D2Cブランドたちが、広告費をAmazonにつぎ込んでいる。この戦略転換は、新型コロナウイルスのパンデミックがもたらしたものだ。人々が店頭での買い物を控え続けるなか、ブランドは対面でのアクティベーションに費やすはずだった費用を、同プラットフォームに再配分しているのだ。
D2Cブランドたちが、広告費をAmazonにつぎ込んでいる。この戦略転換は、新型コロナウイルスのパンデミックがもたらしたものだ。人々が実店舗での買い物を控えつづけるなか、ブランドは対面でのアクティベーションに費やすはずだった費用を、同プラットフォームに分配しているのだ。
たとえば、炭酸飲料のD2Cブランドであるポッピー(Poppi)は、Amazonにおける初期段階での成功を受け、同プラットフォームでの広告支出を倍増させたと、創業者のアリソン・エルズワース氏は述べる。正確な数字は明かされなかったものの、ポッピーのAmazon広告費用は2020年3月以降で500%以上も増加していると、広報担当者はeメールで述べている。
インフルエンサーの接待やフィールドマーケティングを意図して確保されていた広告・マーケティング費用を、eコマースに再配分しているブランドはポッピーだけではない。ビタミンサプリのD2Cブランド、オリー(Olly)は、広告費をインスタカート(Instacart)やAmazonにつぎ込んでいると、同社のマーケティングコミュニケーション担当責任者を務める、エミリー・ツワーナー氏はいう。
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一方、プラットフォーム広告の比重を高めるD2Cブランドは、今後も増えつづけるだろうとバイヤーたちは見込んでいる。消費者は行動を変化させ、自宅にとどまったまま安全にスマートフォンで日用品を注文し、家の前まで届けてもらうことに、いまや多くの人々がすっかり馴染んでいる。この変化に伴いD2Cブランドたちは、プラットフォームでの存在感を強める必要に迫られているという。
検索広告が鍵
Amazonにおいて、オリーは広告費の大部分を検索とAmazon DSPに投資している。パンデミック発生から1年近くが経つなかで、ブランドの急速な成長には検索広告が大きなエンジンになるというのが、オリーの戦略だという。
こうしたD2Cブランドの幹部たちは、もしコロナ禍が業界のデジタル広告移行を加速させていなければ、eコマースプラットフォームへの投資は、これほど迅速には進まなかっただろうと語る。パンデミック以前、多くのブランドが認知獲得に重きを置いていたのは、DIGIDAYが以前に報じた通りだ。しかし多くの消費者が自宅で過ごすようになったいま、eコマースで主導権を握ることが、ブランドやバイヤーにとっての最重要課題になっている。こうした背景もあり、Amazonやインスタカートなど、eコマースプラットフォームに投下される広告費増加は、パンデミックの終息後も長く続くだろうと考えられている。
「加えて、消費者の行動やメディア習慣が変化したため、我々はそれを踏まえ、投資のシフトを迫られた」と、ツワーナー氏はeメールに書いている。
オリーは、マーケティングチームの予算額を明かさなかったものの、この1年で広告費を倍増させた結果、「短期間に認知度が大きく向上し、地盤を固めることができた」と、ツワーナー氏は述べている。
まったくの別世界
一方ポッピーは2020年の春、製品プロモーションのため、ビジネスをテーマにしたリアリティテレビ番組『シャークタンク(Shark Tank)』に出演している。これにより、多くの消費者がAmazonのブランドページに殺到したと、エルズワース氏はいう。「あれがAmazonでのデジタル広告強化に舵を切る転機だった」。
ポッピーのデジタル広告費の大半を占めるのは、インフルエンサーマーケティングだ。その割合は全体の60%にのぼるが、それに加えてAmazonの予算は別に確保されているという。エルズワース氏によれば「Amazon広告は、インフルエンサーマーケティングとは別世界」だという。たびたび発令された外出禁止令も、Amazon広告の優先度を押し上げた。
「パンデミックは、我々のAmazon広告重点化を促した」と、エルズワース氏は述べる。「対面の現場で展開するものをすべて、デジタルに切り替える必要があった」。
それ以来、ポッピーは売上の増加を受け、Amazonの検索広告やAmazon DSPに予算を投じてきた。2020年3月以降には、ポッピーの売上は劇的に増加。4月には同社で最高のパフォーマンスを誇るバラエティパックのコンバージョン率にも顕著な増加が見られたと、広報担当者は(具体的な数字は伏せつつ)eメールで述べている。
消費者の行動変化は「永続的」
今後も、消費者がオンラインショッピングに価値を見出しつづけるのは確実だと、ワンダーマン・トンプソン・コマース(Wunderman Thompson Commerce)で、コマースメディア担当 バイスプレジデントを務めるアリソン・ルイス氏は指摘し、こうした行動変化は「パンデミックにより永続的なものとなった」という。
「Amazonが抱える無限のデジタル広告在庫は、ブランドに新たな拡大の機会をもたらした。デジタルブランドとして成長しつづけるためには、Amazonを含めた強固なメディア戦略の構築が不可欠だ」と、ルイス氏はeメールで述べた。
[原文:‘Endless digital shelf’: Why some DTC brands are doubling efforts on Amazon]
KIMEKO MCCOY(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:村上莞)
Illustration by IVY LIU