用意している。たとえば、化粧品ブログのグロッシアー(Glossier)は会員向けに割引でスキンケア商品を提供しており、登録をうながすソーシャルコンテンツプラットフォームを立ち上げている。アウターウェアブランドのアライバルズ(The Arrivals)では、順番待ちのリストを利用してカスタマーの情報を集め、登録したカスタマー向けに新製品への早期アクセスを提供している。ピアソン氏は、こうした手法は会員主軸の戦略への第一歩と捉えている。

「ブランドが成長を続けるためには、一度きりの購入客だけでは不十分であり、リピーターの購入客が必要だ。毎月の支払いを伴うサブスクリプションは業界スタンダードかもしれないが、頻繁な購入やエンゲージメントを伴う会員モデルもまた、同じような効果が見込める」。

カスタマー研究プラットフォームのコンテンツスクエア(ContentSquare)で最高戦略責任者を務めるジーン・マーク・ベレイシュ氏は、クライアントであるブランドが、より多くの予算とリソースを、カスタマーの新規獲得ではなく維持に費やすようになっていると明かす。

同氏は次のように分析する。「数年前まで、デジタルマーケティングの資金は『トラフィックを構築し、検索やソーシャルからペイドメディアによるトラフィックを生み出す』ために使われていた。カスタマーの新規獲得を重視していたのだ。それが今では多くのブランドがカスタマーの囲い込みとユーザー体験、分析に重点を置いており、こうした分野のみに従事する社員でチームを構成している。明らかに、ロイヤルカスタマーこそが健全な事業のために必要で、一度きりのカスタマーでは事業の健全性は得られないという考えが浸透しつつある」。

ビジネスコンセプトの成功の証

ショクリアン氏は、ミアンディーズはいまでもFacebookやインスタグラム、Googleを活用してブランドの認知度を高め、新規顧客の開拓を行っていることを明かした。さらに同ブランドで新規に購入を行ったカスタマーのうち40%が会員になっているという。また、会社構造は従来のDTCブランドとは異なっていると語る。同社には会員サービスのための単一のチームがあるわけではなく、マーケティング、データ分析、プリントデザイン部門といった全部門に、こうした機能が導入されているのだ。

ショクリアン氏は次のように語る。「年に9から10回利用するカスタマーがいるとして、そのカスタマーに対して年に15から20回利用してもらえるようなモデルを紹介するのは当然のことだ。企業にとって想定できる収益というのは非常に重要であり、当社にとってもそれは同じだ。ロイヤルカスタマーが生まれるというのは、ビジネスコンセプトの成功の証であり、将来的な成長が見込める」。

ランジェリーブランドのアドア・ミー(Adore Me)やスポーツアパレルブランドのファブレティクス(Fabletics)をはじめ、会員が「VIP会員」になれる会員モデルを構築している企業も存在する。毎月一定額の支払いを行うことで、割引価格で商品を購入できるこのシステムは、ミアンディーズのオリジナルであるサブスクリプションモデルと似たものだ。これによって毎月カスタマーは、商品をチェックしに戻ってくる。ブランドにとって価値のあるカスタマーが定期的に購入する商品、購入しない商品はどれかがブランド側に伝わる仕組みだ。

パーソナライズした体験の提供

だが、課題も存在する。大半のDTCブランドは、商品価格の透明性をうたっている。小売における中間業者を排除することで、もっとも低価格で商品を提供するという自負があるためだ。会員と非会員のあいだで価格に差が生じることは、コスト構造の透明性という面では問題だ。

こうしたデジタルブランドの大半は、立ち上げから5年の節目を迎えており、価格ではなく特典という面で、会員モデルを構築するというオプションも検討すべき段階なのかもしれない。実際、ブランド各社は競争およびスケーリングにおいて、壁に直面している。これは、カスタマーは新しいものを買いたいからではなく、ブランドとのより深い関係性があるから購入していることの証左であり、それこそが、次の成長のために必須な要素となる。そこでカスタマーデータを活用する場面が生まれるのだ。

ベレイシュ氏は「カスタマーについて把握できていれば、有効な宣伝方法は明らかだ。把握できていなければ、価格を下げるしかない」と語り、次のように述べた。「消費者について理解していれば、単なる割引ではなく、その人向けにパーソナライズした体験を提供できる。会員モデルにもとづいた商品やコンテンツ、限定販売やイベントを勧めることができる。熱心なファンがいるブランドは、金を払うだけの価値があるものを生み出せるということだ。今後、我々はそのような変化を目にすることになるだろう」。

Hilary Milnes(原文 / 訳:SI Japan)